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8日目
>『図書室へ行く』
ごきげんよう。
ご機嫌はいかが?
私ですか?
とても素敵な気分です。
この気分を。この感情を。
それだけを抱いて、この雨と一緒に消え去ってしまいたいぐらい。
空に溶けて。地に混ざって。
そうして、なにも感じなくなるの。
認知されない世界にいくの。
なんて。
冗談よ。
そう、冗談。
これは冗談なのだから。
あなたも笑ってくれると、とても嬉しいわ。
知っていますか?
図書委員の仕事って、とってもひまなんです。
誰も来なければ、ここで受付に座っているだけ。
なにかあっても、席を立つこともなく、手と指を少しだけ働かせて、三十秒もかからない作業でおしまい。
ですから。
あなたが。
こうして、ここで。
私に。この私を話すことを選んでくれたことが。
とても、嬉しく。
そして、ありがたく、思っているのです。
今日は、時間があるようなので。
少しだけ、付き合ってくれますか?
ふふ……。
ええ、ありがとうございます。
ふと感じたの。
ひとには、そのひとだけの、大事な日付というものがありますよね。
……ない?
いいえ。あるわ。
あるいは。
あなたはまだ、感じ取れていないだけなのかも。
たとえば。その人にとって。
大事な人の誕生日。
大切な思い出の記念日。
あとは。
その人と会ったことを喜べる日。
そんな風に、喜ばしい出来事ばかりが増えていくと、いいのですけれど。
あなたにとって「今日」は。どうでしょうか?
ですから。
今はただ。
あなたに。あなたに傍にいてほしい。
他の誰でもなく。
私が欲する、あなたに。
いいえ?
そういう話ではないのです。そういう話では。
……
昨日は。
昨日は、来なかったのですね。
いいえ、別に、約束をしているわけでも、必須なことでもありません。
ですから。
どう思うのも、どう感じるのも。
私にとっても。あなたにとっても。
先程、大事な日、というお話をしました。
あれって。いつも思うのです。
いい思い出だけが、累積していけばいいのにな、と。
ふふ……
おかしいと、思いました?
大丈夫。私もそう思います。
……そう、思って、しまいました。
ところで。
昨日が期日、だったのですが。
ちゃんと返却、できましたか?
ふふ……。
そうですか。それであれば。
私、ここで待っていますね?
ええ。
この。
季節の狭間の、残滓を引きずった間に。