3話 年上の初恋と再会した後
夕桐の姿が消えた後、僕は同じ方向に歩い始めた。
バカだった、僕がやったことは。
しかし後悔はしていない。
あのままじゃ、きっと夕桐はあの男からお手当てをもらえず抱かれてしまう、それこそが最悪の場合だ。
にもかかわらず、ずいぶん夕桐を怒らせちゃった。
歩いて、僕はハチ公前に戻った。
少しベンチで休憩しよう、この後どう夕桐に謝るの考えてみよう。
今は土曜日のランチタイム、周りは賑やかになってきた。僕もこれから適当に食って「夜鳴らし」に向かおう。
また仕事がある、さっきまでの負感情を消すんだ、さもないと仕事の邪魔になってしまう。
僕がベンチで自分の気持ちを調整してる時、誰かが僕の名前を呼んだ。
「あれ?雅人くん?」
僕は急に目を覚めて、その声を持ち主を確認した。
「け、欅……先生?」
「本当に雅人くんだ、久しぶりだね!」
「お久しぶりです……欅先生」
勘弁してくれ。
この時間、この人と出会ったら、今日の負感情が逆に増していくじゃねか?
僕の目の前にいる女性の名前は細川欅、僕より三つ年上。僕が中学生の時、高校生の彼女は僕に英語を教えたことがあった。
さらに、僕の初体験の人だった。
「隣、座っていい?」
「あ、はい、どうぞ」
彼女は僕のすぐそばに座った、体もあたっている、その匂いは昔と同じだ、僕はちょっとホッとしてきた。
「あれ以来……もう5年だね、英動おじさんは元気なの?」
「はい、父さんは元気です、今はまた診療所をやってます」
「よかったね、実はずっと会いに行こうと思って、でも……」
「分かってます、欅先生」
「もう君の先生じゃないわよ」
「じゃ……欅姉」
「ん、これでいいよ、雅人、ここで何してるの?スーツまで着て、まさかデート?」
「えっと、これは……」
どうする?嘘でも作るか?でもダメだ、欅姉は…
彼女は、昔から僕の嘘つきをすぐに見破る。彼女の前に、僕の嘘は通じない。
これをやってみるしかない。
「欅姉はずいぶん変わりましたね、髪もちょっと伸びました」
「あら、気づいたの?どうだろうか、大学に入ったらすぐイメチェンしたんだ」
「綺麗だと思いますよ、モテそうですね」
「ありがとう、好きなの?」
「え?えっと、す……す……」
「まだその言葉、言えないのか?」
「はい、すみません……」
僕は小さいのある時から、「好き」という言葉は、言えなくなった。
「まあ、分かってるから気にするな、って、一体ここで何してるの?」
やはりごまかせできなかった、こうすれば、真実を言うしかない。
「実はこれから……今はホストをやっているんです、『夜鳴らし』で」
「ホスト?でも雅人はまた高校生だろう?三年生のはずでは……」
「休学しました」
「そう、残念だね、きっといい大学に入れるのに」
「責めないですか?」
「なんで責めるの?もう雅人の家庭教師でもないし」
「そう……ですね」
これから、何を言えば? 実に言いたいことと、聞きたいことは山ほど多い、でもなんでだろう? 僕は、彼女から会話を初めて欲しがってる。
「それで、雅人は何を悩んでるの?」
「気づいてくれましたか」
「前も言ったんでしょう?私は、雅人の機嫌は全部見通しだって」
「改めて聞くとちょっと怖いですけど……」
「まさかホストの仕事に不調とか?私が常連客になってやるよ」
「いえいえ、別にその訳じゃ……欅姉、大学は忙しくないですか?」
「忙しいよ、バイトもやってるから、あら、もうすぐ時間だ……ごめんね雅人、もっと話したいけど、そうだ、ホストの仕事は何時から?終わったら探しに行くよ」
「あ、はい、明日の零時までずっとクラブにいます……欅姉は、どんなバイトしてます?」
欅姉は僕の問題を聞いて、立ち上がってハチ公像のそばに歩いた、そしてしょうがない笑顔で僕に答えた。
「この場で会う仕事って、分かる?」
「この場で……まさか、欅姉……」
「パパ活やってるの、私」
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