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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

チーム『悪役令嬢』、戦場のヒロインに吶喊す OP風

作者: らる鳥

OP風っていうか、オープニングですね

これ

まぁでも一応短編であります


 戦乱続くバリエスト大陸の軍事国家、ヒュートロンでは、全ての貴族子女は十五歳になると士官候補生として軍学院に入学し、火器の取り扱いや戦術、戦略と、そのついでに統治、経営学等を学ぶ。

 貴族子女であるにも拘らず統治の知識等がついで扱いなのは、個々の領地によって統治の仕方は異なるのだから、個別に自領で学んだ方が効率が良いからだ。

 官僚になるなら基礎を学んだ上で、また別のコースが用意されている。


 三年間の学びの後、軍学院を卒業した貴族子女のおよそ半数程は軍の士官として戦地に赴任するが、その多くは次男三男、次女三女といった継ぐ家を持たない者達だ。

 あまりに貧乏な為に嫡男であっても軍に所属しなければ家族を養えない者もいるけれど、それはあくまで例外だ。

 やがて領地を、国を動かす貴族の後継ぎ達は、軍学院で苦楽を共にした仲間が戦場で無駄死にせぬよう、国力を高める事に腐心する。

 そうしてヒュートロンは国力を高め、戦乱続くバリエスト大陸で生き残ってきた。


 しかし、今、そのヒュートロンの軍学院に、嵐が吹き荒れようとしている。

「私の名前はアリー。軍での階級は曹長だ。貴方達のように家名を持つ身ではないが、国の為に精一杯学ぶ心算だ。宜しく頼む」

 そんな風に言い放ったのは、歴戦の風格を漂わせる、けれども弱冠十三歳の少女。

 ヒュートロンでは誰もが知る戦場の英雄ヒロイン、アリー曹長だった。


 アリーは彼女の言う通り、家名を持たぬ身、つまりは平民だ。

 辺境の村に生まれ、麦粒を数えたり、羊を追って成長した。

 そう、アリーが八歳の、秋までは。


 だがアリーとその家族、村人たちにとっては不幸な事に、……あぁ、こんな言い方はしたくはないが、ヒュートロンにとっては幸運な事に、布告なしに攻め込んできた敵国の中隊が、その村を占拠してしまう。

 でもそれはその中隊にとって、そして攻め込んできた敵国にとっても、大きな不幸の始まりだった。

 実際にその村で何が行われたのかは記録に残っていないが、アリーは敵兵士から一本のナイフを奪い、そのまま敵中隊を殲滅せしめたのである。

 当時八歳の少女が、たった一人で。


 その後、村に駆け付けた軍が彼女を保護した際に、アリーは軍への入隊を志願した。

 普通に考えれば、八歳の少女の志願なんて受け入れられる筈はない。

 けれども夥しい数の敵兵の躯と、何よりもアリーの目を見た指揮官は、たとえそれが如何に頼りなくとも、彼女には首輪が必要だと言って、軍への入隊を認めたそうだ。

 軍の指揮官が、自国の軍を差して、アリーには頼りない首輪でしかないと称したのである。


 でもその指揮官の目が正しかった事は、直後の敵国との戦いですぐさま証明されたという。

 彼女は戦いながら武器の扱いを覚え、戦術を理解していく。

 やがて敵国の首都が陥落する頃には、アリーは敵からは小さな悪魔と、味方からは戦場のヒロインと呼ばれるようになっていた。

 その後もおよそ人間とは思えぬ武勲を、短期間で次々に挙げた彼女を、ヒュートロンは特別待遇で軍学院に編入させ、士官として育成する事を決定したのだ。


 けれども未だ本物の戦場を知らぬ軍学院の学生にとって、……特にアリーと同じ学年になる、入学したばかりの一年生にとっては、彼女はあまりにも劇物だった。



 ヒュートロンの第三王子のパリステラ、クロムウッド侯爵家の嫡男であるロヴィーノ、この国の宰相であるダーレントリ伯爵家の次男であるホーデッドや、西の要であるヴィディス辺境伯家の嫡男、マーキスといった王族、有力貴族の家に生まれた男子生徒達が、興味本位でアリーに近付き、そして散々に打ちのめされる。

 戦場では身分は命を守る盾にはならないと、彼らはその時初めて知った。

 恐怖に脅え、竦み、尊厳を撒き散らしそうになった時、流石に壊してしまっては拙いと思ったのか、優しく手を差し伸べたアリーに、彼らの心は吸い寄せられてしまう。

 恐らくはそれも、アリーの教導の一環だったのだろうけれども。


 彼らがアリーに抱いた感情は、きっと恋なんて甘い物じゃない。

 確かに彼らはアリーの前に立つと鼓動が早まり、痛い程になったが、隣に立ちたいって気持ちは少しも湧かず、寧ろその背にどこまでも付いて行きたいと思ってしまうから。

 ただ彼らがアリーに夢中になってしまったのは疑いようのない事実で、その事に黙っていられない者達が居た。

 そう、アリーに夢中になってしまった男子生徒の、その婚約者達である。


 パリステラの婚約者である、サヴィネット公爵家令嬢、アリステラを始めとする彼女達は、この事態をそのまま放置できぬと考えた。

 正直に言えば、第三王子だけならまだいいのだ。

 王家にはまだ予備の王子が何名かいるし、パリステラが戦場の空気に憑りつかれてしまったとしても、代わりは存在する。

 戦場のヒロインと、王子の距離が近付く事は美談だし、最終的に王子の死という悲劇が訪れたとしても、国民の戦意高揚には繋がる筈。


 しかし有力貴族の男子生徒達がこぞってアリーに傾倒すれば、中級、下級の貴族生徒もそれに続かざるを得なくなってしまう。

 軍学院の存在意義は、確かに士官を養成、つまり軍人を育て上げる事だけれども、全員がこぞって軍人になっても、それはそれで国が成り立たなくなってしまうのだ。


 アリーというヒロインは、周囲を戦場に導く強過ぎるカリスマの持ち主だった。

 だからこそ誰かが、そのカリスマに、彼女が打ち立ててきた偉業に、伝説に、傷を付けて押し留めなければならない。

 そうする事こそが、ヒュートロンの有力貴族の令嬢たる自分達の役割だと、アリステラを始めとする彼女達は立ち上がる。

 古の書物に登場する、ヒロインに抗する者、『悪役令嬢』を名乗って。


 狂乱のレレレアタッカー令嬢、アリステラ・サヴィネット。

 凸スナ令嬢、ミイユ・フォレストベイダー(東の辺境伯爵家令嬢)。

 最前線のディフェンダー、シュレイ・ヴォルムス(騎士団長の一人娘)。

 唯一のブレーキ、キリシェラ・フォンテス(侯爵家令嬢)。


 これは、後にヒュートロン最強部隊といわれたチーム『悪役令嬢』と戦場のヒロインの、戦いと友情の物語。



悪役令嬢って単語を使いたかっただけです

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― 新着の感想 ―
[一言] 特攻野郎Aチームのオープニングにあわせて、各令嬢の紹介が始まる流れですね、これはw
[良い点] キャラが濃い。濃すぎるくらいに濃い [一言] 間違えて違う作者様の作品を開いてしまったかと思いましたよ!? 凄まじいインパクトを感じたし、とても面白そうなんですが執筆の時にテンション維持す…
[良い点] なんか、なんか凄い。というか、普通にらる鳥さんの書く「悪役令嬢」は読んでみたい笑
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