表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霖雨  作者: 如月一月
8/9

7/9

8日目


>『図書室へ行く』

ごきげんよう。

ご機嫌はいかが?


私ですか? 

とても素敵な気分です。

この気分を。この感情を。

それだけを抱いて、この雨と一緒に消え去ってしまいたいぐらい。


空に溶けて。地に混ざって。

そうして、なにも感じなくなるの。

認知されない世界にいくの。



なんて。

冗談よ。


そう、冗談。

これは冗談なのだから。

あなたも笑ってくれると、とても嬉しいわ。



知っていますか?

図書委員の仕事って、とってもひまなんです。

誰も来なければ、ここで受付に座っているだけ。


なにかあっても、席を立つこともなく、手と指を少しだけ働かせて、三十秒もかからない作業でおしまい。


ですから。

あなたが。

こうして、ここで。

私に。この私を話すことを選んでくれたことが。


とても、嬉しく。

そして、ありがたく、思っているのです。




今日は、時間があるようなので。

少しだけ、付き合ってくれますか?


ふふ……。

ええ、ありがとうございます。




ふと感じたの。


ひとには、そのひとだけの、大事な日付というものがありますよね。


……ない?

いいえ。あるわ。

あるいは。

あなたはまだ、感じ取れていないだけなのかも。


たとえば。その人にとって。

大事な人の誕生日。

大切な思い出の記念日。

あとは。


その人と会ったことを喜べる日。


そんな風に、喜ばしい出来事ばかりが増えていくと、いいのですけれど。


あなたにとって「今日」は。どうでしょうか?

ですから。

今はただ。

あなたに。あなたに傍にいてほしい。

他の誰でもなく。

私が欲する、あなたに。



いいえ?

そういう話ではないのです。そういう話では。




……

昨日は。

昨日は、来なかったのですね。


いいえ、別に、約束をしているわけでも、必須なことでもありません。


ですから。

どう思うのも、どう感じるのも。

私にとっても。あなたにとっても。



先程、大事な日、というお話をしました。

あれって。いつも思うのです。

いい思い出だけが、累積していけばいいのにな、と。




ふふ……

おかしいと、思いました?


大丈夫。私もそう思います。

……そう、思って、しまいました。



ところで。

昨日が期日、だったのですが。

ちゃんと返却、できましたか?



ふふ……。

そうですか。それであれば。


私、ここで待っていますね?

ええ。

この。

季節の狭間の、残滓を引きずった間に。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ