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6日目
>『図書室へ行く』
あなたでしたか。いらっしゃい。
今日はどうしたのですか。
部活のついで、ですか。
いいですね。あなたと違って私は、そういう活動に身をおいていないので、こういう場でもなければ、教室にしか用がないんです。
ですから、あなたがこうして。ここに来てくれたことが。
ひどく、尊く、嬉しいことだと。そう感じるのです。
ふふ。
今日も付き合ってくれるのですね。ありがとうございます。
そうですね……
好きな本の中身を語るように。好きな音楽について語るのって、とても難しく感じませんか。
例えばクラシック。先日雨だれについて触れましたが、同じように木枯らしも好きです。
エチュードであれば大洋でしょうか。
あなたも知っているあの子であれば、なによりも革命だ、というでしょう。
私は実は、別れのワルツのほうが、なんて言ってみたり。
……こんな風に好きを並べることが出来ます。
けれどその要素を並べて説明しようとしたら、どうしてもきちんと成立しなくなってしまう。
それは違う理由でだから、なのか。それも踏まえて、なのか。
先程挙げた、私の好きの対象ですら、類似点よりも、相違点を並べるのが目についてしまう。
勿論、素晴らしい言の葉をもって、きちんと説明できる方もいるでしょう。
こだわりについてか、感情についてか。
あるいは、なによりも重要な、音についてか。
けれど。
私は、そうではない。
あなたと、ここで二人きりの。この話をしている私は。
――激しさの中に、隠れた心情を表す音色たちが隠れている。
なあんて。
そんな表現を。そんな言葉を。扱ったところで、かえって陳腐でしょう?
美しく、艶やかな。
そんな音のかたちが、私の扱う言葉で無造作に解体され、まるで標本かのように並べ立てられていく。
陳腐な型のなかに。出来損ないの枠の中に。
それってなんだか、とても汚らわしい行いではないでしょうか。
ただただ、心の、感情の思うままに美しさを感じる。
ありのままに。
そういったことこそが、一番美しさを保っている。そういうこともあると、私は思うのです。
無理に理解しようと、理屈を与えようとすることなく。
誰かから共有された表現なんて使わないで。
衝動と感性と感覚にだけ従う……
ええ、もちろん。
音楽だけじゃないわ。先にも言った通り。
本についても同じ。
作品を生み出した人間の、思想を、経験を、主観を。
あなただけの。あなたの感情と思考をもって受け取めて。
そうして感じたことが。どんな内容であろうと。たとえそれが、どこまでも表現の曖昧なものであろうとも。
それこそが、あなたのだと。
……
……思い出しました?
ええ、そんなことを告げる私が。そう言っている私が。
あなたに、お願いをしたことを。
ふふ……
ええ、ですから「お願い」なんです。
都合のよい発言ですよね。
それでも感じたかったのです。
なんの話をしているのでしょうね。感覚でしょうか?
それとも、別のなにか感情?
けれど。
あなたと、同じものを感じたいとそう思ったのは事実なのです。
彼女と交流を深めた