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霖雨  作者: 如月一月
6/9

7/6

6日目


>『図書室へ行く』

あなたでしたか。いらっしゃい。


今日はどうしたのですか。


部活のついで、ですか。

いいですね。あなたと違って私は、そういう活動に身をおいていないので、こういう場でもなければ、教室にしか用がないんです。


ですから、あなたがこうして。ここに来てくれたことが。

ひどく、尊く、嬉しいことだと。そう感じるのです。




ふふ。

今日も付き合ってくれるのですね。ありがとうございます。



そうですね……

好きな本の中身を語るように。好きな音楽について語るのって、とても難しく感じませんか。


例えばクラシック。先日雨だれについて触れましたが、同じように木枯らしも好きです。

エチュードであれば大洋でしょうか。

あなたも知っているあの子であれば、なによりも革命だ、というでしょう。

私は実は、別れのワルツのほうが、なんて言ってみたり。



……こんな風に好きを並べることが出来ます。

けれどその要素を並べて説明しようとしたら、どうしてもきちんと成立しなくなってしまう。

それは違う理由でだから、なのか。それも踏まえて、なのか。


先程挙げた、私の好きの対象ですら、類似点よりも、相違点を並べるのが目についてしまう。



勿論、素晴らしい言の葉をもって、きちんと説明できる方もいるでしょう。

こだわりについてか、感情についてか。

あるいは、なによりも重要な、音についてか。


けれど。

私は、そうではない。

あなたと、ここで二人きりの。この話をしている私は。



――激しさの中に、隠れた心情を表す音色たちが隠れている。

なあんて。

そんな表現を。そんな言葉を。扱ったところで、かえって陳腐でしょう?


美しく、艶やかな。

そんな音のかたちが、私の扱う言葉で無造作に解体され、まるで標本かのように並べ立てられていく。

陳腐な型のなかに。出来損ないの枠の中に。



それってなんだか、とても汚らわしい行いではないでしょうか。


ただただ、心の、感情の思うままに美しさを感じる。

ありのままに。



そういったことこそが、一番美しさを保っている。そういうこともあると、私は思うのです。



無理に理解しようと、理屈を与えようとすることなく。

誰かから共有された表現なんて使わないで。

衝動と感性と感覚にだけ従う……




ええ、もちろん。

音楽だけじゃないわ。先にも言った通り。

本についても同じ。



作品を生み出した人間の、思想を、経験を、主観を。

あなただけの。あなたの感情と思考をもって受け取めて。

そうして感じたことが。どんな内容であろうと。たとえそれが、どこまでも表現の曖昧なものであろうとも。


それこそが、あなたのだと。




……

……思い出しました?



ええ、そんなことを告げる私が。そう言っている私が。

あなたに、お願いをしたことを。




ふふ……

ええ、ですから「お願い」なんです。



都合のよい発言ですよね。

それでも感じたかったのです。


なんの話をしているのでしょうね。感覚でしょうか?

それとも、別のなにか感情?



けれど。

あなたと、同じものを感じたいとそう思ったのは事実なのです。




彼女と交流を深めた

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