王都
王都まで連れて行かれたマリン。
巨大な分厚い鉄の門が開けられる。
ギギッゴゴッと大きな甲高い音がする中、マリンはどうやって抜け出そうか考えていた。
そして、連れて行かれるままに、長い石の通路を抜け、階段の前でとある知り合いに出会う。白銀騎士団のノエル団長だった。
ノエル団長は、拘束されたマリンと手綱を引いているルーナ姫を見ると、思わず見て見ぬ振りはできなかった。
「ちょっと、何処連れて行くの」
「お城まで行くのらね。」
城と聞いて、ルーナ姫以外は、全員驚いた。
てっきり刑務所か何かかと思っていた為、予想外の展開だ。
「何する気だ。この変態。」
変態と言う言葉にピキーンと反応するルーナ姫。
「…ちょっと話をした後、軽くお仕置きをしてやろうかと思っているのら。」
「仕置き!?」
「鉄の鎖で背面をか殴りつけてやるのらね。」
何やら、お城には、拷問部屋なるものがあるらしい。そこでゆっくりと話を聞くのだろうか。
「面白い。やって見ろ。飴でも鞭でもドンと来いヤァ!!」
其の言葉通りか、マリンは拷問部屋で自白を重ねられた。
ジャリンと言う音がする。手錠も頑丈なものに変えられ、あっという間に、鞭がマリンの思ったより華奢な背中を虐げる-。
ビシィんバシィんと軽やかな音を立てて拷問が始まった。
「ああん♡もっとぉ、!!!!」
「いけすかない海賊なのらね。さぁ、吐け。お前が望むものをくれてやったぞ。」
冗談だったのにと呟く姫様は、ご自分の力で、思う存分、口汚く罵った女海賊を痛め付けて行く。
しかし、こちらも女海賊。其の精神力は伊達ではなかった。
「こ、こんなものかぁ…まだまだひよっこちゃんだね。」
「仕様が無いのら、明日は男を用意するのら。覚悟しとけよ。」
「はぁは…マリンはまだまだピッチピチですぅ〜。」
「そうか。それは良かった。ふん!」
バッシィィンと音を立てて、女海賊に命中する鞭は、余りにも華麗過ぎて見惚れてしまうレベルだ。
「馬にやる鞭打ちとは違うのらね。勉強になったのら。」
そうして、一日が過ぎて行くのである。
マリンは、拷問部屋から出された後、姫と同じ豪華な席につかされた。そこでルーナは、こう切り出した。
「昔々、とある船に一人の娘が乗りました。娘は航海をしながら、日々手伝いに追われていました。ある時、船長が死に、其の後継として、娘が選ばれました。そうして、晴れて一人前となった女は、海賊を名乗り始めましたとさ。
聞きたいことがあったのらね。
なぜ、この女は、海賊を名乗り始めたか。そこが書かれていない気がするのら。」
ほう…と軽く疲れているのか、マリンはため息を放って、其の上で出て来る飯に夢中になった。
カチャカチャと音を立てて豪華な食事を頬張りながら、しかし俯いてしまう。
「マリンは、ただ、正当な後継ではないと踏んで、海賊を名乗り始めただけです〜。」
「今は、ただのコスプレに過ぎないのに?」
「それは、ただ、全員が幸せならそれで良いやと。そう思っていただけに過ぎないから。」
いつでも海賊に戻れる。マリンはそう言うと、すくっと立ち上がって、晩餐の席、引いてはこの城を出て行こうとした。
そうだな。マリンはもう、真っ当な海賊では居られないかもしれない。だけれども、心は永遠の17歳で〜す♡
と、心の潮騒を取り除いて、新たに香るこの潮の満ち引きにも似た心境は、マリンだ。