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岸田と野澤先生

「良く分かったね?」

助手席の希が訊く。

「マスコミ系の知り合いに調べて貰ったのーー」

ハンドルを切りながら、真っ黒いサングラスを掛けたカニ子が答えた。


カニ子から、希に連絡があった。

現実世界の岸田と野澤先生の居場所が分かったのだ。

これから、カニ子のベンツで2人の元へ向かう。


あの後、全てのクラスメイトの連絡先は分かったのだがーー。

岸田救出に関しては、やはり全員が全員乗り気かというと、答えはNOだ。

今回の事(岸田と野澤先生の事)は、他のメンバーにも知らせてある。

そんなだから、反応は有ったり、無かったりだ。


希は仕事は体調が悪いと言い、暫く休暇を貰ったが、仮病とも言えない。

眠れて居ないのだ。


……悪夢の所為で。


他の皆んなもそうだ。

皆も悪夢に悩まされている。現実か夢か判断できない、白昼夢のようなモノを見た者も居る。希も電車の中で見た。


シモキンから何かアクションがあった時は、必ずLINEで全員に知らせる事になっている。これは岸田救出とはまた別の、暗黙の了解の元の一種の義務だ。各々が生き残る為のーー。


だから、シモキンともう一度対峙する事を望まない者も、きちんと何かあれば報告している。

言い方は悪いが、我が身可愛さからであるが、それを希は批難出来なかった。

自分だって我が身は可愛い。誰だってそうだ。普通の事だ。


確かにもうシモキンとやり合いたく無い気持ちは分かる。前は何とか岸田の機転で切り抜けたが、もう一度やって勝てるのか?しかも、岸田抜きだ。


希も常にそういう不安が心の隅にある。


「まさかカニ子が、あの澪羽とはね」

松田が後部座から驚きを持って言った。


今日はこの前のメンバー(希、カニ子、純恋、田辺)に、松田がプラスされた。

やはり、ずっと岸田のサポート的な存在であった松田は、現実の岸田の様子が気になるのだろう。


希は松田が来てくれたのが嬉しかった。

そして、あの時のサブリーダー的な存在だった松田の参加は、心強くもあった。


先ずは野澤先生の家に向かった。


「岸田くんは少し手こずったみたいだけど、野澤先生は簡単だったようよ……。」

そう言ったカニ子の言葉尻がなんだか暗い。


カニ子の話によるとーー。


野澤先生は、今42歳になって居る。

子供の頃大人だったから、今の年齢を聞いて希は驚く。感覚的にもっと歳上になっているイメージだけど、確かに当時を思い出すと聞かされていた年齢は30歳前半くらいだった。


もう小学校の教師はして居ない。

というより、希の父に請われて当時希達の担任をしただけで、小学校の教員免許を持っているが元々小学校の教員では無かった。希達を受け持った後は、小学校の教職に就く事は無かった。

近年は大学で教鞭を取りながら、大学内の研究室で児童心理学の研究をしていて、大学の准教授になって居た。

講演会なんかもしていて、ネットなんかで名前を検索すれば簡単にヒットするそうだ。

そういう、事で捜索が簡単だったのか。


と希が納得し掛けた時ーー。


「……そしてもう一つ、講演会以外に野澤先生を探すのを容易にさせた事があるの」


カニ子が言った。


嫌な予感をさせる物言いだった。

どうやら、カニ子の言葉尻が最初に暗かった理由は、この事らしい。


「ダッシュボードの中に資料があるわ。少しショッキングなのも有るけど、皆んなで見てみて」

カニ子が言った。

希が木目調のダッシュボードを開けると、A4サイズの封筒が入っていた。


希は封筒を開ける。

中には、雑誌や新聞のコピーと写真……


……ん? 肉?? 違うっ!!


ーーこれはっ!?


「きゃあっ!」


希は写真を見て、それが何だか分かると思わず悲鳴を上げ、手に持った写真を膝に落とす。

後部座席に居た松田達が、どうした!? と希の膝の上の写真を覗き込み、言葉を失う。


そのモノクロの写真には、ケロイド状に顔が溶けた男とも女ともつかない顔がーー!?


カニ子が言う。

「野澤先生よ。今から約3年前。帰宅時車を降りた所で、何者かに襲われたそうよ。顔から胸に掛けて、強い酸を掛けられた。何とか命は取り止めて、入院してるらしいけど。それから、どうなったかまでは分からないわ」

「だから、あの世界の野澤先生も……」

希は呟くように言う。


皆の脳裏に、あの時見たマスクの下の少年X(野澤先生)の顔が浮かんだ。


「犯人は?」

松田が訊く。

「まだ捕まって無い」

「……シモキンの仕業か? 」

「どうだろうね?」

「シモキンは俺達から生まれたようなもんだ。俺達から力を得る必要があるから、俺達には無闇に直接手は出して来ないだろうけど、野澤先生はただの私怨だ。やられた可能性は高い。でもどうやって……」


シモキンはどうやって、現実世界に直接的アクセスして来るのかーー。


松田はそう言って、物思うように、折り曲げた自分の人差し指の背を噛む。


他の資料を回し見している間に、野澤先生の家に着いた。


他の資料は、過去の先生の業績や当時の事件の記事だった。

殺人未遂事件で、一般人であり被害者側だったから、個人について大きく掘り下げては記事も書かれていなかった。


赤鷺小での事も無かった。きっと、先生の中でもあのオカルト染みた事件ーー。


いや、儀式といった方が良いだろう。


は、異常な物と考え、結果はともかくとして、公表を控えたのだろう。


でなければ、結果的には成功した、村丸々全てを巻き込んだ、1年掛りの大プロジェクトを研究者が発表しないのはおかしいだろう。


ーーまたは、シモキンの父へした行為を批難されるのを恐れたのかも知れない。



野澤先生の家は、東京近郊の埼玉県F市の住宅街の中に在った。

近年新たな路線が出来き、都内への通勤の便が良くなった事が売りの、新興住宅の開発が盛んなこの地域の中で、野澤先生の家は一際古く、歴史を感じさせる家屋だった。


資料によれば、野澤家はこの地域の名家らしい。叔父にあたる人は、今もF市の市議会に居る。


ピンポーン!


歴史を感じさせる立派な門に似つかわしく無い、まさに取って付けた感じのチャイムを押すと


「どちら様ですか?」


スピーカーから品の良い声が聞こえる。

多分、野澤先生の母親だ。

野澤先生は父親を10年程前に亡くし、現在母親と2人暮らしだった。


「すいません。以前、先生にお世話になった赤鷺小の卒業生なんですがーー」

カニ子がマイクに向かい言う。


「ーーっ!? あらすいません。わざわざお焼香にーー」


スピーカー越しに、野澤先生の母親はそう言った。 言葉の前におかしな間があったのが、なんとなく気に掛かる。


出て来た野澤先生の母親は、声の通りの品のある白髪のご婦人だった。


家の中へ通され、客間に招かれる。

客間には、仏壇が置かれ、そこに野澤先生の位牌と遺影があった。


短くなった線香からは、白い煙が立ち上って居た。


「先生は亡くなられたんですか?」

「ーーはい」

と野澤先生の母親はキョトンとした顔で言って

「先々週です。知らずに来たんですか?」

と言った。


訊くと

闘病中だった野澤先生は、14日前の朝方亡くなられたそうだ。


……それは丁度、希達があの夢の世界に陥って居た時だ。


あの時、確か野澤先生は


ーーこれで死ねる。


と言った。


それは、現在世界の限界を迎えた肉体の死の事だったのか?


それとも、用が無くなりシモキンに殺されたのだろうか?


だが、シモキンには直接的に命を奪える力までは無かった筈だ。


野澤先生の言葉からでは、判断出来ない。


「先生は、怪我が原因でーー?」

カニ子が訊く。

「一応、死因は心不全ですがーー」


明確な死因が不明な場合に、心不全と書かれる事が多いと聞くが……。


もし本当に心不全だとしても。

酸による火傷が原因で、心不全に陥っての、死、と考えるのが普通だろう。


だが、本当に一切シモキンは手を下して居ないのか?


……なんとも言えない。


野澤先生の母親に、そのまま客間でお茶とお茶受けを出され、もてなしを受けた。


母親は亡くなって直ぐ、赤鷺小の元教え子が偶然訪ねて来たのに、何らかの縁を感じて居るようだった。


実は偶然では無いのだが……。


でも自分達に何があったのかを、母親には勿論言える訳がない。


生前の話を訊くが、赤鷺小の話は全くしなかったそうだ。

それどころか、訊いても話すのを酷く嫌がったと言う。だから、母親も1度訊いた切り、訊いた事は無いそうだ。

やはり野澤先生にとって赤鷺小での事は、好ましく無い出来事だったのだろう。


野澤先生は怪我を負ってからは、ずっと亡くなるまで意識不明だったらしい。


逆に母親に訊かれた。

「でも、最近になってふと思い出したんです。あの事件が起きる少し前、赤鷺小で大きな失敗を犯したかも知れないって言ったんです? 凄い思い詰めた顔でーー。その時は、また気を悪くさせるといけないと、深くは訊かなかったのですが。何かご存知ありませんか!? 今になって気になって。あの時は、赤鷺小の事を元々話たがらなかったんで、仕事の失敗を思い出して悔やんでるくらいに思ったんですが、もしかしたら事件に関係あるんじゃ」

とーー。


来た時に、インターホン越しに感じた違和感はこれだと、希は思った。

母親は赤鷺小という言葉に、反応したのだ。


母親の感は当たっているだろう。


皆んな、多分シモキンから何らかのアクションがあったんだろうという事は、簡単に察しが付いたが、母親にはカニ子が代表するように、分からないですと告げた。


それが一番良い選択なのは、皆んな分かっていた。野澤先生の母親まで巻き込む訳には行かないし、言っても信じる事はないだろう。気を悪くさせるだけだ。


息子が亡くなったばかりなのに、突然の訪問を、快く招き入れてくれた野澤先生の母親に申し訳無い。


カニ子は話の流れのまま「今日はありがとうございます。突然の訪問を快く受け入れて頂き。すいませんが、私達もう一軒行かなきゃいけない所があるんでーー」

と話をまとめるように切り上げた。


「どちらへ? もう少し、ゆっくりして居なさったら? 遠いの?」

野澤先生の母親の問いに

カニ子は

「長野です」と答えた。


帰り際、玄関まで送りに出て来た野澤先生の母親が気付く。

「どこかで見た事あると思ったら、あなたテレビに出てるわよねぇ!?」

「ーーええ。あ、ハイ」

カニ子は唐突に言われ、照れたように慌てて応える。

「えーと、確か名前はぁー? えーとぉー?」

「澪羽です」

「ああ! そうそう!!ーーサイン頂けるかしら?」

「えっ? ええ、喜んでーー」

カニ子は母親の勢いに押された感じにになりながら、部屋の奥から持って来たノートにサインを書き渡した。

沈んだ様子だった母親が、少し明るくなったのを見て、カニ子は何だか良かったと思った。


「岸田くん長野なの?」

走り出した車の中で、助手席の希が訊く。

カニ子が答える。

「実家がね。赤鷺村から引っ越してから、ずっと母方の実家の在る長野みたいだけど。赤鷺村に居た時に、確かお祖父ちゃん居たから、赤鷺村の家は父方の実家だったのね。ロッククライミングやってたらしいから、そこから調べたらしいわ。大学の時に、いくつかの大会で入賞もしてる。ーーと言っても、マスコミが取り上げる程の大きな大会でも無いから、探すのは少し梃子摺ったみたいだけど。だから、先生の時みたいに特に資料も無いわ。大会のホームページに、名前が載ってただけだってーー。伝えてある通り、明日も有るけど、皆んなちゃんと時間作ってきたよね?」

「おう!」

松田が間髪入れず応える。

その様子から、随分と今日の日の為に、気合を入れて来たのだろう。

田辺も少し遅れて小さく「うん」と言う。その声からは、松田と対照的に不安んが滲んでいる。

「なんだよ、田辺ビビってんのか? 赤鷺村にも行くからって」

「そ、そんな事、無くは無いけど……」

「大丈夫だよ。今はダムの底だし。現実の赤鷺村にシモキンが居る訳じゃねえっ」

松田が田辺の肩を叩きからかう。


運転しながら、その様子を耳で伺っていたカニ子が

「……どうかな?」

と小さく言った。

その声は、希の耳ににだけ届いて居たが、希は気付かぬフリをした。


「少年Xは野澤先生だったのよね?」

純恋が訊いた。


一応、メンバー全員は、自分が死んだ後あの世界で何があったのかを、LINEで生き残り組達から聞いて知っている。


「そうよ。シモキンに操られて」

希が答える。

「さっき見た写真の顔だったの?」

「うーん? 子供に姿はなってたけど、そうね。大体ーー」


「先生、寝たきりになってから、ずっとシモキンに拷問ゲームの玩具にされてたのかな……?」


田辺が呟くように言った。


皆んな、その疑問には応えなかった。

想像したくも無かった。

次は、そうなるのが、自分かも知れないからーー。


埼玉県との県境に在る長野県K村に、今の岸田の実家は在った。


山に囲まれ畑が多く、まだ多くの自然が残るのどかな風景が広がる。何処と無く赤鷺村を思い出させるが、晴れ渡る抜けた空からは、あの陰鬱さは感じない。


……思い出そうとすると、いつも赤鷺村は黒い闇の中に佇んで居る。


心の中に、古傷のように残る赤鷺村の面影は、実際の村の風景からなのか、単にトラウマが原因なのか? 今は確かめる術はない。


なだらかな斜面の、畑の中に離れ小島の様に、小さな集落が点在する。その小さな集落の中の、一軒家の前に車を停める。

大きくは無いが、最近建て直したのか、家は新しい。


家のチャイムを押すと、老けては居るが、皆に見覚えのある顔が出て来る。向こうは当然全く分からぬ? と言う顔だが、確かに岸田の母親だった。


「どちら様で? 大学の時のお友達?」

岸田の母親の問いに

カニ子が

「おばさん覚えてますかっ!? 赤鷺小で一緒だった奥野雅子です! 岸田くんは、今どうしてますかっ!?」

と、まるで縋るように言った。

岸田の母親は、いきなり面喰らったように、目を丸くして居る。

野澤先生の時とは明らかに違うカニ子の態度に皆んな驚くが、カニ子の感情の昂りを察するように、松田がカニ子の肩に手を置くと

「おばさん急にすいません。僕ら赤鷺小のクラスメイトです。変なハガキが届いたもので、皆んなに確認したですが、岸田くんだけ連絡が付かなくて」

と代わりに訊いた。

「それで、わざわざ調べて?」

「奥野の知り合いがロッククライミングやってて、たまたま教一くんの事知ってて。友達って訳じゃ無いけどーー」

松田は怪しまれないように、適当に後からいくらでも話を合わせ易いような、デタラメを言った。

「そう。それで、わざわざ。でも、教一は……」

岸田の母親はそう言うと、一瞬沈んだように黙り、皆を中に招き入れた。

その態度に、皆何とも言えない不安を覚えた。

希の頭に、ふと野澤先生の顔が過ぎったが、急いで掻き消した。


悪い予感は当たってしまった。

岸田は自室のベッドで、点滴を打たれ眠っていた。


「もうそろそろ、半年になります……。病院が遠いから、先月から自宅介護にして貰いました」

「おばさん。教一くんはーー?」

松田が聞く。

「山登り中の事故です」

「事故?」

岸田の母親は説明する。

それを聞いて驚いたのは、カニ子だった。


それは、サユリの家で2人きりになった時に、岸田に聞かされた話と同じだったからだ。

ただ、岸田の話と決定的に違うのは、ロープを切ったのは岸田本人だったという事だ。

岸田は自分の行動を他人の事として告白していたのだ。


「幸い、途中の木に引っ掛かって、その時は無事に思えたんだけど。下山後に急に容態が悪化して。体内で出来た血栓が、時間を掛けて脳まで達して血管を詰まらせたんですって。自発呼吸はしてるし、手術は成功してるから、お医者様もいつ目覚めてもおかしく無いって話なんだけど……。ああ、お茶も出さずにごめんなさいね。」

岸田の母親は言った。


そうだ。岸田の話でも、木の枝に引っ掛かって一命は取り留めたと言っていた。

確かに、あの話は岸田本人の事だったのだ。

カニ子は首を傾げる。どうして、岸田は嘘を言ったのか? きっと、恥ずかしいと思ったのだろう。自分を英雄のように誇る発言と思われるのが嫌だったのだ。でも、きっと自分にだけは、自分に何が起きたか伝えたかったのだ。


「いえ、お構いなく! いきなり尋ねたんですから」

松田が岸田の母親に言った。

岸田の母親は出て行った。


「事故はシモキンとは関係無さそうだけどーー」

松田が言う。

「多分、関係無いと思う。岸田くんに、私事故の話聞いてたわ。その時は、岸田くん本人の事じゃなく、友人の事として語られてたけど、多分岸田くん本人の事よ。今聞いたのと、まるで同じだった。その時に、シモキンの話は出なかった。もし滑落事故の原因がシモキンなら、何か言う筈だもの」

カニ子が言う。

「なるほど。でも、目覚め無いのはきっとーー」

松田が言いかけ時


「岸田くんを助けた所で、現実の岸田くんが目覚めるのかな……? もし助からないなら……」

田辺が言った。


「お前なぁ! 岸田を見捨てるってのかよ!!」

「……そういう訳じゃ無いけど。でも、もし何も変わらないならーー」


「岸田くんを、助ける助けないとは、別にしても。シモキンは私達を狙って必ず来るわよ。結局、私達でどうにかしなくちゃいけないのよ」

カニ子が言った。


「……。」

田辺は何の反論もせず、観念したように俯いた。


部屋のドアが開き、お盆にコーヒーを乗せて岸田の母親が戻って来た。

さっきより僅かに張り詰めている部屋の空気に、岸田の母親は気付いては居なかった。

岸田の母親は、全員にコーヒーを配ると

「あの、これーー」

とハガキを1枚差し出した。

あのシモキンからの同窓会への招待状だ。

「気持ちが悪いけど、何となく捨てるのも怖くてーー」

「おばさん。あの時、僕らに何があったんですか?」

松田が訊いた。

岸田の母親は少し考えるように黙ってから

「あなた達は思い出したの? 教一はずっと忘れたままだったわ」

と言った。

「いえ、そのハガキを貰って、皆んなと再会した時に思い出したんです」

「そう。今思えば、村自体も少し変だったのよ。老人達は本当に幽霊なんかを信じてたし。あの学年に産まれた子供達は、皆んな居ない筈の死んだ志茂木家の娘が居るように話してた。色々と問題の多いクラスだった。ーーそして、あの屋上の事件。先生達に言われ、皆んな見えぬフリをした。知らなかったのは、志茂木の所の飛三(とびぞう)さんだけ。大した仕事も無いのに、急いで来るように、家にあの人形を置いたまま来なきゃならないように仕向けたーー。結果的には良くなったけど……。」

「これ、僕らが預かっても?」

松田がハガキを指し言った。

「 ええ。どうぞ」

岸田の母親は、そんな物どうするの? という顔をして言った。


岸田の家を出て、嘗て赤鷺村の在った場所を目指す。

一旦東京に戻り、中央自動車道、名神高速道路を利用し半日以上掛かるだろう。


「新幹線とかの方が良かったんじゃ無いか? 向こうでレンタカー借りれば。時間がだいぶ軽減できたんじゃないか?」

松田が言った。

「今更言っても遅いわよ」

「なんだよ。何か考えての事じゃ無いのか」

「悪かったわね」

「いや、悪くはねえけど。お前色々と調べたりしてあるから、なんか考えあっての事かと思ったよ」

「自分でも分からないけど。多分ーー、なんかじっとしてられないのよ。とにかく今は動く事で、気が紛れる感じだから」



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