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第36話 5月5日 対決(4)

 俺たちは明日の決戦に向けて俺たちは作戦会議をした。これでアイツらを晒しさえすれば、千照の問題は解決するだろうか。

 だとすると、優理とはもう一緒にいる理由が無くなる。それは少し寂しいかもしれない。


 きゅるるるる。


 誰かのお腹がかわいく鳴る。優理だな。そういえば、もうすぐお昼だ。


「あっ、す、すみません!」


 顔を赤くして謝る優理に、俺は笑いながら答えた。


「そろそろ昼ごはんにしようか? えーっと食べに出かける?」

「いえ、私下準備だけしておいたので、少しだけ待って貰えたら作れますが、いかがしましょう?」

「そうなんだ。じゃあ、頂いてもいい?」


 優理の手料理か。それは楽しみだ。

 お弁当も作っていたし、その時も美味しかった。十分に期待できる。


「じゃあ、少し待っていて下さい。持って来ますね」


 そんな期待をしながら待っていると、本当に10分程で出てきた。


「お口に合うといいのですが……」


 そういって出されたものは卵焼きに唐揚げにハンバーグなど、色とりどりのおかずだった。どれも美味しそうで食欲を誘う。

 さらにご飯まで炊いてあったらしく、それも出してくれた。

 もちろん白米もあるけれど、どうやらおにぎりにして持ってきてくれたようだ。海苔付きである。

 お椀には味噌汁もある。至れり尽くせりとはまさにこのことだ。


「いただきます」


 まずは一口目として卵焼きを食べる。ふわっとした食感でとても美味しい。味付けも良い塩梅で好みの味だ。

 次に唐揚げを食べてみる。これもジューシーで肉汁が溢れてくる美味しさだ。しかも冷めているのに衣がサクッとしていて、これもまた良い感じだ。

 ハンバーグもまた、肉汁たっぷりでソースなしで美味しい。優理はよいお嫁さんになるだろうなあ。


「たつやさん、どうですか……?」


 不安そうに聞いてくる優理を見て俺は素直に答えることにした。


「すごい美味しい。毎日食べたいくらいだ」


 本心を言うと、優理は安心したように微笑む。


「じゃあ、学校での席もお隣ですし、これからお弁当毎日作っていってもいいですか?」

「いいけど、毎日って俺、そんなにしてもらう理由ないよ?」

「私がしたいと思ったので。いろいろ、お世話になってるから……イヤじゃなければ」


 押しが強い。さっきからグイグイ来るけど、これが俺と一緒にいた変化なのだろうか。

 良い方向に変わっているといいけど。


「嫌じゃ無いよ、嬉しい」

「やった、やりましたっ」


 小さく喜ぶ優理がかわいい。

 その後2人で後片付けをした。でも、すると言ったけど、皿洗いはさせてもらえなかった。

 さて午後はどうしよう、そんな話をしようとしたところ……。


 ピンポーン。


 玄関の方からチャイムが鳴った。優理は誰だろう、と不思議そうに首を傾げながら見に行く。すると玄関の方で、優理と誰かが言い合いを始めたようで、急に騒がしくなる。

 何だろうと思って様子を窺おうとすると。


「ほう、娘をたぶらかす男がどんな奴かと思って来てみれば——」


 ドスの効いた低い声と共に現れたのは40代後半くらいの精悍な男性だった。俺から見ればおじさんという風貌だけど、きっちりと整えられた髭を見るとダンディという言葉が似合うような人だ。

 スーツの上からでもわかるほどガッシリとした体つきをしている。そして何より威圧感があった。正直怖い。


「あ、お父さん!  今日は帰らないって言ってたのに!?」


 やっぱりそうか。優理の父親だ。っていうか、俺も優理と同じ気持ちだ。

 どうして急にやってきた?


 俺は慌てて立ち上がり、頭を下げた。


「こんにちは……俺は高橋さんの同じクラスの友人で西峰達也といいます」


 そう言うと父親は俺をギロリと睨む。

 ひえっ、こわっ!?

 この人絶対堅気じゃないよね? 普通の人はこんな顔するか?


 思わず震え上がりそうになるがなんとか堪える。


「まあ、そこに座りなさい。優理も、す、座りなさい」

「……はい」


 優理は、毅然と答える。

 前聞いていた話だと、とても厳しいお父さんだということだ。優理のスマホでやりとりするメッセージ、そして交友関係にチェックを入れていたらしい。

 男とやり取りをしようものなら、電話したり圧力をかけ遠ざけていた、そう話していた。


 俺が感じた印象を正直に言うと「思っていたよりヤバいのが出てきたな。どうするんだ?」である。


 この様子だと、優理に近づく男は簀巻(すま)きにして海に沈められたか、土に埋められたかどちらかだろうか?

 まあ、そのおかげで優理は純粋無垢で、汚れることもなくこれまでやってこれたのだろう。


 そして、それが一ヶ月前、急に緩くなった。だとしたら、俺も見逃してくれると良いのだけど、そうはいかないようだ。

 まずは優理が口を開く。


「お父さん、たつやさんとは何もやましいことはありません。それに、とてもいい人ですし、何の問題もありません!」

「う、まあ、そうなんだが——」


 あれ? 優理に対して物腰が柔い。優理には強く出られなくなっているようだ。

 とはいえ、やましいこと……一緒にタオル一枚同士で風呂に入ったことがあったな。俺はその時、優理の姿を見て若干、身体が反応してしまった。

 一緒にお風呂に入ったことは果たしてやましいことになるのか?

 なるよなぁ。まあ、黙っていればいいか。


 優理のお父さんは俺の方に視線を向けた。そこには、絶対に敵を殺すと誓ったような表情があった。


「さて、西峰君と言ったな。優理とどこまでやった?」

「え?」


 何聞いているの? このおっさん。

 キスとか、その先のエッチのことなんだろうけど、もちろん俺にやましいことはない。


 ——お風呂に一緒に入ったことは黙っていればいい。たぶん。



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