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霖雨  作者: 如月一月
1/9

7/1

1日目


>『図書室へ行く』

ああ、いらっしゃい、あなたでしたか。

どうしたんです? 図書室になんて。


ああ、でも図書室なんですから、本の貸出に決まってましたね。

……一冊だけ、でいいんですか? 


ああ、いえ、放課後はまだありますから、もしまだ探したいなら、後でも、と思っただけなので。

あなたがそれで十分だとおっしゃるなら。それでいいんです。


じゃあ手続きをしますので。

はい。カード、お預かりしますね。



最近はこんな天気ですから、外に出たかがらないのは分かりますけど。

それでも、すこーしだけ、穏やかな日に。ちょっとだけ窓をあけて、風を受けながら。そんな風に読書をしてみるのも素敵ですよ。


いいか悪いは別にして、うとうとと、気持ちのいい陽気のせいで「寝過ごした!」なんて、あんまり起きませんからね。


ふふ……




ああ、そうそう。

せっかくなんで、お話に付き合ってくれませんか?



ええ、ありがとうございます。


珍しいですね。こういう本、ご興味があったんですか?



え? 特には……?

そうですか。それでも選んだのですから、きっとそれはご縁なのでしょう。



どういうお話かご存知でしょうか。


ええ、そうです。人の死ぬ話です。

あなたは、そういうお話、好きなんですか?


そういう言い方は困る? それは確かに。


ですが、事実でしょう?


だって。

大体の物語において、誰かが死ぬということは。悲しくて、苦しくて、そして、辛いものだと書いています。

そういう風に、表現されます。


ああ、もちろん、例外はありますよ?

いわゆる、スカッと!というようなもの、とか。



けれど。

だけど。


私は結局のところ、連続性をもって存在することを求められているから。

その終焉を、受け止めてあげることができない。


理屈の上では理解できるわ。

概念的にも。


でもそれは、そういう風に、受け止めてあげているように、見せているだけ。

どこまでいっても。あるいはいかなくても。

同じところで、堂々巡りをするだけ。


それもひとつの、終焉ではあるのかもしれないけれど。

死の受け入れ方と、果たして同一と言えるかしら。



そういう意味では、虚構であれば娯楽として享受できる、あなたが羨ましい、かも?




……はい。

終わりましたよ。


返却日は一週間後。

貸出カードも、忘れないで持って来てくださいね。


ああ、もし面白い本があれば、教えてください。



それでは、ごきげんよう。

……なんちゃって。



『あなた』

あなた


『彼女』

図書室の彼女

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