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祈りの果てに ― 無限の箱庭で笑う者 ―  作者: 酒の飲めない飲んだくれ
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第0話:プロローグ・終わりと始まり


金属の衝突音が響いた。

視界が白く弾け、次の瞬間、俺の世界は暗転した。


(……これで終わりか)


人生ってのはあっけなく終わるもんだ。

どんなに足掻いても、どんなに大切な人を想っても、

一瞬の衝撃で、全部が闇に呑まれる。


どん底で這い続けて、ここまでやってきた。

せめてあいつに胸を張れるように生きようと思った。

でも――そんな覚悟も、願いも、

世界の気まぐれの前では意味がない。


俺は出来損ないだった。

やんちゃをしたわけでもない。ただ他人に興味がなかった。

一人でいられることが心地よかった。

それでも――あいつが現れて、

その孤独が変わった。


(……いるのが、当たり前になってたんだ)


胸の奥がひどく痛む。

彼女は病気で、あっけなく逝った。

救えなかった。支えられなかった。


気づけば、かけがえのない存在になっていた。


なのに、俺は何も守れなかった。


叫ぼうにも声はなく、

泣こうにも涙は出ず、

憎もうにも、憎むための体がない。

残っているのは、言葉にならない感情の渦だけ。


「……ちくしょう……」


俺は、自分という意識を残したまま、

何もできずに擦り切れていくのを感じていた。


(……あの世ってのは、最悪だな)


怒りも、憎しみも、後悔も。

すべてが絶望の色に染まっていく。

何もない空間を、永遠に漂う恐怖。

存在がほどけていくような感覚に、狂いそうになった――その時。


「恐れることはありません……」


声が聞こえた。

どこまでも穏やかで、温かく、

不思議と心が静まっていく。


「大丈夫。あなたは、まだ消えてはいません」


その声に安心しかけた瞬間、

俺の口から漏れたのは、正反対の言葉だった。


「……いっそ、消してくれればいいのによ」


嘲るような、乾いた息。

残っていたのは、すべてを憎みきった…失望の欠片だけ。


やがて、視界が白く染まり、

目の前に白衣を纏った人物が立つ。

光を背に、静かに言葉を紡ぐ。


「生きていれば悲しいことはいっぱいある。けれど――」


その続きを、俺は知っている。

あいつが、いつも口癖のように言っていた言葉だ。

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