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湯けむり怪異譚「ぶらぶら」  作者: 秋野きつ
第3章 変化
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第66話 映像の影


 名坂警部補は夏野千里を探しているのだという。当の千里は五郎の部屋の真上に暮らしているのだが、そうとは知らず、実は、と語り始めた。


「千里を探しているのは、ドラッグのバイヤーを摘発した件で聞きたいことがあってな。と言っても、事件そのものは処理も済んで、もう良いのだが。関連の防犯ビデオに、ちょっと気になるものが映っていた。

 早苗さんは、温州蜜柑のことは? 知っているんだな。なら、よかろう。私が見たままを話すとしよう。防犯ビデオには、バイヤーの連中が千里にちょっかいを出そうとして返り討ちにあう様子が映っていた。それだけだったのだが、最近になって映像を見直していたら、以前には映っていなかったものが見えた。それも、私と狭間巡査にしか見えぬようでな。他の連中には、まったく見えていないのだ。映像から切り出した写真しかないが……」


 と差し出した写真には、バイヤーを投げ飛ばしている千里の足下に、小さな人影が映っていた。


「この影だが、見えるか?」


「見えるでぇ」


 と応じたのは、自称式霊だか神様の温州蜜柑だ。五郎の頭に乗って写真を覗き込んでいた。


「わてだけやない。五郎も、美琴はんに早苗はんも見えとるやろ? これは普通の人間には見えへん妖しのものや。わてとの繋がりがあるで、おまんらにも見えるんやと思うで」


「なるほどな。小さな人影のように見えるが、蜜柑、おまえではないのだな?」


「ちゃうちゃう、もっと写真うつりええし」


「では、ほかに心当たりは?」


「あらへんな」


「そうか」


 落胆した様子の名坂警部補だったが、気を取り直したように、今度は五郎に向かっていう。


「もうひとつ頼みがある。先だっての手鏡の出所を探っていてな。中華街にまじないの道具を扱う店があるとわかったのだ。蛇の道は蛇ともいう。温州蜜柑と一緒にきてもらいたいのだが」


「構いませんけど、役に立ちますかね?」


「なにを抜かすか。わてほど役立つ式霊もそうはおらへんわい」


 憤慨したように言う蜜柑に頷いて、名坂警部補が話を続ける。


「今日は非番で時間もある。取り込み中でなければ、すぐにでも同行願いたいところだが」


「いやいや、大丈夫です」


 取り込み中だからこそ連れ出してもらいたいとの気持ちを込めて五郎が応じる。


「行きましょう、行きましょう。いつでも、いや、今から行きましょう」


「じゃ、うちもついていこかな。中華街も行ってみたかったし。ええ土産も買えそうや」


 え? 来るの? といった雰囲気の五郎と、なんか文句あんの? といった雰囲気の早苗である。二人の様子と名坂警部補とを見比べながら、


「わ、私も、い、行っていいですか?」


と、美琴が精一杯の勇気を振り絞った。


 ああ、私的な興味での話だ、気になるなら来てもらえばよかろうとの名坂警部補の返答に、美琴は、ほっと息をついたとか。


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