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湯けむり怪異譚「ぶらぶら」  作者: 秋野きつ
第3章 変化
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第90話 案内状


拝啓


 残炎の候、いまだ寝苦しい夜も続いております。体調など崩されておられないでしょうか。


 さて、この度、夏の暑さを吹き飛ばし、ついでに呪いを吹き飛ばすため、名坂様を囲む会を開催いたしたく、御案内させていただきました。


 日時・場所等の詳細は、別紙のとおりで御座います。つきましては、縁のある方々、可能な限り多くの方に御参加を願えれば幸いです。


敬具



「……なんだこれは?」


 怒りを通り越して、青褪めた顔で名坂警部補がいう。問い詰められているのは神尾五郎、常に損な役回りである。


「えーと、その、俺はやめた方が良いと言ったのですが、千里さんがですね」


「やっぱりあいつか。スーと何やら密談していたと思えば……。この注意書きの水着必携、パラソル貸出可、海の家利用可というのはなんだ?」


「スーさんが海水浴を体験したいというので」


「ひかりの供養をするんじゃないのか? どっちがついでだ。暑気払いが目的になっているではないか。なしだ、なし! こんな会はなしだ!」


「もう、いろいろ頼んじまったよ」

 五郎の部屋の戸口から千里がいう。「血相変えて部屋に入って行くのを見てさ。頭の固い男だね。それは下だけでいいって、何度言えばわかるんだ」


「くだらん冗談も大概にしておけ」


「冗談なんかじゃあないよ。要は祭りさ。できるだけ大勢の方がいいというのは本当だ。スーの話だがね。海の魔物は、人が多いのも、笑い声も嫌いなんだってさ。この件で嘘はつかないし、からかったりしない。それくらいの分別はあるさ。もう結構な人数が集まったんだよ。ありがたいことじゃないか。あんたのために来てくれるってんだから、怒るより感謝したらどうなんだい」


 そう言われて黙り込む名坂警部補に、一枚のハンカチを手渡した。


「そのハンカチ、なくすんじゃないよ。それが今回のまじないの種だってさ」


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