第1話 目覚めと現状確認、そして再会
後半はシリアス要素多めです•••シリアスな場面って書くのが難しい
『••••••人•••待っ•••ます•••ら』
「んん•••ここは•••」
知らない天井だ。声を掛けられた様な、なにかとても長い夢を見ていたような気がするがはっきりと思い出せない。それにしてもここは何処なのだろうか。僕は起き上がると周りの物に驚く。
「なんだこの大量の管に点滴のような物は•••」
ここは病院か何かなのか?それにしてもこの全て自分に繋がっている管は何なんだ?心なしか体が細く見えるし体が重い。そんな事を思いながら今の自分に困惑していると、目の前のドアからコンコンという音と共に
「四季さん入りますね」
という女性の声が聞こえ、ドアが開いた。ドアから見えた女性には面識が一切ない。そんな状況に更に困惑してると
「えっ!?し、四季さんが起きてる!?!?や、山本先生に伝えなくちゃ•••山本先生〜!!」
女性は叫ぶ様な声を出した後、直ぐに戻っていった。
「な、何だったんだ?」
僕が起きている事に驚いている様だったが何故そんなに驚くかが分からない。もしかしてこの大量の点滴なども関係しているのだろうか。でもこんな風になる様な事故や事件に巻き込まれてないはずだが•••
そうやって考えていると先程入ってきた女性ともう1人。医者っぽい人が入ってきた。
「ッ!!驚いた。本当に四季くんが起きているとは」
「えっと•••貴方は?」
「おっと、自己紹介がまだだったね。私はここ山本総合病院の病院長をしているの山本だ。さて、君の体調はどうだい?何処か痛いところやなにか違和感を感じるところはないかい?」
「あ、いえ、特になにか違和感を感じることはないです。強いて言うならば自分の体がこんなに細かったのかが疑問に思っているんですけど」
「まぁそうだろう。何せ君は5年間も目を覚さない植物状態だったんだ」
「えっ!?ご、5年間も!?」
ここで衝撃の事実を知る。いや、そりゃそうか。あれだけ点滴等が用意されていて普通の入院のはずがない。
「君の親族にも連絡したから直にここに来ると思うよ。彼女達は毎日ここに来ていたんだよ?」
「妹達がですか•••兄としてはこんな姿を5年間も見せ続けて情けないです」
「そうだね•••彼女達は君に助けられたんだからそんな事思っていないと思うよ。寧ろ自分達が情けないと思っているだろうね•••」
そこまで言って先生は話を止めた。まるでこの先は言いたくないと言う様に
「あの•••僕が妹達を助けたと言ってもちょっと記憶がなくて分からないのですが•••それとこの5年間で起こった事も知りたいです」
「•••そうだね。助けた状態や、5年間も植物状態になっていると記憶など
は曖昧になってしまうよね。君の•••いや、君が植物状態になっていた5年間で起こった出来事を話そう。」
そう先生は言ってから話し始めた。そこから話始めた内容は僕にとって現実味がなく、よく理解ができなかった。いや、したくなかった
その内容とは5年前、世界各地でダンジョンが出現し多くのモンスターが地上に放たれ、何億人もの人が亡くなったそうだ。そして僕が住んでいる地域にもダンジョンが出現したそうだ。そしてそこから溢れ出るモンスターから逃げる為•••僕の両親は僕ら兄妹を逃す為に自らを囮にし、モンスターに立ち向かったそうだ。そしてそこから逃げている途中に別のモンスターと遭遇した。その時僕が自らモンスターに戦いに行ったらしい。双子の妹達を逃す為に。しかし、到底モンスターには勝てず僕は妹達の目の前でボコボコにされた。親が自分達の為に戦い、更には兄まで自分達の為に戦おうとして2人は自分の弱さに怒り悲しみ、強く願った。何者にも負けない力が欲しい|と。そう強く願ったおかげか探索者としての力に目覚めモンスターを倒し、僕を病院に連れて行き今に至るらしい。
探索者とは先天的に力を持っている場合とモンスターを倒すと手に入る力を持っている人達の事を指すらしい。2人は奇跡的にに先天的に力を持っており土壇場でその力を覚醒させたんだそうだ。そうしてモンスターにボコボコにされそのまま意識を失い、植物状態になった僕を助ける為にほぼ毎日ダンジョンに入り、そこから取れるポーションを手に入れようとした。ダンジョンの中にいるモンスターは倒すと素材や武器、ポーションなどを落とし、この5年間の中で、ポーションを飲む事で体の欠損が元通りになったり、現代医術では治療法が確立されていない病なども完全に治す物があるらしい。2人は俺を植物状態から回復される為にほぼ毎日ダンジョンに行っていたらしい。しかし、この5年間でそんなポーションを手に入れることはできず、僕が自力で回復したという。
その話を聞いた俺は最初は嘘だと思った。だってありえないだろ?そんな漫画や小説の中にしかない物が現実にあるなんて。しかし、先生が持ってきたモンスターの素材や武器を見る事でこれは本当なんだと実感した。そして同時にもう、僕の両親は居ないのだと。もう、会えないのだと•••しかし、僕の目から涙は、悲しいという感情は出てこなかった。代わりにあぁ、そうか。死んだのか•••と、両親が死んだ事に対して酷く薄情だった。悲しいはずなのに、泣きたいはずなのに、まるでこれくらい普通だと、これくらいでいちいち悲しむなと言われている様だった。そしてそう感じている自分に怖くなった。
「強いな•••2人は」
5年間大好きな両親が死んで、唯一の兄は植物状態になり、あの2人の方が辛かったはずなのに僕を助ける為だけにトラウマがあったであろうダンジョンに潜り、死と隣り合わせになりながら毎日頑張っていたのだ。本当に情けない。兄として、唯一の家族として。
僕がそう自己嫌悪に陥りながら先生と今後の話を進めていると誰かが物凄い勢いで部屋の中に入ってきた。
「春兄!!」
「兄さん!!」
なんだか酷く懐かしく聞こえるその声の方向に目を向けると、記憶の中にいた姿から随分大人になった2人の妹が目に映った。
「久しぶりだね。千夏、千秋」
「兄さん•••良かった。動いてるっ•••ほんとによかったっ」
そう言いながら涙を流す千秋。その隣で千夏が
「春兄•••ごめんなさい!!私が•••私達がもっと早く覚醒してたらお母さんもお父さんも、春兄も助けれたの!それなのにずっと守ってばっかりで何にも出来なかった!!ごめんなさい•••ごめんなさい」
「それは違うよ千夏。母さん達は僕らや他の人達を助ける為に、自分から戦うと決めたんだ。僕だってそうだ。2人が大切だから、僕の唯一の兄妹なんだから僕は戦おうとした。命を賭ける理由なんてそれだけで充分だ。きっと母さん達も同じだろう。だから、そう自分を責めないでくれ」
「でも•••でもっ」
「でもじゃない。確かに母さん達が死んだのは辛いよ。でも僕はまだ生きている。2人がモンスターを倒してくれたおかげで僕は生きることが出来たんだ。だから天国にいる2人の為にも3人でこれから頑張ろう。」
そう言うと泣きながら頷く2人
「それに•••やっぱり2人は笑顔じゃないと、僕まで泣きそうになるよ」
そう言って千夏の顔を触り、強引に笑顔にする。
「ぷっ、あははっ、あははは!」
隣にいる千秋が吹き出した。それと同じタイミングに僕も笑い、つられて千夏も笑いだす。
母さん達見ているだろうか。妹達はここまで折れずに僕も救ってくれたよ。ほんと自慢の妹だ。
そう思いながら僕は2人と抱き合い、妹達との再会に喜んだ。