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湯けむり怪異譚「ぶらぶら」  作者: 秋野きつ
第3章 変化
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第79話 あなたには世話になりません!


 化粧地蔵のほこらで出会ったのは、百年以上前の式神ではないかと言われる童女だ。おかっぱ頭で手の平ほどの背丈しかない。青地に稲妻柄の着物が目に眩しく、爪楊枝つまようじほどの刀をいている。異形の烏から身をていして庇ってくれた五郎に恩義を感じてか、


「危ういところを助けてもらい、ありがとうございました。佳乃よしのと申します」


と、丁寧に頭を下げて名乗った。


「自分が何者であるか、お伝えしたいのですが、どうやら長く眠っていたようで記憶がはっきりせず。すみません」


「そんなに頭を下げることはない。とにかく無事で良かった」


 五郎が優しく応じる一方で、調子に乗った温州蜜柑が尊大な態度でいう。


「佳乃いうたか。そこな五郎に下げる頭があるんなら、まずはわてに頭を下げたらどうや? おまんが無事でおれるんは、わてのおかげとちゃうかいな」


「……ありがとうございます」


 ぷいと横を向いていう佳乃である。なんやその態度は、式神風情が舐めとったら、などとわめく蜜柑を五郎が押し留める。


「自分のことは、おいおい思い出してもらうとして。まずは、さっきの烏だな。どうして襲われていたんだ? あれはなんなのだ?」


「わたくしを狙ったのではなく、化粧地蔵を狙っていたのだと思います。初めて見たものですが、名もなき下位の式神でしょうか」


「では、烏のことも置くとして。以前、目に見えぬ獣に襲われたことはなかったかい?」


「ええ、あります。あれは見えないのではなく、そも姿なきものです。獣と思えば獣、見る側が縛るのです。なぜでしょう、そんなことばかりはよく覚えております。主から何かを命じられていたはず。何かをしなければならない。そんな気はするのに、何をすれば良いのか思い出せない」


 行くあてもなく、どうすれば良いのかと溜息をつく佳乃に、お人好しの五郎がいう。


「じゃあ、とりあえず、うちへ来るかい?」


「え? 良いのですか」


 嬉しそうに顔を輝かせる佳乃だが、蜜柑が不満そうに声をあげた。


「えー? こんなん連れて帰んの?」


「あなたには世話になりません!」


 きっ、と蜜柑を睨みつける佳乃だった。


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