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第38話 5月5日 対決(6)

 まさか優理のお父さんに「猫と仲良くなる方法」を聞かれるとは思わなかった。


「仕方ありませんね。では特別に教えましょう」


 俺は餌やりの方法を簡単に教える。もっとも、特に変わったことは教えられないのだが……。


「おお、ありがとう。……クロちゃーん、美味しい美味しいおやつですよ〜」


 …………。

 俺は思わず笑いそうになるが、本人は大真面目だ。でもなんとなく口調は優理がクロと遊ぶときと似てるな。親子だからか?

 クロは、目の前の「おやつ」をしぶしぶ舐め始めた。

 イヤなのか? おい、クロ無理しなくて良いぞ。


「おおぉ。素晴らしい。見向きもされなかったのに。西峰君のおかげだな」


 急にデレはじめたおっさん。案外チョロいな……。

 優理がチョロいのは父親譲りだったか。


 さて、おっさんの様子だが。俺がどうこうというより、クロが頑張っている。

 俺の顔を立ててくれているように見える。気のせいか?


「さっきは済まなかったな、西峰君。まさかこんなに猫が可愛いとは……。それでだが——」


 手のひらくるっくるなんだけど。


「君はなかなか信頼できる男だ。優理のことを君に任せてみようと思う。たのむぞ」


 時計を気にし始めた優理のお父さんはそう言って俺に頭を下げた。

 クロに癒やされたのかどうなのか、ずっと物腰が柔らかく、俺に親しみを感じているようだ。


「あっはい」

「では西峰君、失礼する。ゆっくりしていけとは言わんがまあ遅くなる前に帰りなさい」


 そう言って優理のお父さんは去って行った。

 よかった。とりあえず、海に沈められずに済んだようだ。


「お父さんったら、ごめんなさい」


 優理は申し訳なさそうにそう言った。優理は悪いことはしていないのだし謝る必要はない。


「いや、全然気にしてないよ。それより、あの様子だとやっぱり毎日遅くて大変なんだ?」


 俺は気になっていたことを口にした。


「……はい。仕事で疲れてるみたいですね。でも、今日はたまたま時間が空いたのでしょうか。たつやさんがいらっしゃることも多分お母さんから聞いたのだと思います」

「そっか。すぐ帰れって言われなかったことは、少しは認められたのかな?」

「はい、そうだと思います。ありがとうございます。私もお父さんに色々言ってたのに、なかなか聞いてくれなくて——」


 優理は俺を熱のこもった目で見つめてきた。


「たつやさん、かっこよかったです。ハッキリと言ってくれて……だから、お父さんも認めてくれたんだと思います」

「だといいけどね。でもまあ悪い結果にならなくて良かった」

「はい! たつやさん、本当にありがとうございました」


 そう言って笑った優理の顔はとても晴れやかだった。ひょっとしたら、少し悩んでいたのかもしれないな。

 優理の交友関係に対する態度とか、いろいろ。

 全部解決とはいかないまでも、良い方向に向かうのだろう。


 それからしばらく俺たちは黒猫のクロと遊んだり、テレビを見ながら他愛もない話をしたりしていた。

 ソファに二人で寝っ転がったりもしたけど、互いの遠慮があるのか、少し距離があった。

 父親来襲というイベントのせいかもしれない。まあ、仕方が無いし、これでいいのだろう。


 やがて、日が暮れてきて俺は帰る時間になる。


「そろそろ帰らないといけないかなあ」

「ですよね。あっという間でした。楽しい時間ってどうしてこんなにすぐ過ぎちゃうんでしょう?」


 文句を言いながらも、休みの日を楽しく過ごしたという充実感があるのか、優理の顔は明るい。

 その表情のまま、上目づかいで俺を見る優理。


「あの……たつやさん、時々両親が夜帰ってこない日があるんです。その……あの……。そういうときって心細くて……たつやさんって、外泊すると両親に怒られたりしますか?」


 遠回しに聞く優理。もしかして……。


「泊まることを言えば怒られたりしないよ」

「じゃあ、あの、夜私が一人になる時、うちに泊まることってできますか?」


 えっ!? いやそれはまずいだろう。いくらなんでもあの優理のお父さんが許さないんじゃ無いかな。黙っておく手もあるだろうけど、バレたら土の中だ。


「う、うーん。優理のお父さんが許さないでしょ?」

「と、いうことは私のお父さんから許可があれば泊まれるんですね!」


 どうしてそうなる。


「聞いてみます!」


 嬉しそうに言う優理。まあ……あり得ないだろうなあ。


「う、うん。それがいいと思う。じゃあ、帰るね。明日はよろしく。朝11時だね」

「はい。頑張りましょう!」


 そう言って有利はぐっと拳を握りしめる。

 明日は【花咲ゆたか】を誘き出し、動画を撮る。その様子を配信なり動画にして、あのキモいメッセージと合わせて晒せば、千照への脅威は収まるだろう。


 放っておけば、また別の被害者が出てしまうのだろうし。


 タイムリープ前とはいえ、千照を苦しめた復讐でもある。

 それは是非とも成し遂げたいところだ。


 俺は決意と共に、明日の決戦を迎えることにした。



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