忘れ物を忘れる理由
昼休みが始まると昼飯を食おうという誘いを断り、ノート回収作戦を脳内で企画する。
まぁ、バックにサッと入れればそれだけなんだけども。どうする?バックを机にゴソゴソやればいけんじゃね?いや後ろの寝てるやつが起きたら面倒だ。そうだ、ノートを教科書でサンドイッチじょうにはさめばいけるに違いない、天才だよ俺は。いつやるか?今ではない。今しまうのは早計だ。教室に人が減る昼休み後半が良い。でも教科書でノートをはさめば今しまってもいいんじゃないか?なんで早くそれに気づかなかったんだろう?そんなことを考えながら小うるさい教室で弁当を机の上に置く。食いながら考えよう。
なんとなく前を見る。教室の扉の開く音がする。ガラガラ…。なんでもない音が教室中が鳴り響いたすぐ後に、シーンと氷の静寂に部屋が包まれる。担任の三島が入ってきたのだ。
「えー転校生を紹介します。」彼が入ってくるなり気だるそうに、独り言のように告げる。ざわつく教室。高校生で転校?普通朝に来るだろ。えっ、めっちゃかわいくない?
担任に遅れて数秒後、転校生が入ってくる。
長いストレートの黒髪。白い肌。上品な顔立ち。清楚過ぎて逆に実はめっちゃヤンチャしてたんじゃないかと思わせるくらい大和撫子といった女性であった。
「有馬雪です。よろしくお願いします。」彼女は微笑みながら挨拶し担任に指定された席に着く。指定されたのは俺の隣の空席であった。
「有馬です。一緒に昼ごはん食べない?」
「あっあっあっあっ亀梨です。た、たべてもいいけど…」
もう瞬間でノートなんて忘れるよね。