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四十七輪目

「そう、ですね……半々くらいには?」

「そっか。そうだよね、やっぱり……」


 何か答えを間違えたのだろう、秋凛さんの様子が変わったような。

 これまでも何度かあった認識の違いが今、起きている気がする。


 価値観が変わったこの世界の常識など、未だ分からない部分が多いけども。

 夏月さんと同棲を始めて二ヶ月過ぎ、女性のそういった機微に対して多少なり慣れた気がする。


 あくまで気がするのは、当たる確率が半分にも満たないからだ。

 大半が勘違いで終わるのだが、今回は当たりだったらしく。


「へっ……きゃっ!?」


 秋凛さんがどこか行こうとする素振りを見せる頃には先に俺が動き出しており、手を掴んで自身の元へと引き寄せる。


 万が一にも怪我をさせないよう自身の身で受け止めたが、色々と柔らかいものが密着してそちらに意識を持ってかれてしまう。


「ゆ、優ちゃん……?」


 胸の内に収まっている秋凛さんが見上げるような仕草で見てくる。

 その顔は真っ赤で、何かを期待しているような雰囲気を感じた。


「その、さっきの残念に思うって……どういった残念だったんですか?」

「え?」

「勘違いというか、何も考えないまま答えたような気がして」

「…………いいんだよ、別に。自分の事はよく分かってるつもりだから」


 けど俺の問いかけを聞き、また悲しそうな表情へと戻ってしまう。

 そのまま離れようとするが、そうはさせまいと腕に力を込めて阻止する。


「は、放してっ!」


 ここで放したら終わりだと、身体に活を入れてしがみ付くように引っ付く。

 秋凛さんの方が力が強く、少しでも気を抜けばあっという間に何処かへ行ってしまうだろう。


 ……あれ、これ俺が怪我しないよう少し手加減されてるような?


「なんで……なんで今更私に構うの!」

「今の秋凛さん、放っとけないですもん」

「いいよ、私なんか放っとけば。気にかける価値も無いんだから」

「私なんか、なんて言わないで下さい」


 いまの秋凛さんはまるで駄々っ子のようで、何を言っても聞いてもらえない。

 これまでずっと内に秘め、我慢してきたものが溢れて止まらないように感じる。

 過去に俺も経験がある為、これは勘違いじゃないはずだ。


「優ちゃんだって私のこと残念に思ってるって言ったし、みんなだってそう思ってる! 私自身が一番足を引っ張ってるって分かるよ……でもどれだけ頑張ったって変わらないの!」


 ──あ。


 何かのスイッチが入って切り替わったように、秋凛さんの事を面倒だと思い始めてしまった。

 なんで俺、こんな事をしてるんだろうと考え始めた途端に何もかもが面倒に思えてくる。


 こうなった時はいつもなら距離を置くのだが、現状その選択肢は選べない。


「それってさ、これまでみんなの為に私、頑張ってきた。って言ってる?」

「え、……あ、ゆ、優ちゃん?」

「どうなの?」


 俺の様子が変わったことに気付いて困惑してるのは分かるが、いま自分にそれほど余裕はない。

 一度、落ち着かなきゃいけないのは分かっているのに、自身の感情を上手くコントロールできないでいる。


「そ、そう……です」

「そっか」


 よした方がいいのに、ということが分かっていながら。

 自分の意思とは裏腹に、口は動き出していた。




「ならさ、もうみんなの為に頑張るの止めたら?」

本来なら黙って距離を置いていた所ですが、いま主人公は体調が悪いので暴走してる感じです。

ある程度の許容量があって、それを超えた途端に何もかも面倒になるやつ。

推しのボーナスとして他の人よりも倍ほどあったが、耐えきれなかった模様。

元々の予定だと、こうならないまま(無意識に)口説き落としていた。


余談1

流石に衣装の写真を送ったのはマズく、夏月は正座で怒られた。


余談2

体調を崩したと聞いた春はメールを送ろうか迷ってリハに集中できず、怒られていた。

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