第47話 とあるyoutuberの末路(2) ——side【花咲ゆたか】
そして、ついに待ち合わせの時間になった
しかし、いざ、会うことになって怖じ気づいたのか、真白がなかなか姿を現さない。
僕はイラついてくる。
まさか冷やかし?
それとも……。
『まだ真白ちゃんが見えないよ……本当に来ているの?』
DMを送る。
今まで取り繕ってきたけど、こっちが疑っていることを伝えるために、きつめに伝えた。
これで反応が無くなるのなら、間違い無い。冷やかしだ。
どこのどいつだか分からないが、もしそうならムカついて仕方が無いだろう。
しかし、次のメッセージで僕は胸をなで下ろす。
『じゃあ、ちょっと前に出てみますね。手を振りますので、それが私です』
ほう。やっと姿を現す気になったらしい。
僕は少しワクワクしながら、足を速める。
すると、しばらくして橋の下から一人の少女が姿を現した。
「あっ……」
つい、声が出てしまった。
なぜなら、顔は見えないものの、一目で可愛いと直感したからだ。
やや大きめのパーカーを着ている。思ったより身長は高いものの、華奢なのがシルエットで分かる。
間違い無く男ではなく、女のスタイルだ。
しかも、スタイルもいい。細いのに、出るところはしっかり出ていて楽しめそうだ。
写真は盛れるので色々と誤魔化せるが、僅かにみえる顔の輪郭や口元から、送られて来た美少女なのも間違いない。
思わず、下半身がむずむずするのを感じる。
今日、この後やれると考えるとさらに興奮する。
僕はさらに歩くスピードを早めた。
「ん?」
ある程度近づいたところで、急に真白——パーカーの女が踵を返す。
まるで逃げるように、走り出したのだ。
「なっ!?」
どういうことだ? 僕を見て逃げた?
追いかけようとすると、どさっとコケて、スカートから伸びる白い足が見えた。
チラリと下着も見えたような気がして、さらに僕の股間が反応する。
いや、そんなことはどうでもいい。
どうして逃げるんだ?
僕は走り始めるものの、真白の足の方が速く次第に距離を取られ、そして橋桁のあたりで姿が見えなくなった。
おい!
おい、おい!
逃げたのか? 急に気が変わったのか?
そんなことを考えているうちに、僕の前には川が流れているだけになってしまった。
クソッ! せっかくのチャンスだったのに! なんで逃げられたんだよ!
あんな特上の上玉。顔つきも、スタイルも今までにないものだったのに。
会ってしまえば、ほぼヤレるのは間違い無いはずだったのに!
僕はスマホを取り出し、急いで連絡する。
『真白ちゃん……さっきここにいたはずなのにどこに行ったの?』
返事がない。
『ねえ。返事してくれないかな? じゃないと有名vtuberとか紹介できなくなるよ』
返事がない……。
僕は思わず、スマホを地面に叩きつけたくなる。
前ショッピングモールで壊して間もないのにすぐに気がつき、堪えた。
イライラしてくる。
もし会うことがあれば、あの女……徹底的に犯してやる。
そう思うのだが、しかし。時間だけが無情に過ぎていく。
『30分待ったよ……いったいどこにいるの? 返事は?』
『どうして? こういうことすると訴えられるよ?』
『1時間待ったよ。怒らないから。出ておいで?』
一時間経ち、二時間経った。
会っていれば、今頃思いっきりヤレていたのに。
久しぶりに女を抱けたのに。
逃げたことに、待ち合わせをすっぽかしたことに罪悪感を抱かせるため泣き脅しを入れる。
『2時間待った。全部嘘だったの?』
『3時間待った。風邪引きそう』
焦りと共に、スマホに入力するメッセージが荒くなっていく。
日が暮れた。今日一日を全く無駄に過ごしてしまった。
『バーカ。ぶーす。市ね』
そこまで送ったところで、DMが送られて来た。
「おいお前、SNSとyoutubeチャンネル見てみろ」
youtubeを共同でやっている男からだ。
そういえば、さっきからSNSの通知がエラいことになっていた。
真白とのことで面倒だったので通知は全て無視していたのだが。
まあいい。何か過去の動画でもバズったのかもしれない。そういえば、少し前に撮影した猫虐待を告発する動画がバズったのだろうか。
もっとも自演ではあるのだが。
まあ、動画がバズったのなら、真白みたいな上玉だって喰えるだろう。
それに、まだ西峰千照もいる。
僕はそう考えのんきにSNS通知を開いた。
「な……なんだこりゃ?」
通知の間隔がだんだん短くなっている。
その内容は、主に罵倒だった。次に多いのは、冷静にyoutuber【花咲ゆたか】を批判する内容だ。
——女子中学生を食い物にするyoutuber。
——キモいDM。
そして。
——女子中学生を「二人きりで撮影」にノコノコとやってきたご尊顔
youtubeにはご丁寧にも、撮影されていたのか僕の情けない顔が映し出されていた。
なんてことだ。真白はこれを撮影するつもりだったのだ。
ただすっぽかすだけではなく、こんな形で騙されるとは夢にも思わなかった。
ドッキリ企画ではない。最初から、これが目的だったのだ。
コメント欄には『こいつ通報しますか?』『これは犯罪』などと書き込まれており、どんどん伸びていく。
さらには『特定班はよ』の文字も。
冗談じゃない。やってられるか。
最初から仕組まれたことなのだ。全部、アイツ——真白のヤラセだ。
急いでSNSで表明しよう。
そう思ったとき、一通のDMが届いた。
このクソ忙しいときに何だよ?
無視しようとも思ったが、その差出人はそれができないものだった。
タイトルも、僕を地獄に叩きつけるのに十分なインパクトがあった。
差出人:YYYM事務所
タイトル:契約解除通知
……え……嘘だろ?
こういうのって事情を聞いたり連絡なしで来るもんなの?
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