1.用心棒はいかがでしょうか 2.あのときのあやまち
『用心棒はいかがでしょうか』
窓の物干しにかけてある洗濯物を取り込もうとしたら、そこに干してあるはずの、黒いレースのブラジャーと黒いレースのTバックがありません。私は「あれ?」と思い、引き出しを開けて、床を見て、汚れ物入れを見て、それから叫びました。「下着泥棒!」と。
すると窓から「唐草模様」のほっかむりをしたおじさんが現れて
「私は用心棒。泥棒じゃありませんよ。犬によろしく」
と言いました。
私は驚き怪しんで「え、はい」と答えるのがやっとでした。するとあやしいおじさんは土足で家に上がり冷蔵庫からエメラルドマウンテンを取り出してプシュッと開け、ぐびぐび飲み始めたのです。
「ああ、ひび割れた大地に染みわたる恵みの雨」
あやしいおじさんのブンガク的表現が余計にこの状況を訳の分からないものにしている気がして私は、ハハハと笑うのでした。
もっと素敵な人に守ってほしいと思いながらも、怖くて何も言い返せないのでした。
***
『あのときのあやまち』
諸事情による、二年におよぶ長い休校措置が終わり、私たちはようやく学校に行くことができたのです。あのころは一年生でしたが、もう三年生の夏が終わろうとしていたのです。
「ねえ、友達になりましょう!」
お昼休み、学校の敷地内にあるベンチで昼食を摂っていた時です。同じくらいの歳の女性が声をかけてきました。名前は「ベル」ちゃんといいます。ベルちゃんはディ○ニープリンセスの衣装を着ていて、とてもかわいいので、私はすっかり彼女が大好きになってその夜、意気投合した学生六名とともに、ベルちゃんの家に行くことになったのです。
そして夜は更け、家に帰ろうか、泊まろうか、と楽しさが飽和してきたその時でした。
「何だか楽しそうだな」
パンチパーマに、腕にびっしりと菩薩のタトゥーが入った男がズカズカやってきて、ベルちゃんの肩を抱きました。
「仲良くしようぜ」
酔った私は「はーい」と返事をしました。