第22話 5月3日 デートと敵の存在(8)
俺はスマホを開き、SNSアプリを立ち上げる。もちろん【花咲ゆたか】がやっているSNSだ。彼に連絡をするための手段としてネカマアカウント作る。
すると、ふむふむと言って優理がのぞき込む。近い……。優理って、女の子がくっついたら男がどう反応するのか分かってないな?
肩や腕は柔らかく胸にも触れそうだ。しかも、服の隙間からブラや胸がチラリと見える。
意識してやっているならともかく、無意識というのが俺をドキドキさせる。
まずいまずい。
俺は下半身が反応しないようにスマホに意識を向けた。ネカマアカウント作成に集中する。
アカウント名は「真白」にしとこう。単純に、クロを見て思いついただけだけど。
プロフィールは、中学二年生ということにして……プロフは、そうだな、ヘッダーはクロにしとこう。
「優理、クロの写真を撮ってもらえないかな? ヘッダー写真にしようと思う。背景は特定されないようにしてね」
優理がスマホの画面を向けると、クロは動かず良いショットが撮れた。
「クロちゃんはお利口さんでちゅねぇ」
ご褒美にチューナントカとかいう猫をダメにする餌をあげる優理。俺はその姿を斜め後ろから一枚撮る。目鼻口は少しだけ映しつつも、誰か分からないようにして。
シャッター音が聞こえたのか、優理が振り向く。
「あっ、たつやさんもクロちゃんの写真撮るのですか?」
「ううん。ほら、これをプロフィール写真にするんだ」
俺は優理の斜め後ろから撮った写真を見せた。念のためぼかしを入れる。斜め後ろからなのに、もうこれだけで可愛いと期待できる良い写真になった。
「これが私ですか? ……私だと分からない感じですね!」
最後に、『はじめまして、よろしくお願いします』というメッセージと共に、登録する。
「ヨシできた」
「えっと、これは誰ですか? 私の名前じゃないですし」
「うん。これはどこにも存在しない女の子だ。このネカマアカウントを俺が操作して、【花咲ゆたか】に近づく。優理は【花咲ゆたか】を調べて欲しい。SNSとかブログがあれば調べて、怪しい動きがあれば俺に教えて欲しい」
「ドキドキしますね。たつやさんと一緒に、ちょっと悪いことをしている感じがしますっ」
そう言いつつも優理は嬉しそうにしている。
ああ、俺はやっぱり優理を悪の道に染めているんじゃないのか……?
純粋な優理を汚しているような。でも、そんな背徳感にぞくぞくする。
「優理、お願いがある。基本的には見るだけにして欲しい。メッセージとかは送らないでね。それと気がついたことがあれば、俺に言ってほしい。困ったことがあっても隠さないで欲しい」
「はい。分かりました。頑張ります」
「じゃあ始めるか」
まずは、俺のスマホから最初のメッセージを入力し始める。
『気になりました。話しましょう』
俺が書いた文章を、優理に見せる。ネカマなんかやったことないので、女の子らしさを出したい。
「こんな感じどう思う?」
「うーん、少し変えてもいいですか? 私だったら、こうするでしょうか」
優理は俺のスマホを操作し、文章を変更した。
『はじめまして、花咲ゆたかさん。私は真白と申します。少し前から動画を拝見してとても楽しく感じて、ファンになりました。もしよろしければ、お話ししませんか?』
少しじゃない。フルリニューアルだ。
ずいぶん丁寧な文章だと思う。女子中学生という設定だけどイケるのかな?
優理っぽい初々しさもあっていいかもしれない。
俺が書いた文章よりずっとマシだ。
「じゃあ、送るね」
「はいっ」
ワクワクするのか、テンション高めに答える優理。なんか楽しそうだな。
気付くと、俺も口角を上げていた。どんな返事が来るのだろう? 頭悪そうな返事が来るのだろうか?
俺はスマホのボタンをタップする。
「じゃあ、送信!」
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