ノートを知るもの
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校舎の鍵は空いていた。野球部とかがまだ残っているかもしれない。スマホを明かりにして電気の消えた暗い廊下を探るように進む。幽霊が出ませんように…。手すりを握りしめて階段を登り二階まで上がる。月明かりに助けられながら廊下を進み、教室の前まで来る。奇跡的に教室の鍵も空いていた。
ガラガラガラ…扉を開ける音が静かな学校を駆け抜ける。俺は自分の机に歩み寄り、スマホの光で中を覗く。真っ黒のノートがやはりあった。一安心だ。おもわずヘラヘラしてしまう。
「あー、あったあった『紫煙の書』ww、もう帰ったらソッコーでシュレッダーだな」
独り言が教室に響き渡る。そしてノートとスマホをバッグにしまって廊下に出た。やれやれだぜ。
「待て、お前!!!」
後ろからの突然の声に仰天。俺はすかさず振り向く。しかし暗くて顔はよく見えない。でも女だ。聞いたことのあるような声だがこんな蓮っ葉な知り合いはいただろうか?
「そのノートは私のものよ」
高圧的な声が告げるように言う。ノートってまさか、しかし墓穴を掘るわけにはいかない。
「なんのことかな?」
俺がとぼけると
「あなたが今回収したノートよ、あえて学校に隠すなんて考えたわね。」
こいつもしかして!?
「悪いけどこれは危険でこの世にあっていいものではないんだ。」
「ええ、危険だからこそ読む価値があるのよ。」
こいつ全てを知っている!!俺の黒歴史ノートを!一体何者なんだ?しかも黒歴史だとわかっていて読みたがっている。相当悪質なやつだ。絶対言いふらすやつだ。
「そこまでわかっているならなおさら渡すわけにはいかないね。」
「しばらく貸してくれるだけでもいいのよ。」
「貸したら意味がないんだ!」
「やはりあなたもあれの本質に気づいているのね。」
「本質ってほどじゃないだろ、これはやはり消されるべきものなんだ!」
「そうはさせないわ、それにあなた、普段はあっあっって言ってるのに今はやけに流暢じゃない?カオナシ君って呼ばれてたわよ。あれはやっぱり演技だったのね。」
とんでもないことを聞いてしまった気がする。それに流暢なのは顔見ていないからで演技じゃない。
「とにかく俺はノートを渡さないしもう帰るからな!」
「そう、なら力ずくで奪うわ」
彼女は日本刀のようなものを持っていた。