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僕の願いが世界を変える──泥より出でて、泥に染まらぬもの  作者: 露隠とかず
メインストーリー

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46/49

第46話 エピローグ

 ある日、しんたろうは寿と二人きりで、思い入れ深い喫茶店を訪れていた。


「静かなお店だね」


 小声で寿はしんたろうに話しかけた。


 にこりと微笑むと、慣れた様子で空いている席に座る。

 そこがかつての定位置だった事を、勿論寿は知らない。



「あっ、ドーナツがある!」

「飲み物はココアにする?」

「うん! お父さんは?」

「俺はこっち」


 しんたろうが指さしたウインナーコーヒーを見て、寿の顔がパッと輝いた。


「生クリーム乗ってる! 僕もこっちにする!」

「コーヒーだけど平気かい?」

「砂糖入れるから大丈夫!」


 生クリームが乗っていてもコーヒーに変わりないのだが、砂糖で足りるのかとしんたろうは苦笑する。

 にこにこと微笑むマスターに、寿は上機嫌で注文を告げる。

 白髪と深い皺の刻まれたその顔は、それでも昔の面影を残していて、しんたろうは胸が熱くなる。


「おいしー! ドーナツお父さんも食べなよ!」

「え、あ、ああ…ありがとう。一個貰うね」

「はいっどーぞ!」


 遠い昔、禊が同じ事をよく言っていたなと、しんたろうは微笑んだ。



 店内はBGMが静かに流れ、ゆっくりとした時間が流れている。

 客は自分たち二人しかおらず、少しぼんやりしていると、カップを拭き終えたマスターが珍しく声をかけてきた。


「昔ね、あなたに似たお客様がいたんですよ。いつも三人で仲よさげに話されていたので、よく覚えています」


 まさか自分たちのことを覚えているとは思わず、しんたろうは驚きを抑えながらマスターを見た。

 懐かしさに目を細め、マスターは小さく息を吐く。


「いらっしゃらなくなって、長い時間が経ちましたが、あなたを見ていたらふと、思い出したんです」


 もう何十年も前のことですが、とマスターは寂しげに笑う。



「……そうだったんですか。きっと幸せに過ごしてますよ」

「そうですね。あなたを見ているとそう思います」

「しん…お父さん! やっぱケーキも食べたい!」

「はいはい。どれにする?」


 マスターにどれが一番美味しいのかと、寿は目を輝かせて尋ねる。

 マスターは昔と変わらない柔らかい笑みで、優しく答えていた。


「俺もおかわりしようかな」


 しんたろうは呟くと、カップの残りを飲み干した。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

本編はこちらで完結となりますが、「物語の裏側」を描くサイドストーリーがあと3話あります。

本当のラストまで、もう少しだけお付き合いください!

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