第62話 ひとまずの
マンションを舞台とした怪異譚も、ひとまず幕を閉じたが、それぞれの日常は変わらず続いていく。
理奈の問題も解決をみて、Black Catsが再結成、と言っても、そのまま三人でやるのは芸のない話だと、美琴と葛音を勧誘中だ。言い出したら聞かない千里のすることとて、実現する見込みも高い。ちなみにバンドのマスコットとして蜜柑も採用するとか。
幼馴染以上に踏み込めずにいた将吾と理奈の関係も、少しだけ前進したようだ。もっと素直になりなと声をかける千里を見守って、あとから声をかけるのが名坂警部補だ。理奈に聞こえないような声で、
「素直になれないのは、おまえじゃないのか? 気を遣わないようで気を遣って。損な性分だな」
「ふん、余計なお世話さ」
「さて、うやむやになりかけたが、バイヤーの件、話を聞かせてくれるか?」
「やだね」
べ〜と子供じみた仕草であかんべをすると、名坂警部補と狭間巡査の間をするりと抜けて行った。狭間! と名坂警部補が促すが、まるで追う気もない。
「もういいじゃないですか。また今度にしましょうよ。それより、この壁の弾痕どうしましょう?」
「気にするな。修繕費くらいは私が出してやる」
「いや、そうじゃなくてですね。けん銃の使用結果を報告しないと……」
「なんだ。そんなことか。二、三発なくてもばれやせん。心配するな」
「そんな無責任な。僕の銃で撃ったじゃないですか。どうするんです? 化物退治に撃ちましたなんて言えないでしょう?」
「当たり前だ。けん銃金庫に仕舞うときに、隣の奴の弾を抜いて入れておけ。もっとも、いろんな奴がやっているから、弾の足らん銃の方が多いがな」
「大丈夫なんですか、うちの署?」
などと日常が続く中、平穏を脅やかすような話も。同じ頃、少し離れた場所でのことである。




