第21話 5月3日 デートと敵の存在(7)
優理に恥ずかしい写真を俺に送っても聞いたところ……。
「たつやさんが欲しいのなら……その、が、頑張りますっ!」
と言った。当然それではよくない。
そもそも俺と付き合っていないし、つきあっていたとしても、絶対安心できる相手ならともかく、まだ深く知らない相手に送るのは無防備すぎる。
「いくら俺でも、アソコが映った写真送ったらダメでしょ。俺は見てもいいの?」
そう言って、俺はカメラを起動したスマホを優理に渡すフリをする。
「……あッ……想像してみたら——」
実際に自分で撮影し、アソコの映った写真を俺に送りつけることを想像したのだろう。
優理はさらに顔が赤くなり、耳の先まで真っ赤になった。
「すごく恥ずかしい……です。でもどうしてか、一緒にお風呂入ってタオルだけだったので……できるかなって思いました」
恥ずかしいだけが理由じゃない。ばらまくぞと脅される可能性だってある。
認識が甘いので、分からせるしかない。俺は心を鬼にする。
「ていうかその時見えてたよ?」
「えっ!?」
優理は限界を超えたのか、両手で顔を覆った。
もちろん、見えたというのはウソだ。
「み、見えたのですか……? 見苦しいものをお見せして……恥ずかしい……です」
湯気がでそうなくらい真っ赤になっている優理。
もし本当に見えたなら、見苦しいなんてとんでもない。
ただでさえ前屈みになっていたのに、そんなの見たら鼻血やいろんなものが噴出していたと思う。
「ごめん。嘘ついた。見えてないよ。でも、そういうことだよ? 写真は残るからもっと恥ずかしくなるかも」
「ああ、よかったです……そうですね。気をつけます」
わからせが完了した。
落ち着いたはずの優理が渋い顔をして俺に尋ねる。
「千照さんは、そういう恥ずかしい写真をこの人に送ってしまったのですか?」
「いや、俺が気付いたから全部削除した。大丈夫、送ってない」
「本当に良かったです。心配しちゃいました」
優理は安堵した表情を見せる。
妹のことを気にかけてくれるのは嬉しいな。
「それでさ、今日、ご飯食べたところでそういう話をしていたやつがいたんだ。千照の話をして、写真の話をしていた」
「私が眠っているときですか? そんなことがあったのですね。でも、写真を消してたのなら大丈夫ですね」
本当にそうだろうか?
まだ裏があるような気がする。だから……。
「いや、もう少し【花咲ゆたか】やその関係者を調べたい。千照を守りたい。優理、協力して貰えないかな?」
「私がですか? 私にできるのでしょうか?」
「大丈夫。俺が作戦を考えるし、危ないことはさせないから」
俺は頭を下げた。すると、
「頭を上げてください。分かりました。頑張りますっ」
そう言って微笑んでくれた。その表情に力強さを感じる。
「千照さんにまだ不安があるのですよね。たつやさんと、千照さんの力になれたらって思うので、できるかぎり力になりたいと思います」
「ありがとう。二人で頑張ろう」
俺は素直に感謝の言葉を告げた。すると、
「は、はい……二人で、ですねっ」
照れたのかぱたぱたと顔を手で仰ぐ優理。少し微笑んでいて嬉しそうにも見えた。
俺は作戦を伝えることにする。
「俺はネカマをしようと思う」
「ネカマ、って何ですか?」
「俺みたいな男が、女の子のフリをすることだよ。ネット上でね」
「えっ、タツヤさん、女の子になっちゃうんですか?」
頭に?マークを沢山浮かべて俺に聞く優理。
「違うよ。いや違わないけど……そうじゃなくて、具体的に言った方が分かりやすいな」
俺は優理にパソコンを触りながら伝えた。
まず、SNSにアカウントを作る。女子中学生という設定だ。そのアカウントを俺が操作して【花咲ゆたか】に近づく。
「それがネカマなんですね」
「うん」
俺は純粋無垢な優理に悪いことを教えている。
良いのかなぁ? 俺が優理を染めていく感じがする。
俺は優理を見て説明を続けた。
ネカマアカウントに【花咲ゆたか】から写真を寄越せとか連絡があれば、会いに行きますと提案する。まともな奴なら断るだろうし、ろくな奴じゃなければノコノコとやって来る可能性が高い。
誘き出されたやつを隠れて配信し晒せば良い。
顔が出てしまえば、二度と悪さは出来ないだろう。
「えっと、だいたい分かったのですが、そういうことをしても良いのでしょうか?」
「本当は良くないね。複アカとか、裏アカとか嫌われる要素があるし。ネカマは性別に嘘を付いているし、その嘘を使って【花咲ゆたか】を陥れることになる。バレたら、特定されて晒される可能性があるかも」
そう伝えると、優理は表情を硬くする。俺は努めて優しい声色で告げた。
「何かあったら、責任は俺が取る。晒されるのも俺だ。優理はどうなっても安全だよ。もちろん、そうならないように頑張る」
この作戦を思いついたのは、タイムリープ前の妹千照の行動が元になっている。
あの日、呼び出されたか千照自ら何者かの所に出向き、酷い目に遭い朝帰りしたのだろう。
連絡手段はSNSか、メッセージアプリだ。youtuber絡みなら、なおさらそうだろう。
「分かりました。私も気をつけます」
「じゃあ、ここからは俺のスマホでアカウントを作ろう」
【作者からのお願い】
この小説を読んで
「面白い」
「続きが気になる!」
「この先どうなるの!?」
と少しでも思ったら、ブックマークや、↓の★★★★★を押して応援してもらえると嬉しいです!
まだ★評価されてない方も、評価で応援して頂けると嬉しいです。




