第30話 5月4日 幼馴染み(5)
ヒナの温かさに触れ、俺も目を閉じるとあっという間に闇の底に意識が落ちていった。
タイムリープ前の俺たちだったら、このまま眠ってしまってそれだけだったのかもしれない。
最後の一線を越えるのが怖かった。
しかし、今、ヒナは大きく変わってしまったように思う。
ふと、下半身の違和感に気付き目を開ける。
ぼやけた視界が鮮明になり、全身の感覚が戻っていく。
見ると、仰向けになった俺の上にヒナがいて、柔らかい胸を押しつけていた。
「タツヤ……やっと起きたね」
「これはいったい?」
「あのね。やっぱり……最後まで……して欲しいの」
顔を真っ赤にしつつ、ヒナは起き上がり、俺にまたがった。
腰をくねらせ俺の先っちょがヒナの足の付け根にある入り口に接していた。
俺の先端はヒナの潤滑油が染み出す場所の柔らかさと熱を感じている。
「あっ……なんかぴくっとした……いい?」
ここまでしておきながら、ヒナは俺に聞いた。寝ている間にできただろうに俺が起きるまで待っていた。
何もせずに帰ることだって出来たはず。
でも、そうしなかった。ヒナは相当の覚悟を持って俺に縋っている。
この状況で拒否したり、ヒナを引き剥がせばどうなるか。多分、ヒナは泣くのだろうな。俺には隠して、何事も無かったように家に帰って、一人で悲しむのだろう。
でも俺は……ヒナとの関係を変えたくなかった。
そっとヒナの身体を離す。
「タツヤ……ダメなの?」
「うん——こういうのは、ちゃんと——」
「やっ……やだッ……」
ヒナの瞳から光が消え、ぽろぽろと涙がこぼれる。
その瞬間、世界がぐにゃりと歪んだ。
視界が遠くなり、暗闇に包まれる。
★★★★★
俺の脳裏に、顔をぐしゃぐしゃにして泣いているヒナの顔が浮かび上がった。
その場所には、誰かがいて、ヒナの両腕を押さえつけている。
無理矢理、何かしようとしていた。
イヤだ……こんな映像見たくない。
なのに、拷問のようにその映像は続き、俺の意識が再び闇の底に沈んでいった——。
★★★★★
はっと目を開ける。
あれ?
仰向けになった俺の上にヒナがいて、柔らかい胸を押しつけていた。
「タツヤ……やっと起きたね」
「これはいったい?」
「あのね。やっぱり……最後まで……して欲しいの」
……これは……?
また時間がまき戻った?
俺は寝起きのけだるさを感じる。にもかかわらずヒナがくっついていることで、あそこはギンギンになっている。
顔を真っ赤にしつつ、ヒナは腰をくねらす。俺の先っちょがヒナの足の付け根にある入り口に接していた。
俺の先端はヒナの潤滑油が染み出す場所の柔らかさと熱を感じている。
「あっ……なんかぴくっとした……いい?」
マジか……。
もしかしてまた、時間がまき戻ったのか? ヒナを拒否したその未来を俺は見たのか?
「ダメかな?」
今の俺はヒナを引き剥がすのは無理だ。ヒナの泣き顔を思い出す。まるで、絶望したような正気が失せた瞳。
その結果、連絡が付かずいつの間にか転校してしまう——タイムリープ前みたいな酷いことになるのだろう。
俺の胸に残る痛みは、きっとそういうことだと思う。
また同じように繰り返す? ここで拒否したから?
だとしたら、ヒナを拒絶なんかできない。ダメなんてとても言えない。
理屈や俺の気持ちや心は後回しだ。そう思えば思うほど、俺の胸を締め付ける何かがある。
その痛みを握り潰す。
とにかく今はヒナの願いを叶える。俺はそう決めた。
ここで見殺しにするなんてことできない。例え、俺が悪者になってもいい。クズだと言われてもいい。
何かを失ってもいい。
それでも、俺はここで冷たく引き剥がすなんてことはできない。
俺はヒナの顔を見つめた。とても色気があるけど、以前から知っているあどけなさも感じる。
「うん。わかった」
「わあ…………嬉しい。ありがとうね。でもね、今だけでいいから……終わったら忘れても良いから」
「え、でも」
忘れるなんて、そんな薄情なことなんて出来ない。そう思うのだけど、ヒナは全てを察したような表情で「もう何も言うな」と顔を横に振った。
「全部、私のワガママだから。じゃあ、入れるね…………ん……くっ……」
俺の先端がヒナの入り口にあてがわれる。そのままヒナは腰を沈め、顔をしかめた。それでも、歯を食いしばり瞳を潤ませて、俺の顔をじっと見つめてくる。
「くぅ……」
相当痛いのかもしれない。
俺はその痛みが弱くなるように努めることにした。少しでも気が紛れればと思い、口づけを交わしながら頭を撫で優しくヒナの動きをアシストする——。
☆☆☆☆☆☆
結局俺たちは、何度もしてしまった。本当は最初の一回で終えるつもりだったのに、ヒナからどうしてもと言われ——結局ヒナの中に繰り返し俺の欲望を放ったのだった。
体の負担はヒナの方が大きいだろうに、何度も求められた。
そして今。
寝てしまったときのように俺はヒナを腕枕していた。俺の顔のすぐ隣にヒナの顔がある。
けだるい中で、お互いの体温が気持ちいい。
「えへへ……嬉しいな。私、初めてだったから。タツヤが相手でよかった」
「俺もだよ。でも、辛かったでしょ? もっと俺がうまく出来たらよかったのに」
俺は1回目の直後に見た光景を思い出す。血なんて見慣れないので少しの量でも驚いた。
「ううん。初めてだからこれでいいの」
嬉しそうに笑うヒナ。
「……これで、私は何があっても耐えられるから」
ヒナが小声で言った。俺はよく聞こえなかったし意味を理解できなかったから聞き返す。
「どういう意味?」
「夢というか映像を見ても頑張れるというか……うん」
「ヒナはさ、つらいときは、俺に頼れよ。隠さずにさ」
「じゃあ、つらいときはこうやって最後までしてくれるの?」
「えっ?」
「ふふっ。またお願いしようかなぁー? それにタツヤがしたくなったら、いつでも言ってくれたらするよ?」
「おい」
「ふふっ……なんてね。でもね、言っとくけど、タツヤ以外に絶対こんなこと言わないよ。絶対に、絶対にいやだもん」
ヒナはクスリと笑った。
どこまで本気なのだろう?
それに。付き合うとかどうか言い出さないのは、どういうことだろう?
言いかけて止めていたみたいだし……だとすると、俺から告白するのは、やめた方が良いのだろうか?
まあ、またもとの幼馴染みという関係に戻るのかもしれない。
そう考えると、不意に優理の顔が頭に浮かんだ。
優理は優しくて頑張り屋さんで……まだチョロい所があるけど魅力的なのは間違いない。
でも、俺は妹の保護と復讐に優理を利用している。
そんな俺が優理の寂しさを用して付き合ってはいけないと思う。俺が優理をどう思っていたとしても。
「タツヤ、なーに考えてるの? もしかして……」
すっかりリラックスしたヒナが聞いてくるけど、最後何言ったか分からなかった。
優理のことを考えたのが伝わったのだろうか。最後までした今なら、ヒナに考えていることが全部伝わってしまいそうだ。
でも、ヒナと一緒にいるのに他の女の子のこと考えちゃいけないよな。
「もしかしてって、ヒナは何だと思ったの?」
「むー。言わない! でもね……これでちゃんと嫌な記憶を上書きできたと思う。本当にありがとうね。でもね、タツヤは私と、しちゃって嫌じゃなかった?」
俺はううんと首を振って答えた。
「そっか。よかった」
今なら、ヒナに何でも言えるような気がする。
ただの幼馴染みだけでなく、肌を重ね互いを分かり合っているからこそ、普段なら信じられないことも信じてもらえそうな気がする。
ヒナも同じように思っているんじゃないのかな。
「なあヒナ、信じてもらえないかもしれないけど、俺も変な映像というか、体験をしたんだ」
「体験? タツヤも辛い目に遭ったの?」
「まだ遭ってない。これから起きることなんだ」
「これから起きること……そっか。タツヤもなんだ」
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