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ホロらいふ  作者: 赤木
12/19

メイド

こんこんと漆喰の木の扉から音がする。

「どうも本日付けでメイドになりました湊あくあです。」

そこには、メイド姿の湊あくあがブラシデッキを持って慣れない様子で立っていた。


それに対して姫様は寛容だった。

「成程、お前が今回の駄メイドか。信頼するから、よろしくなのら。」

しかし、いきなり駄メイドと言われ、困惑するあくあ。

「?駄メイドの理由が知りたい?仕方無いな。教えておいてやる。先ず、メイドは何もなしにブラシデッキを持って来ないのら。次に、挨拶は、他に誰も居ない所で。これは常識なのら。更に言えば、お前は、この女…いや、この船長のメイドの方だろ。」

と、まあ、やや怒りっぽい様子で、湊あくあを迎えた。

「は、はい。失礼致しました。」

下げた頭を上げる途中、チラとこちらを見るとあくあは、少し顔が覗き込む様に挨拶をした。そして、下がって行く。


…当の湊あくあ本人は、絶対に船長を助けてみせると息巻いていた。


そして、一人居なくなった世界で、例の話は続く。

「どうして海賊なんかに。」

其の目は少し腫れぼったい。

どうやらマリンが其の夢を見させていたと言う事なのでは無いか。


それでもマリン船長は事実誤認の無い様に進める。

「分かんないかな…マリン、無免許なの。何の許しも請えて無いの。何かしらの理由付けてマリンの航海を正当化してくれるなら良いけど」

けど、と言葉を紡ぐ。

「今更感が拭い切れねぇ…」


其の言葉にキッとしたルーナ姫は、その全てを受け入れる気持ちで、こう言った。

「んなら、もう一生海賊で良いのら。」


其の捨て身の入った言葉にマリンは容赦無かった。

「お前が決めている事じゃ無いだろ。マリンがやった事なんだよ。」

「お前程度の戯言が耳に入ってくるだけで煩わしい。あの部屋に暫く入れてくれるか。」


ルーナ姫は、其の怒気の入り混じった声に、少し頬を赤ながらこう続けた。

「仕方ねーのら。ちょっと痛いのらよ。」



ビシィンバシィん!と豪快に音を立てて、鞭がしなる。


「ああん♡もっとぉ!!!こんな健気で可憐で可愛いダメな女海賊をしこたまイジメて!!もっと過激に、もっと根絶やしにする様に!!!そう!良い!!はぁはあ…ちょっとはやる様になったじゃ無いか小娘ェ…」

「はあはあ…ぜいぜい…疲れたのら。んなたん休む。次からは、王都直属の()を呼ぶから、覚悟しとけよ。この女海賊。」


この女海賊、と言うのは、やはり捨て切れなかった想いもあるのだろうと、勝手にそう思う。


マリンは、この日、鎖に繋がれたままで、昼を過ごした。


すると、ギギゴゴッと音がして、やはり、あの駄メイドが助けに来た。

「船長〜?大丈夫〜?」

「大丈夫…かな。」

かな、と言うのは、あくまで自身の最大限の体力から随分と考え込んでの事だろう。だから、手錠を外してくれとだけ頼んだ。


しかし、鍵を持っていないと言う。


肝心な所、ダメダメなメイドであるあくあは、不用心にも、そのまま扉を開け放ったまま掃除の時間だから、鍵を探して来ると、外に出て行った。


ドタン バタン キュッキュ


お掃除をしながら探し物をするというのは、やはり何と言うか、時間が掛かる物だ。

湊あくあは、一件一件掃除を片付けながら、鍵を探し出した。


大きな丸い錠前に無数の鍵が吊るされている。

"これで-"

これで船長を救える、そう思ったその時、一つだけ肝心の鍵が無い事に気が付いた。そして、次の瞬間、そこには、ルーナ姫が立っていた。


「道理でここだと思ったのらね。」

「お探しのものはこれかな。」

一本だけ取っておいた其の鍵を放り投げるるなたん。


「もう良い。お前が居なくともここは幾らでもやって行ける。そもそもお前、おかしいと思わなかったのか?()()()()()()()()()()()()()なんて。」

「は、はい。えっ…」

気が付かなかった。ただでさえ、この仕事の行き場はそうそう無いと言うのに、それなのに、そこに仕事があるから、てっきり。


姫様は、もう少し話がしたいと言った。

お前は何処から来て、何をしにここに来たのか。


「わ、私は一般的な母子家庭出身で、ここには、マリン船長のメイドをしに来ました。」

「そうか。それならもう良いのら。好きにするが良い。」

そう言うと、ルーナ姫は、何処かへ行って終われた。


あくあは、鍵を取ると、一直線にマリンの下まで迎えに行った。


ガチャンと音がして手錠が外れる。


マリンは、どうだろうか。果たしてもう一度ここに居たいと駄々を捏ねる事はあるだろうか。

否。無い。船長は、幾らでもこの仕打ちを受けたい訳ではなく、ただ会話に困ってここに来たのだから。


船長は立ち上がって、そして、城を下って、城下町に出たのであった。

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