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霖雨  作者: 如月一月
2/9

7/2

2日目


>『図書室へ行く』

ああ、いらっしゃい。

もう読み終わったんですか?


……まだ? ああ、そうですよね。



それで? 読み終わってもいないのにまた、図書室に来たんですか?


……ふふ、そんなに嫌な顔をしないでください。ちょっとからかいたくなっただけなので。

あなた相手には、つい。


ええ、もちろん。私もあまり仕事がないので、おしゃべりは大歓迎です。図書室ですから、皆さんに迷惑をかけない限り、なにをしても構いません。

学校が閉まるまで、ですけどね。




私はなんの本を読んでいるのか、ですか。

今日はですね。なんとなんと、恋愛小説です。



時折、煌びやかな挿絵なんかもあったりして。文章も平易で躓きにくい。

手に取りやすい、そんな風に作られた装丁とお話です。


かわいくて、かっこよくて。でもちょっとだけ、おっちょこちょい。そんな子が主人公。

きらきらしているように見えて、実は優しくない。でもやっぱり、都合のいい。


そんな、フィクションです。



あら、意外ですか? こういう趣味。


実はこの本、私のお友達に勧められたんです。

いつもああいうものを読んでいるなら、こういうのもどう?って。



そう言って勧めていただいたものはありがたく受け取ることにしているんです。

きっと私の知らない世界。私の認知していない世界。

それを受け止めて、咀嚼して、また新しい私とその人に。



それと同時に、思うのです。



知るものを知って。知らないものを知って。

けれどその時には、私の大事なお友達の顔が、脳裏を過るのを。


それは教えてもらった福音であり、代償であり……

自分だけが選んだ世界とは、永遠に感じることのない差異です。


いい意味でも、悪い意味でも。


ああ、もちろん、今回はいい意味で、ですよ?


それってなんだか、ひどく大事なもののように思えるから。


大変面白かったのです。面白くて、楽しくて、とても貴重な経験……ではあるのですけれど。

あの子からの紹介、というだけで、あの子の顔を、忘れることが出来ないのです。


神経質なのでしょうか。それとも、無神経?


ああ、いえ、こういう話をしたかったのではなくて。

ええ、そうです。作品その単体というよりは、受け取り手の問題。

他人が勧めてくれた作品というのは、どうしてもその人が過りませんか?


登場人物でも、作者でもなく。

あなたに勧めてくれた、大事な「他人」が。


ええ、他人です。

どこまでいっても。どこまでいかなくても。

大事で、貴重で、大好きはずの。

そんな、他人、です。



冷めていると思いますか?

それとも……いいえ、これを聞くのはやめておきます。



――あなたは、どうでしょうか?



もし。良ければ。

あなたの考えを、お聞かせ頂けますか?



彼女と交流を深めた

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