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第16話 5月3日 デートと敵の存在(3)

 ヒナが何か意味深な様子で俺に言った。ヒナはミディアムロングの髪を靡かせながら、こちらをじっと見ている。

 ヒナは快活で明るく、しかも可愛いということで男女ともに人気がある。

 しかし、タイムリープ前では、二股されていた上に寝取られるのだ。それを知っていても、今のヒナからはとても想像できない。


「うん、友達。とても優しくて、頑張り屋さんでいい子だよ」

「そっか。タツヤがそう言うのなら、そうなんだろうね。それに、千照ちゃんと話しているのを見ても、裏表の無いまっすぐな性格なのが伝わってくる。どことなく品があって、これはモテそうですねぇ」

「めちゃモテると思う」


 強力な父親ガードがあったけどね、と心の中で付け足した。


「ふうーん。そんな人とデートとはタツヤもやりますなあ」


 ニヤッと笑いながら俺をからかうように肘を当ててくる。くっつきすぎだろ? と思うけど前からこんな距離感だった気もする。


「そんなんじゃないよ。ところで、ヒナ、相談があるんだけど」

「何? 長くなるなら、また後で話す?」

「いや、そんなに長くならない——」


 俺は簡単にさっきいたyoutuberの話を伝えた。


「千照ちゃんから聞いたことがある。凄く嬉しそうに話してたよ。でも、そんな悪い人だなんて信じられない」

「会話を聞いただけで証拠があるわけじゃ無いし、急だったから録音できたわけじゃない。なりすましや人違いの可能性もある。でも、もし事実だとしたら千照に被害が出るかも知れない。それは絶対に避けたい」


 俺もしっかり調べてみようと思う。タイムリープ前はこんな話に全然気付かなかった。これだけでは終わらない可能性もある。


「そうだね。私も気をつけなって言ったけど、やっぱりうまく伝わらなかっみたい。私からも言うけど、タツヤからもしっかり伝えた方がいいと思う。家族だからできることもあるよ、きっと」


 確かに、昨日バッサリ写真を俺が削除したけどヒナには無理だろう。怒って千照を責めるのも、ピンとこない。

 俺がしっかりしないといけないな。


 千照のことを言ったのは、ヒナを試す意味もあった。現時点では俺が知るヒナだ。用心深く千照を心配してくれる。

 もう少しツッコむか。


「分かった。それと、須藤先輩と話したことある? まさか、付き合ってるとか?」

「須藤先輩って、あの女たらしでしょう? いい噂聞かないしどうして私が付き合うの? 話すらしたことないよ」


 ヒナは間髪入れずに否定した。心なしか、「なんでそんなこと言うのよ?変じゃない?」とでも抗議するような調子だ。

 この時点ではまだ須藤先輩は接触してないみたいだな。


「そうだよね。ごめん、変なこと聞いて」

「いいよ別に。それよりさ、明日どうする?」

「ん? どうして?」


 明日のデートのことを言っているのだろう。

 ヒナは、優理の方をちらちら見ている。

 遠慮してんのかな?


「だって、ゴールデンウィークだよ? 明日も休みだし、タツヤが高橋さんを好きなら会いたくなるでしょ……?」


 やっぱ遠慮してんのか。そうだよな。ヒナはいつも俺の気持ちを察して、優先してくれる。

 俺もそういう所があって、だから会わない日も意外と多い。でも、会うといつもの幼馴染みという関係にすぐ戻る。

 今日だってそうだ。今だって。

 だからなおさら……目の前のヒナが、二股したり、あんなことを言うなんて信じられない。


「うーん。先に約束したのはヒナだし。約束は守らないとな」

「なーんか、義理とかそういうので会うのなら楽しくないでしょ? だったら、会いたい方を優先したら?」

「俺がそんなに優理を想っているように見えるか?」

「え……」


 ヒナは目を見開いた後、視線を落とした。それからゆっくりと首を横に振る。


「んー分かんない。楽しそうだし、嫌いじゃないしそれ以上の感情を持っているのは分かる。でも——ごめん、変なこと言った」

「ううん。ヒナが俺のことを考えてくれるのは分かるから。じゃあ、明日はよろしく」

「うん……おっけ、分かった。どうせ遊ぶなら、楽しくいこ? それに悩みがあったら何でも言ってよ。高橋さんのこととかさ?」


 タイムリープ前は明日俺から告白したあと、会ったり連絡したりする機会が減っていた。その日に変化があったか、いや、あるいはその前から……?

 だけど、今は俺の知っているヒナで間違いない。須藤先輩も知らないと言った。

 嘘を付いていないとすると、色々と周囲に変化があったのだろうか?

 油断大敵だな。


「はあ」


 からかうようなヒナの口ぶりに俺は溜息をついて続ける。


「それと、今日この後だけど。できれば千照とは、このモール以外で遊んでくれるか? 例の奴がまだいるかもしれない」

「おっけー。千照ちゃんのことは任せて」

 

 そうやって話を終えると、ちょうど優理と千照も話が一段落したようだ。


「じゃあいこ、ヒナちゃん」

「うん。じゃあねタツヤ。高橋さんもまたね」


 ヒナと千照は手を振って、()()()、つまり入り口に戻っていく。千照は頭に???マークが付いているようで、しきりに首をかしげていた。


「じゃあ、これから優理の家に行こうか?」


 振り向くと、優理は頬をぷくっと膨らませている。ぶぅ、という声が聞こえてきそうな様子で。


「さっきの可愛い人、たつやさんの幼馴染みさんなんですね。とっても仲よさそうでしたっ」


 あれ? もしかして、俺とヒナのこと妬いてる? だとするとジワジワと嬉しい気分になる。

 でも、まさかね。


「あ、う、うん……そう見えた?」

「あんな可愛い幼馴染みさんに勝てる気がしないけど、頑張ります」


 頑張ります?

 タイムリープ前だと確かに告白しヒナと付き合うことになるけど、今はいろいろ変化があった。優理の内面も知った。勝てる気がしないって——優理は自分のこと過小評価しすぎじゃないのかな。


「私も、同じ距離になりたいです」


 そう言って、俺に一歩近づく優理。

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