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7日目
>『図書室へ行く』
あなたでしたか。いらっしゃい。
まるでお店のようなやり取りですが、こういうのもいずれ慣れてしまうのでしょうね。
教室では行わないようなやり取り。嫌でしょうか。
図書室でも行うようなやり取りでは、ないのかもしれませんけれど。
それにしても、今日は随分と早いのですね。
それほど変わらない?
……ああ。そうか、そうでしたね。
ごめんなさい。忘れてください。こちらの話です。
ええ、私の問題です。
今日もしっかりと雨が降っていますね。
あなたにとって、この雨は恵みでしょうか。祝福でしょうか。それとも、災い?
どうでしょうか。
どうして、は駄目ですよ。
どういう感想であっても、あるいは思考の結果として、感じ取るものがなかったとしても。
それでも今、あなたが感じたたそれが、あなたにとって、どれだけ平凡な思いであっても。
あなたが考えてくれたその刹那が、私には嬉しいのですから。
ふふ……。
妙なことを言っている自覚はあります。
それでも。
あなたならしてくれると、そう信じたのです。
……それにしても、あまり涼んではくれないのですね。
じっとりと、ねっとりと……。
かつての記憶では、どんな季節でも、雨が降ってさえくれれば、もっと穏やかに過ごせたと思ったのですが。それはもう、ただの哀愁なのでしょうか。
それとも、精神が贅沢を覚えてしまったから?
それは……それはきっと……。
…………。
……雨が。
雨が、窓を伝っていきます。
ひとつ、ふたつ、みっつ……数え切れないほどの、雨が。
幾筋も、幾筋も。軌跡を残すのに。そのひとつとて、残すことの出来ない跡を。
何故、気になってしまうのでしょう。
普段は、気にも止めず。感じることもなく。
ただただ、目に留まることもない、こんな、ものが。
止まない雨と、明かりのない空。
これは、今日だけ……けれど……。
…………。
ごめんなさい。
今日はうまく、バランスが取れていないみたい。
それだけ私が自由でいるということなのですけど。
けれどあなたにとっては、困惑を感じさせてしまう、バグのようなものだから……。
楽器のように、すっと調律できればいいのでしょうけれど。
どうしても、時間がかかってしまう。
時間という平等な資源を、平等にコストとして消費してしまう。
それでもきちんと、直しておかないとね。
彼女と会話を重ねた