1.夢と現実の間にあるもの 2.霊能者
『夢と現実の間にあるもの』
知人の紹介で、とあるサロンに呼ばれた時の事。
「おかえりなさい、ファミリア」
初対面にも関わらず私に対し「家族」と呼びかけるその人は、サロンの主催者「宇宙真理」氏であった。サロンのメンバー達が彼の事を「そらのさん」と呼んでいるので、私もそれに倣う事にした。
そらのさんは、人類は皆親戚だと言う。そして、苦しみは試練であり、罪を犯した人を許す時に感じる苦しみもまた試練であるので、皆で試練を乗り越えましょう、と言うのであった。
サロンのメンバーは皆、犯罪者と犯罪被害者であるという。
私たちは過去に犯した罪の告白を聞いたのち、許し合う。「あなたの過ちは私の過ち。あなたの苦しみは私の苦しみ」と。
私の番がやってきたので、私は過去に起こした事件を語った。すると最年少のメンバーがその場で倒れた。
その人は、あの当時赤ん坊だった、私が殺した女性の子であった。
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『霊能者』
祖母「ハルノ」の姉「ナツノ」は、神社の巫女だった。彼女らは父親違いの姉妹で、ちょうど十歳年が離れていた。
どちらも強烈なキャラで、近所では有名人だったけど、特にナツノ婆さんの外見は、一度見たら忘れられないものだった。それは、ガリガリの体に僧侶の夏服(白い着物の上にスケスケの黒い上着)、ブワッと大きく広がった白髪のおかっぱ頭というもので、ついたあだ名は「魔女」。隣の服屋の娘がつけた。
ナツノ婆さんの神社に祀ってあったのは不動明王と龍だった。
肝心の占いの方は、当たると評判ではあったが、晩年はすっかりその霊能力も衰えたらしく、最期はひっそりと亡くなり、今では神社も家も跡形も無くなっている。
最盛期は「神さん」と呼ばれていたナツノ婆さんであったけれど、生老病死という人の定めからは逃れられなかったという事なのだろう。
思うに霊能者というのは、ただの人なり。私は、そんな風に思う。