友達
彼女の言葉に胸打たれ、僕は返す言葉が見つからなかった。
例えていうなら心の奥に一本の矢が刺さったような気分で、高揚していた。それほど彼女の言ってくれた言葉が嬉しかった。
「......」
でも不器用な僕は嬉しさを表に出さず、下を向いて俯いていた。
恥ずかしさのあまり、彼女の方に目を向けれなかった。
「大丈夫?」
彼女は僕の顔を覗き込むように、下から見上げて言った。
彼女との距離が近かったので僕は一歩引き、
慌てて、顔を両手で覆った。
「泣いてるの?」
「泣いてないよ」
僕は必死に照れてる顔を隠した。
「もしかして嬉しいの?」
またうふふと彼女は笑った。
「べっ、 別に......」
確信をついてくる彼女に僕は上手く言い返せなかった。言葉の煽りでどんどん頬が赤くなっていった。
「本当に......?」
「本当だよ!!」
すると彼女は真剣な表情で思いを伝えた。
「でもさ、 この気持ちに嘘はないから......」
「まだ私、 優人くんの事諦めてないから!!!」
彼女の言葉に再び胸打たれ、彼女の方を見つめた。
今までにこんなにも僕を好きになってくれる人はいなかった......。
僕は今までに今回を含めて3度目だった。
中学と以前の高校の時告白された。
その時の記憶は鮮明に覚えてないが、告白されて一言ごめんさいと断った記憶はある。
僕は、決して付き合うのが嫌だった訳ではなかったし、その子の事が嫌いというのでもなかった。
恋愛に疎い為ただ、反応に困ってしまい、咄嗟にでた言葉がそれだった。
その後、その告白してきた女の子たちは月日が経つと、他の男の子と付き合っていた。過去の経験からそういうもんだと僕の中で思っていた。
でも彼女は違った......。
諦めずに真っ向から挑んできた。
「あれ? 今度こそ泣かせちゃった?」
不安そうな表情をする彼女に対して僕はさらっと答えた。
「大丈夫だよ!」
僕は嬉しさのあまり笑顔で答えていた。
「それならよかった!」
「じゃあさ、 改めて返事きかせて」
彼女は両手を合わせお願いするかとようにつぶらな瞳で僕を見てくる?
「えっと......」
こんな時でも言葉はでなかった。
僕はこんな優柔不断な自分を恨んだ。
それを察したのか彼女は提案をした。
「友達からってのはどうかな?」
「それなら、 いいよ」
小さい声でぼそっと言った。
ほんと! と言って彼女は喜んでいた。
「約束だからね!!」
うふふと彼女は小さくガッツポーズした。
何度見てもその笑顔が可愛かった。その表情が彼女らしいと思った。
うん! と頷いた。
「じゃあまた明日ね! 優人くん!」
彼女はそう言って僕の方に手を振って笑顔で駆け足で帰った。
夕日のせいか余計に彼女の笑顔が眩しくみえ、
それを見て僕も手を振り返した。