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捨てられた大聖女はエルフから溺愛されて自国に舞い戻る  作者: 竹輪㋠


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黒い怪物


**残酷な描写があります。ご注意ください**

 あんな恐ろしいものを腕に移植して、アーノルドはとうとう人であることも捨てたのだ。

 私はモモを抱いて空に向けて閃光弾を放った。


 ドンッ。

 一瞬空が明るくなるとそれを合図に辺りを囲んでいたレリア軍がこちらを照らした。

 復讐を……私の首を取ろうと思わなかったら、きっと逃げられただろうに。

 アーノルドのプライドが許さなかったのだろう。


「フィーネを、黒いドレスの女を断頭台にのせろ!」

 ヴィクタに応戦しながら諦めないアーノルドが残りの親衛隊に指示を出した。

 すでにモモを抱えて茂みに隠れた私は息を殺していた。

 見つからなければアニーたちが助けにきてくれる。


「いたぞ! 黒いドレスの女だ!」

 そこで親衛隊の一人がその腕をとって断頭台に連れて行った。

 両手をバタバタと振って抵抗すると両側から二人で体を押さえつけた。

「アーノルド様! 捕まえました」

 とうとう首を木枠にはめられてしまい、親衛隊がアーノルドにそのことを告げた。

「よし、首を落とせ!」

 ガッツ!

 その時、ヴィクタの炎の剣がアーノルドの魔物になった腕を捕らえていた。

 炎に照らされたアーノルドは下卑た笑いを浮かべながら断頭台を見ていた。

 親衛隊がロープを外すと上にあった大きな刃が音とともに落下した。


 カラカラカラカラカラ……。

 ガシャン!

 ドシャッ。

「なっ、や、やめっ!」

 何かに気づいたアーノルドが叫んだ時、ヴィクタの剣が深く腕に刺さった。

 断頭台の大きな刃が落ちる時、少しだけ首を固定された頭が上を向いて、その顔がうっすらと見えていた。

「キ、キーラああああああっ!」

 ゴロリ、と首が落ちるとネックレスで姿を変えた魔法が解ける。

 そこには金色の髪の元エルフの姿があった。


 キーラは私に変身用のネックレスをかけるようにお願いしてきた。

 私の代わりに自分の首を落としてもらえるようにと。

 彼女は笑っていた。

 アーノルドが私の首を刎ねるつもりであることに運命を感じると。


 うまく入れ替われたのは神の思し召しかもしれない。

「ひぐっ……うう……」

 息を殺そうとして、とめどなく涙がでて、モモを抱きしめていた腕に力が入った。

 刃が落ちる時、きっと私もアーノルドも同じものを見たに違いない。

 彼女は微笑んでいた。

 ……ほんの一瞬、彼女は正気に戻れたのかもしれない。

 彼女は解放されたのだ。


「あああああああああっ!」

 アーノルドの叫びが空を貫くようだった。

 そして、あちこち無造作に雷が落ちてくる。

 ドン。

 バリバリ……。

 それは私が隠れていた茂みにも飛んでくる。

「モモ」

「フィーネさま、泣いておられるのですか? あれは、いったい……」

「説明は後でするわ。みんなの所へ帰りましょう。歩けるかしら?」

「ゆ、ゆっくりなら……」

「手を貸すわ」

 ここにいると危ない。フラフラと頼りないモモを支えて移動した。


「謀ったなぁ! よくも! よくも!」

 狂ったように叫ぶアーノルドに共鳴するように腕の黒い魔獣が暴れまわり、辺りに雷をまき散らした。あちこち落ちてくる雷にみんな苦戦していた。

 アーノルドと戦うヴィクタにレリア軍も加勢する。しかしアーノルドの異様な姿におののいていた。うねうねと動く黒い魔獣は毒も持っていて、触れた草木も枯らしているのだ。 


「フィーネ様!」

 私のところににアニーが駆けつけてくれた。

「モモ様はご無事だったのですね!」

「モモ!」

 後ろにララとルルもきている。

「あなたたち、どうして!?」

「すみません、私がドジ踏んで見つかってしまったんです」

 アニーはそう言ったのだけれど、レリア国のエリート諜報部員が素人に後をつけられるなんてありえない。きっと強引についてきた二人を連れてきてくれたのだろう。

 二人がきたことでモモが心底安心したのが見て取れた。

「後はヴィクタール様とレリア軍に任せましょう」

 アニーの声に頷き、安全な場所へ立ち去ろうとすると、

 ドン、と音がしてヴィクタがアーノルドを地面にたたきつけたのが見えた。

 しかしその体を守るように黒い魔獣はふくらみ、ヴィクタたちを牽制する。

 毒に触れないよう距離を取ったヴィクタは燃やすことにしたのか炎の魔法を構築し始めた。


 それを察知したアーノルドはジェシカを呼んだ。

「ジェシカ! 治癒するんだ! はやくこい!」

「ア、アーノルド様……」

 オロオロとしながらジェシカがアーノルドに近づく。左腕は黒い魔獣がうねうねと動き回っていた。その恐ろしさにジェシカの顔は蒼白だった。

 アーノルドは叩きつけられて足が使い物にならないようだ。

「はやくしろっ!」

 アーノルドにすごまれてブルブルと震えながらジェシカが力を使った。

「ぐ、ぐぼっ……がっ……。な、なに、してるっ」

「ええっ、なにっ、だ、だって? どうして?」

 その時、なにが起こったのかわからなかった。ジェシカが治癒力をアーノルドの足に注いでいると、アーノルドの腕の黒い魔獣の部分がブクブクと膨れ上がった。

「きゃあああああつ!」

「逃げるな! 治癒が全然進んでいない」

 アーノルドがジェシカが逃げないようにもう片方の腕で押さえたが、肝心の傷は治らないのに腕の魔獣ばかりが膨らんでいく。

「お許しください! お許しください!」

 ジェシカの懇願する声が聞こえた。それでもアーノルドは離してくれない。

 左腕の黒い魔獣はあっという間にジェシカを飲み込んでしまった。

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