表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/18

1.自傷ストリップ 2.魔境エスケープ

『自傷ストリップ』


 頭の弱い知り合いがいた。仮に少女Aとする。少年Bでもいいけど、C青年でも構わない。とにかく……Hは、かわいそうなやつだった。

 知り合いの事をそういう風に言うのは良くない事だと人は言うかもしれないけれど、実際私はHにはずいぶん困らされたのだし、このくらい言っても仕方が無いのだ。


 Hの人生というのは悲惨で、どのくらい悲惨かというと、本当の話をしているのに、聞いた人のほとんどに「それって本当なの」と言われるくらいには、悲惨だった。

 そしてHは人々から嘘つきだと言われ、そうするとHはますます意固地になり、人前で話す事など普通ならできないような体験まで語り始め、そのせいでまともな人間はHから離れ、Hの周囲に残ったのは、頭の弱い人を娯楽として楽しむような、または、かわいそうな人間を見て密かな優越感に浸るような、薄暗い人間だけになった。


 その友人たちは裸のHに対し「もっと脱げ」と囃した。


・H…Heart(心)


***


『魔境エスケープ』


 あんまりにも悲惨な人生というのは時として人を、狂気へと誘うものだ。そしてその狂気は大抵、その人の望む形で現れる。


 友人がある日突然、私の家に来た。私はその日一日中暇で、友人を家に入れた。

 友人はペットボトルのお茶を二つ、私によこした。私はそのお茶を一つ、友人に渡した。すると友人はお茶も飲まずに話し始めた。


「今朝、天使が現れてこう言ったの。辛いことはもう終わるって。2022年になったら世界は闇に包まれ、原始に戻るの。そうしたら人々は言葉を失い、そして世界は一つの言語を一から共有し始めるの。そして私たちは皆、兄弟になるの」


 私は友人の言葉のほとんどを聞いていなかった。それよりも気になるのは、友人が放つ尿臭だった。私は友人にシャワーを使うよう勧め、そのあと服を貸してやり、昼食を食べさせ、友人の母親に電話をして事情を説明し、引き取ってもらった。


 救いとは、何なのか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ