第69話 飲茶
飲茶の準備をするので、どうぞこちらへと五郎らを誘い、席についた面々に頭を下げると、店主が改めて挨拶をしたもの。
「私、欧州生まれの華僑で、スーと申します。容姿がこうなので驚かれますが、中国と欧州のクォーターとなります」
薄いブロンドの髪と碧い目だけを見れば、北欧の妖精のよう。話す言葉には中華風の訛りがあり、それもまたリズミカルで心地よい。
「さて、いろいろとお聞きになりたいことがあるようですが、飲茶の準備が整うまで、もう少し私のことを話しましょうか。
以前は横浜に住んでおりました。少々気になることがあって神辺市へ移って参りまして。大陸に暮らしていたことも御座いますよ。曽祖母は北京の白雲観にいたこともある坤道だったとか。いわゆる道士様ですね。
何でもお話しすると言いましたが、年齢と体重は内緒ですよ。なにぶん幼い容姿に低い背丈で、よく子供に間違われます。いろいろ子供料金で得もしておりますけれど。おや、飲茶の準備が整ったようです」
ころころと無人のワゴンが近付き、湯気の立つ点心と茶葉のセットがふわりと浮かび上がった。人もないのに、次々と料理や湯呑みが運ばれてくる。驚く五郎らを楽しげに眺めて、
「うふふ、手品みたいでしょう? 実際、頭の固い方々には手品として済ませてしまいますけれど、皆様は柔らかい頭をお持ちの様子。よく目を凝らして見てください。まぶたに、ちょっぴりツバをつけて」
言われて、五郎らが目を凝らしてみると、スーの傍らで給仕する若い男の姿が見えた。
「素敵な男性が見えますでしょうか。こちら、私の兄、ヤンで御座います」
紹介を受けて無言のまま頭を下げるが、その姿は、ぼんやりとして透明で、生きた気配がない。
「兄様は中国におります。ここにあるのは魂のみ。いわゆる生霊と思ってもらえれば。こちらの紹介はこの程度にして、そちらの話です。が、その前に」
と、湯気を立てるお茶を勧める。
「温かいうちに、どうぞ召し上がれ」




