1.物書き失踪事件 2.物書きの葬式
『物書き失踪事件』
物書きというのは時として、何の前触れもなく消える、という事があるものだ。そしてそういう時、他の物書きは「なぜ」と嘆くのである。もしかして自分が書いた感想のせいかも、などと余分な心配をする者まで現れ、そんな事は無いよと別の物書きが慰めるところまでが、お決まりのパターンなのである。
しかしある日の失踪事件の時は、不思議なほど誰も騒ぐ者がいなかった。彼……仮にGとするが……Gが消えた事に気が付く人間が一人もいない……はずは無いのだが、つい昨日まで仲良くラーメンの好みなどをコメントし合っていた者たちですら、Gなど初めからいなかったかのような様子である事が、私には不気味に思えた。
今朝の事だ。Gらしき人物の、コメントが残されているのを見た。それは、とある寂しいアカウントの片隅で。
「疲れました」……それが、Gの最後の言葉であった。そんなGを慰めていたのは、「恐怖」という名の人であった。
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『物書きの葬式』
これは、本当にあったお話なのである。しかし、当時それを見た人間にしか信じられない内容でもあると思う。
ある日、親しくしていた物書きが死んだ。といっても、小説投稿サイトを規約違反で追い出されたに過ぎないので、じっさい彼はブツブツボヤキはしたが2019年2月15日に死んだ時も今も変わらず、ピンピンしているのだ。たぶん。
彼が死んだ日の夜、私は葬式をあげた。どういう事かというと、彼の死を悼むエッセイを書き、投稿した。そしてその感想欄には、記録によれば17名の参拝者が訪れた。私はその全てにおくやみを申し上げた。つまり、感想に返信をしたのだった。
先日消えた、Gの事。三日たっても、誰一人騒ぐ者もいないようで、Gは本当に存在したのかすらあやふやになってきた。しかし、紛れもなくGはそこにいて、会話していたのだ。なぜならその痕跡があるのだから……
少し、感傷的になっているのかもしれない。