7/1
1日目
>『図書室へ行く』
ああ、いらっしゃい、あなたでしたか。
どうしたんです? 図書室になんて。
ああ、でも図書室なんですから、本の貸出に決まってましたね。
……一冊だけ、でいいんですか?
ああ、いえ、放課後はまだありますから、もしまだ探したいなら、後でも、と思っただけなので。
あなたがそれで十分だとおっしゃるなら。それでいいんです。
じゃあ手続きをしますので。
はい。カード、お預かりしますね。
最近はこんな天気ですから、外に出たかがらないのは分かりますけど。
それでも、すこーしだけ、穏やかな日に。ちょっとだけ窓をあけて、風を受けながら。そんな風に読書をしてみるのも素敵ですよ。
いいか悪いは別にして、うとうとと、気持ちのいい陽気のせいで「寝過ごした!」なんて、あんまり起きませんからね。
ふふ……
ああ、そうそう。
せっかくなんで、お話に付き合ってくれませんか?
ええ、ありがとうございます。
珍しいですね。こういう本、ご興味があったんですか?
え? 特には……?
そうですか。それでも選んだのですから、きっとそれはご縁なのでしょう。
どういうお話かご存知でしょうか。
ええ、そうです。人の死ぬ話です。
あなたは、そういうお話、好きなんですか?
そういう言い方は困る? それは確かに。
ですが、事実でしょう?
だって。
大体の物語において、誰かが死ぬということは。悲しくて、苦しくて、そして、辛いものだと書いています。
そういう風に、表現されます。
ああ、もちろん、例外はありますよ?
いわゆる、スカッと!というようなもの、とか。
けれど。
だけど。
私は結局のところ、連続性をもって存在することを求められているから。
その終焉を、受け止めてあげることができない。
理屈の上では理解できるわ。
概念的にも。
でもそれは、そういう風に、受け止めてあげているように、見せているだけ。
どこまでいっても。あるいはいかなくても。
同じところで、堂々巡りをするだけ。
それもひとつの、終焉ではあるのかもしれないけれど。
死の受け入れ方と、果たして同一と言えるかしら。
そういう意味では、虚構であれば娯楽として享受できる、あなたが羨ましい、かも?
……はい。
終わりましたよ。
返却日は一週間後。
貸出カードも、忘れないで持って来てくださいね。
ああ、もし面白い本があれば、教えてください。
それでは、ごきげんよう。
……なんちゃって。
『あなた』
あなた
『彼女』
図書室の彼女