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霖雨  作者: 如月一月
3/9

7/3

3日目


>『図書室へ行く』

ようこそ。


今日は、いつもよりも遅かったんですね。

ああ、別に責めているわけじゃありませんよ。そもそも、約束をしているわけではありませんし。


だから、あなたに。

どんな理由があろうと、今日も来てくれたことが、私は嬉しいのです。



チャイムが鳴りましたね。


このチャイムが鳴るたびに、今日という一日の終わりを感じる。

この学校という空間で過ごす時間が、私たちにとって過ごす時間の中心であるからでしょうけれど。

実際には今日という日はまだ終わっていません。まだ数時間の猶予があります。

けれど、私は。いいえ、私たちは、そういう風に感じるのです。



そういう記憶、ありませんか?



例えばあるクラシックの曲。

バロック音楽の巨匠の作品であるそれは、私にとって、特定の空間を想像させます。

小学生の頃、ほんのひと時、通ったピアノ教室。

待合室ということもできない、ただのリビング。

中学生だった、先生のお子さん。当時はひどく大人のように見えた、そんなお兄さんを。


あるいは印象派と呼ばれるフランスの作曲家。

その音色は、無機質な空間を思い出します。

正確には、間違い探しのできる子供向けの絵本と、くすみのはいった、白い羊のぬいぐるみを。

幼少期通っていた小児科医院が、そういった待合室だった。それだけの理由で。


これは私の、幼少期の記憶が呼び出す感傷です。



どうでしょうか。

ここまでお話すると、なんとなく、イメージしやすくなったりしませんか?



ええ。

他の方はどうか、それは分かりませんけれど。


あなたとは。なにも同一の幼少期を過ごしていないはずの、そんなあなたとは。

こういった感傷を、想像を。

共有できたら、と。互いに伝え合えたら、と。


そんな風に、夢想しているのです。



……意外ですか?

私、結構、単純なんですよ?

あなたと、こういって会話することが、楽しみになるぐらいには。


ええ。

明日も会えるといいなと、そう思っているのです。


…………。




あ。そうそう。

まだあなたは聞いてないとは思いますが。


明日、担任の先生から呼び出しの予定だそうです。


ふふ……



明日。

来れるといいですね?


彼女と交流を深めた

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