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第8話 父の独白SIDEガノン

「まさか。ここまでアイクがここまで成長しているとはな……」


 ライザとアイクの決闘が終わった日の夜中。


 アイクの父であるガノン・ハンバルクは自身の執務室で赤ワインが入ったグラスを傾けて呟いた。


「正直、私も騙されたぞ……まさかアイクのやつが大義を得るために自らを貶めていたとはな」


 ガノンは思う。かつてここまで、ハンバルク家のことを考えた人間がいただろうか?


 結果としてアイクは切れ者だった訳だ。メイドに現を抜かした長男のライザとは違う。目的のためなら自分さえ犠牲にすることができる人間。我が息子ながら恐ろしいとさえ感じる。


「ひょっとしたらアイク自身も苦しかったのかもしれないな。領民の生活が豊かにならないのも我らハンバルク家が過少評価されているのも……」


 腐ってもハンバルク家は公爵の位を授かっている。


 領地は潤沢にあるし、一見すると豪遊できるほどの余裕があるように見えるだろう。


 だが現状は広大の土地の管理。隣接している敵国の警戒。王国への決して安いとはいえない納税など……多忙な上に活躍に見合った待遇ではない。


「失礼致します、旦那様。ライザ様ですが即刻、北の修道院にお送りしました」


「おぉ、メルコット。ご苦労だった……そのまま逃げられてでもしたら面倒だからな」


 メイドのメルコットはガノンに報告をする。とはいえこのメイドはガノンが個人で抱えている暗殺部隊の隊長であることと同時にガノンの右腕である。


「それでは、失礼致します」

 

メルコットはお辞儀をし、退出しようとする。


「メルコット、少し聞いてもいいかね?」


「はい。なんなりと」


「今まで、アイクの事をどう思っていたかね? 正直に言ってくれたまへ」


「アイク様ですか? 正直に申し上げても良いとのことですが……特に魔法の訓練もしない。ハンバルク公爵家の地位を使って、見栄を張っているごく潰しだと思っておりました」


「君、思ったよりもズバっとすごいことを言うのだな」


「お褒めに預かり光栄です」


「褒めてないが……とはいえ、そう思われても仕方あるまいな。私も含めて、見事に騙されていた訳だが」


 ガノンは嬉しそうに笑う。いや、現に嬉しいのだ。何度でも言うが親である私ですらアイクに騙された。誰かに自慢したくて堪らない。


 きっとアイクは大きなことを成し遂げるに違いない。


「あぁ、引き留めてすまない。もういいぞ」


「とんでもございません。それでは失礼致します」 


 メルコットは部屋を出る。再びの静寂の中、ガノンは葡萄酒を煽る。


 アイクが変わったのはルナと出会って――もっと言えば、ルナと婚約してからだ。


 いや、ひょっとしたら、最初から警戒されないように有能だった可能性がある。むしろ、そっちの方がありえる。だが……、


「言い換えるならアイクにとってルナ嬢が重要ということだ。逆にルナ嬢をこちらに手なずけることができるなら、アイクもより活躍を見せてくれるだろう」


 そのためには家族として親密にならなければな。ルナの幸福度を上げることができれば、きっとアイクも満足するだろう。


「あぁ!! 楽しみだ!! 我がハンバルク家が王国内の勢力図を全てひっくり返せるのがなぁ!!」


 ガノンは丸々太ったお腹を叩きつつ、高らかに笑い声をあげる。


 今日も野望に胸を膨らませながら。

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