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七十三輪目

 とはいえ、二人は有名人であるため行くとなっても簡単ではない。

 なんてのが本来あるべき理由だろう。


 だが不思議なことに、男である俺のせいによって余計な面倒ごとが起きるのだ。


 その余計な面倒ごとが具体的にどういったことなのかは分からないが、これまで夏月さんが一人で出歩かないで欲しいと頼んでくるのだからきっと色々あるのだろう。


 それ以前に先ほどの通り、ライブに向けての準備があるため二人にそんな余裕は無い。

 ライブが行われるのは九月なのでそれが終わってから行けなくもないが、まだ暑さは残るだろうけど夏として出かけるには遅すぎる。


 来年……まではきっと忙しいだろうから、再来年くらいにはノンビリとお出かけができるのではないだろうか。


 それだけ先ならば、引き篭もりの俺も流石にどこかへ行こうと自発的に言い始めるはず。


「ねえ、優君」

「ん?」

「海に行きたいの?」

「いや、別に海じゃなきゃいけないって事でもないけど……ただ、どこかに出かけて気分転換というか、まあ、そんなのが出来たらいいなぐらいに思っていただけたらというか」


 俺自身もライブを楽しみにしているってのもあるが、我儘を言って大勢の人に迷惑をかけるわけにはいかない。


 こうして一緒に過ごしていけているだけで十分幸せなのだと、今一度自身を戒めなければ。

 最近は当たり前のように感じて浮かれ過ぎている。


「どうする?」

「たぶん、大丈夫だと思うかな」

「でも、きっと何かあるよね」

「あまり無茶なことは言ってこない……んじゃないかなぁ」

「本当に思ってる?」

「全然」

「だよね」


 何やら二人で話し合っているようなので席を立ち、空になったコップを回収しておかわりの用意をする。


 少し聞こえてきた会話から察するに、何かをするのは半ば決まっているようだが、それをするために何やら関門があるみたいな。


 役に立てることがあるならば何でもするつもりでいるが、果たして俺程度でどれほど役に立てるか。


「優ちゃん」

「ん?」

「もしかしたら変なお願いされるかもしれないけれど、嫌だったら断ってくれて大丈夫だからね」

「え、うん。……うん?」


 戻ってきた時、秋凛さんからそのようなことを言われて反射的に頷いてしまったが、一体何のことだろうか疑問が。

 夏月さんが誰かに電話していることと何か関係でもあるのかな。


「もうすぐ仕事終わるからこっち寄るって」

「他にも何か言ってた?」

「別に構わないけど、一つお願いを聞いて欲しいってさ」


 二人とも説明をしてくれないのでいまだに置いてけぼりなのだが、仕事終わりにここへ来る人が俺に何やらお願いをするってのはなんとなく分かった。


 なんで俺にとか、役に立てるのかとか、色々と疑問はあるけど……まあいっか。

 嫌なら断ってもいい感じらしいので気楽に構えていよう。






 そんなこんなでやってきたのは樋之口さんだった。

 飲み物に口をつけて一息ついた後、早速とばかりにお願いとやらを口にする。


「私の婚約者になってくれない?」

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