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脱出

ーーガンッ!!


窓ガラスに叩き付けた椅子が、勢いそのままに跳ね返って来る。

「ふざけんなよ! 俺が椅子を叩き付けたのはガラスだぞ! コンクリートの壁じゃねんだ!!」

松田が跳ね返って来た椅子を避けながら言う。


今、岸田達は2階のどこかの部屋に居た。

シモキンから逃れ、夢中で入ったが、多分此処は1年の教室だろう。

ベランダへ出れば、階段で下に降りて、学校から抜け出せる。窓やベランダに出る扉の、レバー式の鍵は、すべて固く固着しビクともしない。それで、今度はガラスを割ろうと試みるが、この有り様であったーー。


「……ねぇ」

田辺が腫れ物でも触るように、小声で言う。

別に松田に対して何かあっての事ではないだろう。単に田辺の気弱な性分上、気が立っている人間に対して下手に出てしまうんだろう。そして、その言葉も別に松田だけに向けられた言葉では無いようだった。

「ん? なんだよっ!!」

松田は苛立ったように言う。

「……。」

田辺はその態度に萎縮してしまう。俯くように目を反らす。

「なんなんだって、その態度は! そんなだから、岡田や純恋はーーッ」

「おい! いい加減にしろ松田。カニ子を救ったのはこいつだ。みんなが逃げれたのも田辺が勇気を出したからだろう。此処で揉めてる場合じゃないだろ?」

岸田が松田を宥める。

「……。」

松田は納得いかないという態度で、不貞腐れたようにそっぽを向く。


「……ねえ」

と、もう一度、田辺は言う。


「気にすんな、田辺。お前だけが悪いわけじゃ無い」

「うううん。そうじゃなくて、これーー」

田辺は何かを差し出す。

「ん?ーーお前それ!?」

見るとそれは、鍵の束だった。

シモキンが田辺に純恋のマスクを施錠させる時、渡した物だった。

田辺はそれをそのまま、持って逃げて来ていた。

「この中の鍵でどこかのドア開かないかな?」

「校内回って、その鍵全部試すのかよ!! シモキンが居るし、少年Xも居るんだぞ!!」

「松田止めろよ! 田辺を怒っても仕方ねえだろ。ーー田辺その鍵見せてくれ」

「うん」


岸田は鍵を受け取り見る。鍵は少なくとも数十本有る。ほとんどが古い鍵で、錆びて赤茶けた色をし、♪みたいなおとぎ話に出て来るような鍵の形をしている。近代的な形の見慣れた鍵も幾らか混ざっているから、こちらの鍵だけを試せば良いだろが、それでもぱっと見10本以上は有るだろう。鍵の掛かっている場所を見つけて1本ずつ試す、運が良けれ1本目で開く場合もある。でも、必ずこの中の1本が当たりとは限らない。シモキンの罠でどこの鍵も開かない可能性もある。目的は俺達にぬか喜びさせて絶望させる事、これはイジメゲームなのだ。相手の嫌がる事をするのが目的なだけの。

いや、もっと具体的な罠な可能性もある。俺達を探し廻らなくとも、鍵の掛かっている場所で待っていれば良いのだ。ーーどう動けば良い。この鍵が使えるなら、逃げる大きなチャンスだが。ーー判断出来ない。


ーーん!?


岸田は1つの鍵に、目が止まる。

「これ、屋上の鍵だ」

岸田は言った。

鍵の根元に赤い小さなリボンが結んである。これは屋上の鍵だ。

「どうして、そんなの分かるんだよ? 屋上は生徒は立ち入り禁止で、鍵は職員室で管理していたろう?」

「1回、野球してて岡田が特大のホームランを打って、ボールが屋上に乗った時があった。岡田と職員室に行って、野澤先生に言って、ボールを屋上から取って来て貰ったんだ。その時に、職員室の鍵保管庫からこの鍵を出すのを見た」

と、自分で言ったが、他でも見た気がすると岸田は内心思っていた。が、今はそんな事に引っ掛かっている暇は無い。

岸田は続ける。

「俺に考えがある。皆んな付いて来てくれるか?」

「どうすんだよ?」

松田が訊く。

「屋上を目指す」

「屋上?」

「確か、屋上の入り口の踊り場の壁に、火災時に脱出用の火災救助袋が設置して在る筈だ。アレを使う」

「火災救助袋?」

「避難訓練に時に使ったろう? 布のトンネルみたいなヤツで、中が螺旋になってて、滑り台みたいに屋上から下りれる」

「ああ、そんなのあったな!なるほどな。でも、田辺みたいなデブが乗ったら袋が切れそうだな。田辺はおとりにでもなれよ。2人も殺したんだからな」

松田は嫌味たっぷりに言った。

田辺は何も言い返さなかった。

「いい加減にしろって、松田っ!!」


そう、岸田が言った時ーー。


ーーシュルシュルシュルシュル


スパッ


カンッ!


皆、カンッ!!と音の止まった方を見る。

そこには、大きな包丁。ーー牛刀? 少年X?

少年Xは、1階にいる筈だがーー!?


きゃぁぁぁぁぁぁぁあああああああああーーーーーーーーッ!!!!!


梨花の叫び声で、皆んな梨花の方を振り向く。

梨花は指を指していた。

指の指し示す方向には、田辺がーー?

田辺の様子がおかしい。

「田辺どうした?」

岸田が訊く。

「……。」

田辺がふらふらっとよろけた瞬間、田辺の頭が落ちた。

……ゴロン。

床に転がる田辺の頭。

続けてドサッと、体が崩れ落ちる。


ピッ、シューーーーーーーーーッ!

田辺の首から大量の血が飛び出す。


皆それを見て我に返り、今度は入り口の2つの扉を見る。

左の扉の前に、いつの間にか少年Xが。

肩がつかえ体まで入れないのか、頭(少年の部分)だけを突っ込んで居る。

少年の手に握られていた牛刀がない。ーー牛刀を投げたのは確かにコイツのようだ。


「どうして、コイツが2階に居るんだよ!」

松田が叫ぶ。

岸田は自分達の見逃しに気付く

「ーー吹き抜けだ!」

「えっ!?」

「1階と2階の吹き抜けをコイツは登って来たんだ!とにかく、今は逃げろっ!!」

岸田が叫ぶ。

「何処に!? 」

カニ子があたふたと訊く。

「右だっ!」

「でもーー」

左は少年X。

でも右もーー。1年の教室は東の角部屋だ。廊下に出て逃げるには、ベランダに出るか、少年Xの後ろを捕まらずに通り抜けるしか無い。ベランダには教室からも出られるが、先に実験した通り、ガラスは割れず鍵も開かない。少年Xの後ろを通り抜けるしか選択肢は無い。

「ーー俺がおとりになる!」

と言った岸田の肩に手を置き

「いや、待て! 俺にやらせてくれ……」

松田が言った。


「松田っ! 」

「田辺にあんな偉そうな事を言ったんだ。俺がおとりになる。恐怖から、田辺に当たっちまった。田辺が悪く無い事は分かってたのに、当たり易いから当たったんだ。此処で、お前にやらせて逃げたら俺こそ人殺しだ」

「自分を責めるなよ。生きてたら、田辺も許してくれるさ」

「……もう、田辺は死んじまった」

「……。」

「とにかく俺に任せてくれ! お前らはとにかく逃げる事を考えてくれ!!」

「分かったよ。お前に任すぜ。松田」

「おう! 田辺の敵討ちだ」


「おい!化け物!! こっちだ来いっ!!」

椅子を投げつけると松田は叫ぶ。

それを合図に、岸田達3人は右の扉に走る。

松田はその間も、絶え間なく椅子や机を投げた。

岸田達は上手く、廊下に出た。

扉の入り口で、必死に中に入ろうと少年Xはしている。

自分達には、気付いてい無い。

岸田は

「俺から行く! 少年Xを越えてすぐ右にある扉に入るから、続いてくれ。いいな!」

うん。とカニ子と梨花が頷く。

岸田が走り出し、少年Xの前を通り、扉の中に滑り込み、手招きする。

続いてカニ子ーー。カニ子も上手く滑り込んだ。

そして、梨花。


梨花は走り出したが、少年Xの後ろで止まってしまう。

「何やってるんだ!? 早くーーっ!」

岸田が小声で言う。

「……無理、怖くて行けない。

「何言ってるの! 梨花ちゃん早く!!」

カニ子も急かす。

そんな、事をしている内に少年Xがゆっくりと向きを変える。

「クソッ! 中から鍵が閉まるから、カニ子は中で待ってろ!!」

岸田は飛び出して行く。


少年Xの脇の間から、腰を抜かしている梨花が見える。

「こっちだ! デカブツ!!」

岸田は叫ぶ。

少年Xはゆっくりと振り向き、岸田の方を向く。

正面から向かい合うと、本当にデカイ。今の内に梨花が逃げてくれたら、踵を返し3階の階段を駆け上がれば、少年Xは引っ掛かって登って来れなくなる筈だが、

まだ梨花が腰を抜かして動けずにいる。

「……梨花! 早く逃げてくれ!!」

岸田は叫ぶ。

「……ご、ごめん。岸田くん私は良いからもう逃げて……。」

梨花は震える声でそう言った。

だが、だからといって見捨てられる訳はない。

少年Xの巨大な腕が、もう目の前まで伸びている。

迷っている間に、逃げられない距離まで少年Xは迫っていた。


ーーもうダメか。岸田は目を瞑った。


スパンッ!


乾いて音が聞こえ、ドスンッ!と何か巨大な物が自分の脇に倒れた。

岸田は恐る恐る目を開ける。

倒れたのは少年Xだった。


……どうして!? 岸田はキョトンとしている。


と、扉から松田が

「これでも、ピッチャーで、甲子園行ったんだぜ。予選敗退だけど」

と笑って言って出て来た。


少年Xを見ると、頭の少年部分の頭に、牛刀が突き刺さっていた。

松田が投げたのだ。

「これで、田辺の仇が打てたな」

松田が言った。

「ああ、お前すげーよ!」

「コイツの覆面の下の面見てやろうぜ! 俺たちを散々ビビらした奴が、一体どんな面してるかをよぉ」

「……いや、止めておこう。下手に弄って目を覚ましても困る。シモキンがあの状態で動いているんだから、コイツもーー」

「……確かに、そうだな。とっと、行こうぜ」


「カニ子、平気だ出て来い」

岸田は扉をノックして言う。

カニ子は恐る恐る扉を開けて、顔を出す。

「見てみろよ。松田が倒したんだぜ?」

「え?」

岸田に言われ、カニ子は後ろで倒れている少年Xを見る。

「……。」

カニ子は驚いて、声も出ないようだ。

「お前、驚き過ぎだよ。ーーん?」

カニ子は背後を指差している。


……嫌な予感が頭に過る。


振り返る岸田達3人。

見ると、ゆっくりと少年Xが動き、右手を着いて体を起こそうとしている。

ーーヤバイ!!

「皆んな、早く中へ入れ!」

岸田は叫ぶ。


大きく分厚い引き戸式の扉を閉めて、ノブを摘み回し鍵を掛ける。

「此処何処だっ!?」

松田が言う。

「配膳室だよ」

暗い室内に、窓から月明かりが注ぐ、配膳室用の小さなエレベーターが見える。

配膳室は生徒が悪戯しないように、扉に外と内から施錠出来るようになっていた。外は鍵を使い、内は小さな一文字(いちもんじ)のノブを回し閉める。

「このエレベーター使えんじゃねーか? これで逃げよう」

岸田が言う。

「おお! ナイスアイディアだな!!」

人が乗る用ではなく、配膳用のカートが乗る為の物だが、子供なら乗れる。当時、その事は悪戯で実証済みだ。普段は入れないが配膳係になった時に、男子なら一回はみんな試している。あの時は1人ずつ乗ったが、多分子供なら3人くらいはいけるのではないか? 今、子供の体である事は不幸中の幸いだ。一気に全員で3階まで行ける。

「待って! これ動くの? 」

カニ子が言う。

「え?」

「覚えて無いの? 先生、エレベーター動かす時に鍵でスイッチ入れてたじゃない」

松田はエレベーターのスイッチを押すが、うんともすんとも言わない。

岸田も思い出す。

エレベーターの右上に鍵の付いた、銀の小さな蓋がある。始動させる鍵穴はその中にある。当時の記憶を辿る。

ーー配膳が始まる前、教師が来て配膳室の扉を鍵で開ける。そして、銀の蓋、始動キー、すべて同じ物の筈だが、鍵は教師が持っていた。


多分、在るのは職員室の鍵保管庫だ。

いや、そもそも、電気が来てるのか?

鍵が有っても、電気が来てなきゃ意味が無い。


「私知ってるよ」

梨花が言った。

「何を?」

「エレベーターを動かす方法」

「え? どうやって」

「左の扉」

エレベーターの左に白い50cm四方位の片開きの扉がある。

梨花は続ける。

「その中に、停電の時に手動で動かせるのが入ってるって。野澤先生に、配膳係の時にその扉が何か訊いたら、教えてくれた」

「本当か!」と松田は言い、早速白い扉に手を伸ばすがーー。「クソッ!」

白い扉をにも鍵が掛かっている。

ーー万事休すかッ!!


ドンドン! ドンドン!

ドンドン!ドンドン!


突如響く、衝撃音。


ーー誰かが、配膳室の扉を叩いている。

少年X!? シモキンかっ!!?

カニ子と梨花は手を握り合い、体を寄せ、恐怖に震えている。


--ちがう!


叩く音がするのは!外の扉じゃ無い。

配膳室のエレベーターの扉だ!!?


配膳用のエレベーターの扉は、上下に口のように開く。

エレベーターの真一文字に硬く閉じられ扉が、少しずつ開いていく。それは、開くと言うより、こじ開けられているようだった。

キリキリと、鉄の扉がひしゃげるような音がする。

扉の隙間から、何かがとび出て動いている。黒く細い棒のような物だ。

ーー中に何か居る。

外には少年X、出て行く訳にも行かない。

シモキンなら、イジメゲームをしたがる筈だから、まだ見境い無く攻撃してくる少年Xよりはマシだろう。隙を突ければ逃げるチャンスも無くは無い。

扉が開き、何かが飛び出して来た。


「やっと出れたぜ!!」

出て来たのは、百武貴久(ひゃくたたかひさ)だった。

「ん?」と百武は暗闇の中にいる岸田達を見て

「わあーーーッ!!? 」と驚くが、皆に口を塞がれる「んッーーー??×△〆☆ッ!?」

「シィィィィーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!」

と、皆で口元に人差し指を当てがい、静かにしろとやる。

口を押さえられたまま百武は、ウンウンと首を小刻みに上下させる。


「百武無事だったか。良かったぜ」

岸田がねぎらいながら語り掛ける。

「下には他の奴らも居るよ。木村と有村が居る」

百武は成りこそ小さいが、元気印のクラスのムードメーカーという感じだった。男子で1番小さく、男女でもカニ子よりは大きいだけで、クラスで2番目に小さい。坊主で、ネズミのようにちょこちょこと良く動く。

「他の奴らはっ?」

「石田も居たけど、あの少年Xとか言うのにやられたよ。捕まって胴から引き千切り殺された……」

「……そうか。こっちも、田辺がやられた。少年Xに松田が一撃くれてやったんだけど、頭に牛刀刺さってんのに、すぐ復活しやがった」

「頭に? すげーな。それじゃ、倒したりは無理だな」

「まあ、短時間の足止めくらいしか出来ないと思った方がいいな」

石田の悲惨な最期を聞かされたが、岸田達にショックを受けている余裕は無かった。

百武を交えて、まず配膳室から脱出せねばならない。


百武の手には子供手には大き過ぎるバールが握られていた。小さい百武が持つとさらに大きく見える。これが扉をこじ開けた時に、飛び出て見えていたのだ。


百武は

「まあ、色々説明しなきゃいけないんだが、先に確かめなきゃならない事がある。ちょっと悪いなーー」

と言うと、見守る岸田達を尻目に、バールの釘抜き側を、白い扉の隙間に叩き込み、テコの原理で鍵を壊し無理矢理こじ開けた。

「あーあ。やっぱりだ」

百武は落胆した声で言った。

「どうした?」

岸田が訊く。

「これ見ろよ」

中にレバーが付いている。それを回して手動で操作する訳だ。岸田は思った。

だが、百武の言っているのは、そのレバーの下の表記だった。

見ると『2(上下矢印マーク)3』と書かれている。

「これは?」

「ああ、これはなーー」

と、岸田は百武に説明を受ける。


「……そういう事か」

岸田は説明を聞き、百武が落胆した理由が分かった。


エレベーターは手動で動くが、脱出するに当たり致命的な機能の欠陥があったのだ。

それは、1階の手動操作では『1階(上下矢印マーク)2階』しか操れず。2階の手動操作では『2階(上下矢印マーク)3階』しか操れ無い。つまり、1階から2階に移動するのに、1人が1階に残って操作しなきゃならず。2階から3階へ移動するにも、1人が2階に残る必要がある。脱出するには、2人が犠牲にならなきゃいけない。


だとすると、多分3階には手動操作は無いだろう。

岸田がそう想像するのはーー。


たぶん何か利便性に関して、具体的な理由があってのこの造りなのではなく、建築時のコスト削減の為に、この様に造られたと思うからだ。手動操作は緊急時の、簡易使用を想定してしか作られてい無いのだろう。つまり、滅多に使わないから、多少面倒でも、安く済ました方が良いという訳だ。その証拠に岸田は6年間一度も手動で使われたのを見ていない。

その為に、複雑な手動操作機構が省略されているのだろう。

だとすると、3階は2階でだけ操作すれば、1つ手動装置の設置を省ける。しかも、専門教室しか無い3階に、配膳が運ばれる事はまず無い。

エレベーターには各階同士で会話出来るかように、独立した小さなマイクとスピーカーを兼ねた物が脇に付いている。それを手動操作の時に上手く使えば、大きな面倒も無いだろうし。


岸田も火災救助袋での脱出計画を百武に話す。


「屋上へはどう出るんだよ? 此処、どのドアも窓も開か無いぜ? 開か無いどころか壊す事も出来ねえ」

百武はバールを振って壊す真似をしながら言った。

多分、ここに来るまでに、そうやって試したのだろう。自分達と同じにーー。

「その事は分かってる。ーー田辺が最後に残してくれた希望だ」

岸田はそう言って、逃げる時に田辺の手から取って来た鍵を見せた。

「それで、屋上に出れるのか?」

「鍵は合ってる筈だが、此処は常識が通じない世界だ、開くか開か無いかはやってみるしかない。まあ、それは一先ず置いておいて、外は少年Xとシモキンが居るし、どうやって3階に行くかだが……。」

「この配膳用のエレベーターで行きゃ良いじゃん!」

松田が言う。

「だから、言ったろ。エレベーター使うと誰か2人が犠牲に成らなきゃいけないんだよ」百武が言う。

「ああそうか。じゃあ、階段を使うか?」

「全員で行く事も無いだろう? 2人だけ階段を使って3階まで行って、後はエレベーターで行けばいいじゃん?」

百武がいう。

「……私やよ。もうあんなのに追い回されるの嫌だよ」

梨花が今にも泣きそうな顔で言った。

「男女平等を叫ぶ昨今でも、さすが此処で女子に残れとは言わないよ。今残ってる奴で足が速いのはーー。下に居るのは誰だっけ?」

「木村と有村だよ」

木村元気は名前は元気なのに、走るのはおろか、スポーツ全般が苦手な上に、病弱で当時体育も良く休んでいた。

有村華菜は女子なので除外だ。

「そっか、じゃあやっぱ俺と岸田が残るか?」

「もし2人が捕まったら、3階まで行っても私達どうするの? 誰かが、引っ張ってってくれないと、私達だけで逃げ切れるとは思えないよ!?」

カニ子が言った。

「うーーん。」「うーーん。」

松田と百武は腕を組み、同時に唸る。


ずっと1人、考えていた岸田が口を開く。

2人の話を聞きながら、岸田は3階の配膳室から、屋上までの経路の記憶を辿っていた。

「別れて行動するのは最後の手段にしよう。俺に1つ考えがある。カニ子と百武に残って貰いたい」

「おいっ!?今、別行動は最後の手段だってお前が言ったろうっ!?? それに、カニ子は女子だしよぉ」

「だから考えがあるって言ってんだろ。まあ、この作戦が可能か少し調べなきゃならないけどな」


岸田はエレベーターの天井を触っている。

「何やってんだ?」

と松田が訊く。

「良く映画とかであるだろ? 閉じ込められた時の脱出用なのか、点検用なのか、エレベーターの天井に扉が。まあこれは配膳用だから脱出用ってのは無いか。ーーあっ、あった」

どうやら、岸田が探している扉は見つかったらしい。

岸田が言う。

「ああ、灯ねえかな? 懐中電灯少年Xから逃げる時に、1階に落としたままだ」

「ほら」と百武が服の中から何かを差し出す。

「え?」と岸田が見ると、それは懐中電灯だった。

「職員室前に落ちてた。灯が点いてるとシモキンに見つかるといけないから、エレベーターから出る時に消して腹の中に隠した」

「良く1階に行けたな? お前らが下に下りた時は、まだ 少年X居たろ?」

岸田は開いた扉に上半身を突っ込み、天井裏を懐中電灯で照らし見ながら訊く

「いや、居なかったよ」

百武が答える。

「え?」

「俺達が6年の教室から出て1年の教室の方に向かおうとした時、吹き抜けから上がって来る少年Xが見えたんだ。それで、そのまま下に行ったんだ。で、もう一度1階から外に出ようと試みたけど出られず、仕方が無いから、扉が頑丈そうで鍵の閉まる配膳室に隠れたんだ。でも、ずっと隠れてる訳にも行かないから、こうやって俺だけ偵察に来たんだ」

「なるほどな」

と岸田は上半身を天井裏の扉から引き抜き言う。

「お前の知りたい事は、分かったのか?」

「ああ、取りあえず大丈夫そうだ。説明は後でするよ。ーーこのマイクは使えるかな?」

岸田がエレベーター脇にあるマイクを見ながら言う。

確かこのマイクは、四角いボタンを押している時はマイク。話すとスピーカーになる筈だ。

岸田はボタンを押し「聞こえるか?」とスピーカーに向かい言い。

ーーボタンを押す。

すると「うん。岸田くん?」と華菜の声がスピーカーから聞こえた。

「よしっ、マイクも使えるな!」


岸田は此処で自分の計画を説明した。すると皆んなからは、無謀だと反対の声が上がった。


岸田の計画を実行に移すには、もう1つ何か決定的な物が必要だった。

それが、何か分からないが、それを見つければきっと皆んなも賛成してくれるだろう。

岸田は、何か使える物が無いかと、百武と一緒に1階に下りる事にした。


1階に下り、エレベーターの扉を開けると、木村と華菜が膝を抱え座っていた。

「木村くん無事だったんだね!」

と木村が立ち上がり嬉しそうに言う。よほど心細かったのだろう。

「ああ、お前らも無事で良かった」

「石川くんが……」

「ああ、聞いたよ。ウチも田辺がやられた。上に松田とカニ子と梨花が居る」

「……そうか」

と、木村は暗い顔をしたが

「ーーんっ?」

と、岸田は何かに気付く。

それは、1階の配膳室の隅にあった。

「配膳用のカートだな」

百武が岸田の視線を負いそう言った。

赤鷺小は給食センターから運ばれて来た給食を、配膳室で受けて各教室に運んでいた。

「ん?」

棚にも何かある? ビニール袋の束?ーーいや、違う!

「これは使える! 最後のアイテムが揃ったよ」

岸田は嬉しそうに言った。


その後、岸田は1階からマイクも使い新たな自分の計画を、2階に残っている松田達も含め皆に熱心に説明する。いや、それは説明と言うより、もはや説得と言った方が、合っていたろう。それ程、無茶な計画だった。だが、岸田の熱心さ、もう八方塞がりの状態である事もあって、やっと皆んなの賛同を受ける事が出来、岸田の計画は行動に移される事となった。


ーー先ず木村と華菜と岸田を2階に移動。

それから、岸田達と共にも3階へ上がる。

そして、配膳用のカートを3階まで上げた。


岸田達は3階の配膳室に着いた。やはり、手動操作装置は付いていなかった。

マイクは有ったので、着いた事を1階と2階に居る百武とカニ子に告げた。


そこから、廊下に出て、屋上への数段の短い階段を、皆んなで配膳用カートを持ち上げて上る。

階段は配膳室のすぐ脇に在る。

そしてその中間には、トイレがあった。此処でも岸田は手に入れなきゃいけない物があった。


全て準備ができーー。


「よし、それじゃ。屋上に出るぞ!」

岸田はポケットから、田辺の鍵を出す。これで開かなければ、全てが終わりだ。

小学校時代を思い出す上で、1番象徴的な場所だ。勿論、シモキンの事件があったからだ。元々自由に入れるような場所では無かったが、あの事件の後、此処は完全に立ち入り禁止になった。

岸田は今になって緊張してくる。自分で言い出した計画だ、どんな理由があっても失敗する訳にはいかない。

「田辺のくれたチャンスだ。きっと開くさ」

松田が岸田の気持ちを察したのか、そう言って勇気付けた。

「ああ、そうだな。百武とカニ子も居るし、グズグズしてられないな」


岸田は鍵をドアノブに差し捻った。

その時、妙な感覚、既視感? を感じたがーー


カチャッ


鍵が開いた喜びでそのまま流してしまう。


「鍵は開いた。良いか? 開けるぞ!?」

「ああ」


屋上の扉を開ける。

喜びで緩んだ気持ちが、一気に引き締まる。

だが、絶望はしてない。想定内だ。


「待ったわ。随分掛かったじゃない」


……そこには、シモキンが居た。


シモキンは続ける。

「岸田くん。あなたになら、あの鍵がどこの物か分かると思ってたわ。だって、あの日あなたが指揮したんですものね。私を殺す計画をーー」


「シモキンを殺す計画……。」

松田が一言言った。

皆んなは驚き、言葉を失った。

それは初めて聞いたからでは無いだろう。以前に聞いた、疑惑の答えかもしれないからーー。


岸田も黙っていたが、頭の中では必死に考えを巡らしていた。

多分、皆んなも同じ事を考えている。

松田が理科室の教卓の下で言った言葉が思い出される。

シモキンは自分達が殺したと……。

やはり、俺達がシモキンを殺したのか? しかも計画を立てたのは俺……。

さっき鍵をドアノブに挿した時に感じた感覚をふと思い出す。

ーー何かの記憶が蘇りそうな予感がする。


「何驚いた顔をしてんの? あんた達が、あの日私を殺したの、此処でね。さあ、ゲームを再開しようかしら? 首吊りゲームなんてどう?」

シモキンは嬉しそうに言った。


今は思い出せぬ過去に囚われている場合ではない!

岸田は頭を元に戻す。計画はまだ終わっていない。自分が此処で折れてどうする。

「良いだろう! ただし参加者はお前だけだ!!」

並んで居た岸田達が左右に分かれ退くと、後ろから配膳用カートを押し木村が出てくる。

「行くぞ!」

岸田の号令で、カートを全員で押し、全力で走り出す。

オール金属製の業務用カートで、重量もかなりある。さらに水満タンのタンクが5台分、下の段にワイヤーで括り付けてある。屋上の入り口が雨の時に水が校内に入り込まないように、緩やかなスロープになっているので、その分も加速される。

いくらシモキンでも正面から喰らえば無事では済まないだろう。力を使われる前に、改心の一撃を加えなければいけない。田辺が消化器をぶつけた時に、シモキンの力は無効化された。倒せないまでも、攻撃は一定時間なら効く。


ガラガラガラガラガラガラーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!


ーーガァンッ!!!


と金属が激しくぶつかる音が暗い屋上に響く。

シモキンは突然の反撃でひるみ、もろに攻撃を受けた。

成功だ!


「止まるな! そのまま、行け!!」

岸田が叫ぶ。

「オオーーーーーーッ!!」

と皆んなは声を上げそれに応える。


ガガガガガガガガガーーーーーーッ!!


カートの走る音が響く。

「ふざけんな! お前ら、止めろ!! また私を殺すのか!!?」

衝撃でカートの上に転がったシモキンの頭が、今にでも飛んで来て喰い付きそうな形相で言う。

皆んなは恐怖を押し殺し、力の限りカートを押し続ける!


ーーーーーガンッ!!


カートはとうとう屋上のフェンスに激突する!!!

シモキンはフェンスとカートの間に挟まれた。

そして、カートはそのままフェンスを突き破った。


「みんな離せ!!」

岸田の号令で

皆んなは一斉にカートのハンドルから手を離した。斜めに傾くカート。


「何やってんだ、岸田っ! 早く離せ!!」

松田が叫ぶ。

なぜか、岸田だけがまだカートにくっ付いて居る。


「お前だけは、道連れだ!」

シモキンがカート越しに、岸田の腕を掴んでいた。


松田が岸田の背に手を伸ばすが、もう岸田はカート諸共落ちて行く瞬間だった。

カートを追ってフェンスから飛び出そうとした松田を、木村と梨花が落ちる寸前で捕まえる。

「松田くんも落ちちゃうよ!」

梨花が言う。

「岸田ぁぁぁぁぁぁああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

松田の叫びが、屋上に木霊する。


岸田はカートとシモキン諸共、三階から下へ落ちて言った。


ヒュルヒュルヒュルヒュルゥゥゥゥ……。


……………。


ガンッ!!!


激しい衝突音を上げて、カートは地面に落下した。

松田達は落胆し、声を失った。


ーーその時


「おーい」

と岸田の声がする。

見るとワイヤーにぶら下がった岸田が下で手を振っていた。

岸田はどうやら無事のようだ。


「成功したな! 」

と背後からも声がする。今、屋上に着いた百武だった。カニ子も居る。


どうやら岸田の計画は、百武の言うように(少しのトラブルはあったものの)見事に成功したようだ。


岸田の考えた計画とはーー。


カニ子は、2階の配膳室から、5人を2回に分け3階に手動で上げて

その後、マイクで百武に伝え、エレベーターを1階に戻して、配膳用のカートを乗せてもらい、また3階まで上げる。その後、カニ子も1階へ百武の操作で下りる。

カニ子が着いたら、百武はエレベーターを吊るしてある2本のワイヤーの1本を、バールで外す。それを3階の岸田が引き上げて、カートに結んだ。

その後、百武とカニ子は共にエレベーター内で待機。


そして、屋上の入り口まで運んだカートに、給水タンクに入れた水を積む。

この付近で唯一の大型施設である小学校が、災害時に避難所として使われる事を想定してだろう。配膳室の棚に折りたたみ式の給水タンクが複数積まれ置かれていた。形状は、空の時はビニール袋みたいな物だから、タンクのみの移動は楽だ。

それをカートの下段に乗せ屋上の入り口まで運んで、トイレから引いたホースで水を満タンにする。水を満タンにして5台分積めた。1つ20リットルだから、20kgになる。それが5台で100kgだ。給水タンクは、カートに結んであるエレベーターのワイヤーに一緒に繋いだ。


きっと屋上に、シモキンが待ち構えているの事は岸田も予想していた。

岸田にだけ分かる鍵を混ぜたのは罠だと。

だから、最初は自分にワイヤーを結び、シモキンを道連れに飛び降りて

重り代わりになろうとしていた。

その為に、シモキン+自分より軽い、カニ子+百武を選んだのだが、エレベーターの重さを考慮するとどうなるか分からなかった。配膳用のかなり小型なエレベーターではあるが中に百武とカニ子を乗せて、岸田とシモキンの重さだけで上がるか皆不安だった。だから反対を受けたが、岸田が最初に自分の命を掛けたからこそ、百武とカニ子も危険を承知で残る事を引き受けてくれた。下手すれば、取り残されるだけでなく、エレベーター諸共落下する危険だってあったのに。


配膳用のカートと折りたたみ式の給水タンクが有って助かった。カートは重りにもなり、対シモキン用の武器にもなるだろうと岸田は考えた。実際、カートは武器として想像以上の威力を発揮した。

岸田が落ちたのは想定外だが、カートに結ばれたワイヤーが偶然にも岸田の命を繋ぎ止める命綱となった。これは奇跡と言える。


ワイヤーの長さがほぼ地面丁度の長さだっ為、シモキンはカートに押し潰されるように落下したが、岸田は僅かな差で地面への激突を免れた。


松田は、屋上の隅、ちょうどカートが開けたフェンスの穴の脇に設置されている備え付けのBOXの中を確認する。

「あった! 火災救助袋だ」

松田は簡単な触診で火災救助袋を点検する。問題無く使えるようだ。


松田は箱に描かれた説明を見ながら、火災救助袋を屋上から下ろした。

垂直落下式の物なので、下の抑えは要らなかった。袋の先に付いた砂袋の重りを、袋と共に下に落とすだけで良い。垂直式の火災救助袋は、傾斜を付けて落下スピードを殺さなくても、中が螺旋状の滑り台になっているので、場所を取らず垂直に設置出来る。だがその分スピードは落ちる。


火災救助袋の設置は完了したものの、皆は降りるのを躊躇してた。

高校の時にも避難訓練に皆んな参加していたが、火災救助袋を使っての模擬脱出などは、全校やっている時間も無いので、希望者だけだったりし、やった事のある者が今居るメンバー内には居なかった。

松田が「よし!手本を見せてやる」と一番初めに降りて来た。


シュルシュルシュルっと松田は下りて着て

「大丈夫か?岸田」

とまず岸田の安否を気遣った。

「ああ」と岸田が応えると

振り返り

「お前らも早く下りて来いよ!」

と屋上に居るメンバーに言った。

続いてカニ子が降りて来るなり、岸田の首に抱き付いて泣いた。

岸田も松田も仕方ねえなという顔で笑った。

そんなこんなしていると、なんだか上が騒がしい。

どうやら、別に逃げていた残りのメンバーも合流したらしい。

百武も下りて来る。梨花がグズグズとちゅうちょしている内に、合流したメンバーが先に2人降りて来る。

佐々木魁斗と安田サユリだ。

「良くお前ら、少年Xに捕まらずに来たな? 校舎の中を来たんだろ?」

佐々木に松田が訊く。

「ああ、運が良かったよ」

佐々木が答える。

「上には誰が居るんだ?」

「俺らと一緒に来たのは、後は田中要と高木真穂だ。ーーん? どうした、岸田?」

佐々木は岸田の異変に気付く。


「ーーやばいぞ。残りの奴らを急がせろっ!!」


岸田は顔色を変え叫んだ!


佐々木達は運が良かった訳じゃ無い。


ーー闇の中。

校舎の角からアイツがヌッと顔を出した。

巨大な体を揺らし、外壁をゆっくりと四つん這いで這って迫ってくる。


ーー少年Xだ。


その姿は、まるで闇夜の街灯の下で、壁にへばり付き、ヤモリが獲物の昆虫を狙うようだ。

少年Xは屋上に居る残りのメンバーを見つけた! 途端に動きが速くなる。


ーー少年Xは自分達を追って、校舎の外に出ていたから、佐々木達は会わなかったんだ。


「早くしろ!!」

松田が叫ぶ。


少年Xに気付き、梨花を押しのけ、後から来たメンバーが我先にと1人、2人と火災救助袋に入る。田中要と高木真穂だ。

ーーそして、やっと梨花も入った。


その時。


ビリッ!!?


……現実は残酷だ。


ビリッ!ビリビリビリーーッ!!!!??


3人の重みに耐えきれ無かったのか、どかで扱いを間違い袋が破けたのか、

火災救助袋が口の部分だを残して千切れた。


ーーーーーーーーーーーーーーッ!?


ドサッ!!


……。


嫌な音を立てて地に落ちた白い火災救助袋が、みるみると赤く血に染まる。

岸田達は悔しさと悲しみで思わず顔を背ける。


「アレを見て!」

サユリが叫ぶ!

切れた火災救助袋の口の部分にまだ梨花がぶら下がっていた。1番

「梨花早く上がれ!」

「梨花ちゃん!頑張って!!」

「早くしろ! ……早くっ!」

皆、口々に言う。

梨花はか細い腕で必死につかまりもがいていた。

梨花だけは、なんとか助かったようだ。


ーーと、思えたが


……やはり現実は…どこまでも残酷だった。


ーーいや、これは本当に現実なのか?

岸田は拳をグッと握り締める。


壁を登り背後からやって来た少年Xは、梨花を片手で捕まえると、ゴミでも放るようにポイと後ろに放った。

そして、何事も無かったように、屋上に残ったメンバーを追って行った。


………………………………………………………………………………。


ドサッ!


鈍い音を立てて、必死に応援していた岸田達の後ろに梨花は落ちた。

うつ伏せで倒れ、もう動かない梨花の周りに血の海が広がる。

地面に叩き付けられた衝撃で、手足は惨たらしく明後日の方向を向いている。

もうピクリとも動かない。即死だろう。


「逃げるぞ!」

岸田は心を鬼にして言った。

今は悲しんでいる暇は無い。


カートがゆっくりと上下している。

もうシモキンは復活しようとしているのだ。

とにかく此処から、逃げなくてはいけない!






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