溢れる思い
彼女は僕を引っ張りあげた。
「よいしょっっ!」
「ありがとう。 助かったよ」
感謝しきれない思いだった。
なんで彼女はここまでしてくれるのか不思議に思った。
僕は彼女に助けてもらわなければ、今頃岳に殴られ気絶していただろう。思うだけで鳥肌がたった。
正に彼女は救世主と言うと大袈裟かもしれないがそれぐらい僕にとって恩人であり、喧嘩を止めた彼女の姿に感服した。
「顔ぼろぼろだね」
うふふ、と彼女は苦笑いした。
「ちょっと待って!」
そう言って彼女はしゃがんで鞄のファスナーをあけて、絆創膏を取り出し、すっと立った。
彼女の手が僕に近づいてくる。
「そこまでしなくていいよ。 大した傷じゃないし!」
すると彼女は「いいから!」と遠慮する僕に対して主張し、距離を縮めた。
距離が近づくほど彼女は、素敵だった。
髪がとてもしなやかで、ラズベリーの香りが微かにした。顔は整っており、まるでハムスターのような瞳をしていて、とても可愛かった。
ドクン...... ドクン......
僕の心臓が波を打った。
僅か30センチくらいだろうか? 彼女と僕の距離はそれくらいで、思わずキスするくらい近かった。
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン
更に鼓動が激しくなる。
緊張が顔に走った。
どんな表情をしてるのか、自分では分からないが多分頬を赤く染めていたとおもう。
ぴたっ
冷たい音がした。
絆創膏が僕の頬に貼られていた。
痛みのせいかとてもひんやりして気持ちよく、
気づいたら僕は正気に戻っていた。
「はい! これで大丈夫!」
彼女はそう言って僕の頬から手を離し、距離をとって、後ろに手を組んで微笑んだ。
僕は彼女にずっと疑問に思ってたことを彼女に投げた。
「なんで助けてくれたの?」
「助けない方がよかった?」
うふふと彼女は、意地悪そうに笑っていった。
「それはひどいな!」
釣られて僕も微笑んだ。
「......」
少し彼女は黙って俯いた。
少し間が空いて、彼女の笑顔が消え、真剣な表情に変わっていた。
少しためらって思いを綴った。
「今でも優人くんが好きだから......」