第6話 E級ダンジョン
「それじゃあダンジョンに行く前に•••はい!春兄!」
千夏が何もない空間から剣を取り出し僕に渡してきた。
「えっ!?どこから出てきたのその剣!」
「これはね〜アイテムボックスっていう異空間に物を収納したりだしたりする物なんだよ!」
「そ、そんなものがあるのか」
:アイテムボックスでこんなにびっくりしてる人初めて見たww
:お兄さんにとっては初めての出来事やろうからなぁ
:確かにいきなり剣が出てきたらびっくりするw
「そんなアイテムがあるんだね。これもダンジョンで見つけたの?」
「そうだよ〜。この指輪みたいなやつだよ!」
「だからそれ嵌めてたのか。でもこの剣をどうして僕に渡すの?」
「それは兄さんが剣術スキルを持っているからですよ」
「あっなるほど。でも僕剣なんて使った事ないよ?」
「大丈夫ですよ。スキルを獲得するとやったことがない事でもある程度やれる様になるんです」
そう言われて渡された剣を握ってみる。確かに手にしっくり来る様な気がする
「春兄ちょっと素振りしてみてよ」
「う、うん。わかった」
ブン、ブン、ブン、
何回か素振りをして剣の感触を確かめる。確かに体育の授業で竹刀くらいしか触ってない僕でも意外によく振れる。これがスキルのおかげなのだろうか。だとしたらスキルって凄いんだな。
「どうかな?」
「春兄いい感じだよ!これならダンジョン内でもしっかりと振れるね!」
「それじゃあダンジョンにそろそろ入ってみたいかな」
配信を始めてから30分程経っている。僕もそうだが視聴者もダンジョンの中を見てみたいだろう。
「そうですね。それではダンジョンに入りましょうか。今回入るダンジョンはE級ダンジョンです」
:E級ダンジョンか
:確かにお兄さんのレベルなら妥当だな
:E級って確かスライムとボスのゴブリンくらいしか出ないだろ?
「E級?スライム?ゴブリン?」
「探索者にランクがある様にダンジョンにもランクが付けられているんです。1番下がE級で主にスライムやゴブリン等のモンスターが出るんです」
「春兄の見てたファンタジー小説とかに出てくるスライムやゴブリンのイメージしたら分かりやすいと思うよ」
スライムにゴブリン•••まさにファンタジーだな。
「それは僕でも倒せるくらいの強さなの?」
「はい。兄さんのステータスとスキルでも倒せると思います」
「そっか。なら入ろうか」
そう言いながら目の前の門をくぐる。門をくぐった瞬間、さっきまでの現代の景色とは違い、ゴツゴツとした岩が多い洞窟の様な景色へと変わった。
「おお〜。聞いてた通りだけど凄いんだね。ダンジョンって」
事前にダンジョンの中に入るとファンタジー要素が一気に醸し出されると聞いていたがこんなにとは。小説やアニメで想像していた事を体験出来るって凄い!
「兄さんの目がキラキラしてますね」
「だね!春兄はファンタジー系が大好きだから体験できて嬉しいんだろうね!」
:お兄さんの気持ちめっちゃわかるわぁ
:こういうのはほんと憧れるよな
:何もない空間から剣を出されてびっくりしてたけどその後はずっと目を輝かさせて妹を見てたもんな
:現実にないものは憧れちゃうよ•••現実に出てきちゃったけど
僕は少し小走りになりながら夢中になっていた。だって憧れの異世界で出てくる様な洞窟だよ!?岩の所々の緑色の部分が淡く光っていたり水が滴って一定の間隔で音が響くのとかかっこいいでしょ!
僕が初めて目にする洞窟にテンションが上がっていると目の前に水色の丸い物体がこちらに近づいているのが分かった。
「兄さんあれがスライムですよ」
「あ!やっぱりあれがスライムなんだね!思ってたイメージと一緒だ!」
「春兄はしゃぎ過ぎてテンションおかしくなってない?」
「気のせいだよ!」
うおおお!あれがスライムなのか!プルプルしてて柔らかそう!
「スライムの攻撃手段ってどんな感じなの?やっぱ体当たりとか?」
「そうですね。E級にいるスライムは体当たりしかしてきません。その体当たりも大したダメージにはなりません」
「E級はってことは上のランクのスライムは色々やってきそうだね•••」
想像通りなら酸とか吐いてきたりしそうだね。そして僕の近くまで来たスライムを見る。僕はこのプルプルしてて可愛いスライムにほんの少しの罪悪感を持ちながら、記念すべき1体目のモンスターとなるスライムに僕は剣を振りかぶる!
「えい!」
ザシュッ!
僕が斬ったスライムは真っ二つになり、そのまま霧の様に消えていき、その場には黒に近い紫色こ小さな石の様な物が落ちている。
「これってもしかして魔石って言うやつ?」
「春兄初戦闘初勝利おめでと!」
「兄さん初勝利おめでとうございます。それは兄さんの言った通りモンスターがやられるとドロップする魔石です。E級のスライムなので魔石はちっちゃいですが、ランクが上がるにつれドロップする魔石は大きくなり、更には武具やポーション等も一緒にドロップする様になりますよ」
「あ、やっぱりスライムだから魔石はちっちゃいんだね」
:初勝利おめ!!¥500
:躊躇なくバッサリいってて草
:スライムの魔石ってこんくらいの値段なんだぜ¥500
:早速お兄さんにスパチャ投げてて笑う
「春兄!コメント見てよ!春兄に向けてのスパチャ来てるよ!」
「えっ!?あ、ほんとだ。スパチャくれた人達ありがとうございます。こんな小さな魔石で500円もするんですね」
「魔石は今じゃ生活する上で使う機械の燃料ともなりますからね。小さいのでも結構お金を貰えるんです」
「こんな小さな魔石でもこの値段だからおっきい魔石とか相当高くなるんだろうね」
「そうですね•••この前オークションに出ていAらんくのモンスターの魔石が1億5千万で買い取られたって話は聞きましたね」
「い、1億5千万!?ま、魔石って凄いんだね•••」
こんなにも莫大なお金が貰えるとは思わなかったな。あれ?Aランクでこれなら2人の適正ランクであるBランク級の魔石とかって•••
「ふ、2人が稼いだ額って•••」
「ふふ、そうですね。私達3人が一生遊んでも暮らせるくらいはありますよ」
ここで衝撃の事実発覚。僕が思っていたより2人の存在が遠い件について。そっかぁ•••3人で遊んで暮らせるお金があるのかぁ。あれ?僕もしかして何もしなかったら2人のヒモになってたって事!?
「絶対いつか追いついて2人より稼ぐ!!そして2人を養う!」
:予想以上に2人が稼いでてお兄さん焦ってるww
:焦ってる姿可愛いw
:まぁそんなに稼いでると思わんよな
:今のスライムを倒した時の剣筋からして良いとこまでいけると思うからお兄さん頑張れ!
「ふふ、待ってますよ兄さん」
「春兄なら出来るよ!!」
そうと決まればE級くらいで日和ってたらダメだ。ここを攻略してもっと強くならないと。
僕はそう決意して、洞窟の中を進んでいくのだった。