第71話 鋏
犬も歩けば何とやら、手鏡の出所を探しに来たところが、かえって別の面倒ごとに巻き込まれた。傷つき彷徨う式神を救ってやってくれと。二つ返事とはいかないが、人の良い五郎と、でしゃばりの蜜柑が頼みを断るわけもない。
では、お引き受けいただけますね? とスーに念を押されて、力強く応じるのは温州蜜柑だ。小さなくまのマスコットが胸を叩いていう。
「おう、任せとけ。わてが引き受けたからには百人力! すぐにも解決したるわい!」
例によって根拠なく自信満々の蜜柑の様子に、やれやれと五郎が溜息をついた。
「その自信はどこから来るんだ? 汲めど尽くせぬ自惚れの泉か。そろそろ蓋をしてほしいところだな」
「五郎様は気乗りしませんか?」
スーに問われて、戸惑いがちに五郎が応じる。
「そういうわけじゃないけど、蜜柑の自惚れには、ずいぶん酷い目に遭わされてきたからな」
「さいですか。では、護身の意味も含めて、ひとつ良い物をお貸しするとしましょう」
言って、がさごそと店の奥から持ち出してきたのは古びた鋏だ。
「この鋏は売り物では御座いません。人の欲望や執着を断つ縁切り鋏。その昔、宝具と呼ばれたこともあったとか。化け猫退治に使われたともいいます。紙に神を寄らせる式神と絡むのであれば、これほど相応しいものもそうはないでしょう。
紙切り、また神切り。こちらでは駄洒落とも言霊ともいうそうですね。まあ気休めに御座いますれば。そうそう、せっかくですから品物を見ていってくださいな。すべてまじないの道具です。のろいの道具などひとつも御座いません。さあ、どうぞ」
改めて店内を見回せば、西洋風の装身具から和風の人形、中華風の御守りまで、多種多様、雑多な品物が溢れんばかりに並べてあった。




