プロローグ ホストクラブ「夜鳴らし」
ホストクラブ「夜鳴らし」は、この街の一番賑やかな商店街にある。地元の人に場所を聞いたら
「そのキラキラした四層ビルなんだよ」と答えてくる。
この四層ビルは、すべて「夜鳴らし」の所有物。
一階は誰でも入れる。受付で気になるホストを指名して、酒を頼んで楽しい時間を過ごせる。
二階に入れるのは、メンバーシップを持つお客さんだけ。ここは一階よりずっと静かで、聞こえるのは心を定めるジャズと、プライベートブースから伝わる泣き声。
三階にはベッド付きルームがある。「夜鳴らし」は風俗営業もやっている。二階でホストと燃え盛った女客はプラス料金を払えば、そのホストと体を重ねる。
もちろんそのホストは拒否できない。七割の料金がもらえるから、文句を言うホストはほとんどない。
僕の名は英動雅人、今この三階のある部屋にいる。
「もう行っちゃうの、マサちゃん?」
「ごめんね瞳さん、また僕を指名した客さんが入ってしまいましたから」
「マサちゃん、人気ものだからね」
「すべて瞳さんのおかげです」
マサは僕のホトスネーム。そして今会話しているのは、常に指名してくれた富田瞳さん、仕事は英語の先生。
「どうせ辞令だろう、きっと私のようなばばとセックスしても……」
「そんなことはありません、瞳さん」
僕はベッドに戻って、横になっている瞳さんをキスした。
「瞳さんは、優しくて博識で、魅力をあふれる素敵な女性だと思っます。あなとと共に過ごした時間は、きっと一生忘れません」
「フフ、そんなに私のこと好きなら、そろそろ教えてくれないかしら?」
「え、なんのことでしょ?」
「マサちゃんのおーとーし、君は一体いくつなんだ?」
「いや、それは、決まりがありますのでちょっと……もう、許して下さいよ、瞳さん~」
「まあ、神秘性も一興というものか……」
僕は甘い言葉でようやく部屋から出ることができた。
足取りは聞こえる弱いだ、さっきのセックスに精力を注ぎすぎたようだ。
これからの仕事に体力の分配をあらかじめ考えないと。
一階の受付で、先輩のハヤトさんは僕に声をかけた。
「マサくん、三階の仕事終わった?どうだ、あの先生は?」
「大変疲れましたよ」
「だめだろうそれは、また予約があるだろう。」
「はい、しかも外勤です」
外勤とは、三階でやるじゃなく、近くのラブホテルで客人とセックスするんだ。ただし部屋代は客さんが払う上、ホスト本人も料金の八割が手に入れる。僕にとって好都合。
「外勤か、つまり例の変わった要求をつけたやつだね」
「そうです。」
昨日の夜、うちのボスが僕たち在勤ホストに言った。一つ変な外出仕事がある、セックスと語りの他ほか、男を喜ばせる方法も教えていただきたいという。
しかし皆はすでに予約済みの状態、この外勤をやれるのは僕だけだった。
まあ、給料があればいいか、これで一日に六万円稼げる。
「じゃ僕は先にホテルに行ってきますね」
「頑張ってね、マサくん、問題があったらいつも聞いてくれ、あ、花は忘れずに」
「すみません……ありがとうございますハヤトさん、今日もお疲れ様でした」
いい先輩がいってほんとによかった。この仕事始めた時さすがに緊張した、でもハヤトさんは僕にいろいろ教えてくれた。まあ、そもそも僕をこの「夜鳴らし」にスカウトしたのはハヤトさんだけとね。
僕は十分くらい歩いて指名したホテルに着いた。
いまいちなところだ、ボロボロの看板と小さいロビー、位置も大道りからずいぶん離れている。
どうやら今回の客人は金持ちさんではなさそうだ、ならばそんな真剣にしなくても……いえいえ、良い評価くらいはほしいんだ、僕は一応ハヤトさんのエイス肩書を狙ってる。
エレベーターに乗って、僕は503室の外に来た、そしてノックした。
この時点で僕のやる気が盛り上がってきた。この仕事において一番僕を興奮させるのは、知らない客との初面会、どんな人が現れるのがぞくぞくする。
「は……はい!どちら様でしょうか!」
「こんばんわ、夜鳴らしのものです、ウタさんでしょうか?」
「はい!あの……今開けますから!」
声から聞けば、ずいぶん若い人だ、高級ホテルを住む金がないわけだ。
部屋のドアが開けられた。
僕は花束を持って先に挨拶した。
「初めまして、マサと申します!今日はよろしくお願いしま……」
「あれ?英動くん?」
え?だれ?なんで僕の本名を?
「やっぱり英動くんだね、なんでこ……まさか……」
「ひ、久しぶりですね、夕桐さん。」
目の前に現れたのは、四ヶ月前まで僕のクラスメイトの夕桐詩子さんだった。しかも彼女今は、ホテルのバスローブしか着ていない、谷間も見える。
「えっと……」
「と、とりあえず入ってください英動くん!話は後で!」
僕は彼女に部屋の中にひっぱられた。
さて、この状況はどう説明したら納得してくれるだろう。
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