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1.銀河鉄道の窓から 2.獣の群れ

『銀河鉄道の窓から』


 さよなら、さよなら、さよならふるさと。


 黒い海に(またた)く飛行魚の目が私たちを乗せた銀河鉄道を避けて、群れは二つに裂けてゆくのです。先頭車両の窓を見ようと、子供たちが押し合いへし合いしています。

「静かにしなさい」

 母が胸のスピーカーからモスキート音の警告を発します。

 子供たちは、静かになりました。


 火星に到着する頃には、小さかった子供たちも大きくなって、良い働き手になる事でしょう。その日まで母は、その一メートル程の背丈の鉄の体ひとつで、子供たちの母となり、教師となり、医師となり、父、きょうだい、祖父母、神となって、子供たちを守るのです。


 大地の子らはそうして、風に吹かれ散らされて飛ぶわたぼうしのように、名前も無く旅立ってゆくのです。


***


『獣の群れ』


 あるところに、見晴らしの良い丘があったのです。そして、その草原には名もなき花々が咲いていました。また岩かげや穴ぐらには小さな動物たちが暮らしていました。


 満月の夜でした。黄泉の王の第三婦人が雲に乗って現れると、丘に咲いていた花々は枯れ果ててしまい、生き物はみな飢えて、多くは死に絶え、力あるものは丘を去ったのです。そして黄泉の王の第三婦人……月光妃(げっこうひ)は太陽を退け、獣たちに命じて、薄闇の館を建設させたのでした。


 獣たちの放つ言葉は荒々しく、その排泄物は非常に多いために、あっという間に丘の大地も、空気も汚されました。


 遠くから、暗雲立ち込める丘の、薄闇の館を見つめる者がいます。それは、太古の時代より丘の大地「アルカディア」を見守っていた、古老なのでした。彼はこう言いました。

「永遠というものは存在しない。黄泉の王も然り」と。

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