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湯けむり怪異譚「ぶらぶら」  作者: 秋野きつ
第3章 変化
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第71話 鋏


 犬も歩けば何とやら、手鏡の出所を探しに来たところが、かえって別の面倒ごとに巻き込まれた。傷つき彷徨さまよう式神を救ってやってくれと。二つ返事とはいかないが、人の良い五郎と、でしゃばりの蜜柑が頼みを断るわけもない。


 では、お引き受けいただけますね? とスーに念を押されて、力強く応じるのは温州蜜柑だ。小さなくまのマスコットが胸を叩いていう。


「おう、任せとけ。わてが引き受けたからには百人力! すぐにも解決したるわい!」


 例によって根拠なく自信満々の蜜柑の様子に、やれやれと五郎が溜息をついた。


「その自信はどこから来るんだ? 汲めど尽くせぬ自惚れの泉か。そろそろ蓋をしてほしいところだな」


「五郎様は気乗りしませんか?」


 スーに問われて、戸惑いがちに五郎が応じる。


「そういうわけじゃないけど、蜜柑の自惚れには、ずいぶん酷い目に遭わされてきたからな」


「さいですか。では、護身の意味も含めて、ひとつ良い物をお貸しするとしましょう」


 言って、がさごそと店の奥から持ち出してきたのは古びたはさみだ。


「この鋏は売り物では御座いません。人の欲望や執着を断つ縁切り鋏。その昔、宝具と呼ばれたこともあったとか。化け猫退治に使われたともいいます。紙に神を寄らせる式神と絡むのであれば、これほど相応しいものもそうはないでしょう。

 紙切り、また神切り。こちらでは駄洒落とも言霊ともいうそうですね。まあ気休めに御座いますれば。そうそう、せっかくですから品物を見ていってくださいな。すべてまじないの道具です。のろいの道具などひとつも御座いません。さあ、どうぞ」


 改めて店内を見回せば、西洋風の装身具から和風の人形、中華風の御守りまで、多種多様、雑多な品物が溢れんばかりに並べてあった。


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