第44話 尾行
蜜柑のことは伏せて、五郎が隠し事をしていると相談してみたところ、
「よーし、話はわかった」
と自信満々に応じたものである。
「あたしもね、こないだから気になってはいたのさ。理奈と何か話したに違いないよ。理奈は会ってもくれないし、五郎のやつが話す気がないなら、こっちも相応のやり方で行こうじゃないか」
にやりと笑う千里は悪い顔をしており、面白がっている節がある。相談する相手を間違えたかと後悔の葛音だが、もはや後の祭りだ。美琴、葛音、千里、将吾の四人で五郎の後をつけることとなった。
「なんで俺がこんなことを……」
後をつけながら、ぶつぶつと遠山将吾が不満をもらす。それを聞いて、千里が蓮っ葉に応じた。
「ぶつぶつと、うるさいね。理奈のことだってあるんだ。心配じゃないのかい?」
「そりゃ心配さ。電話にも出ないし、マンションを訪ねても出てこない」
「嫌われてるんじゃないのかい?」
「やめてくれ。千里だって連絡が取れてないんだろ」
「そうなんだよ。解散ライブの日から音信不通でね。だからこそ五郎を追いかけているんだ。あの日、なにかあったんじゃないのかねぇ」
「なにかって?」
「若い男女の一夜の過ちとか」
「まさか理奈に限って……」
不安げな将吾だ。表情は見えないが、横で聞いている美琴の背中もぴくりと動いた。さらに、追い打ちをかけるようにいう。
「理奈に限ってなにさ? あんたは理奈の何なのさ?」
「……ただの幼馴染み」
「だろう? じゃあ、誰と付き合おうが、誰と寝ようが、理奈の自由じゃないか」
「……まあね」
「おっと、そんなことはどうでもいい。ほら、見失わないようについていくよ」
楽しげな千里に、不安げな将吾と美琴が続き、最後に葛音がついていく。
ぞろぞろと歩いていれば、すぐにでも見つかりそうなところ、のんきな五郎はまるで気付かずにいた。コンビニで雑誌を立ち読みしてはグラビアを見て鼻の下を伸ばし、道行く女性に目を奪われてと普段と変わらぬ行動だ。女性陣からの冷たい目に、同じ年頃の男として同情を禁じ得ない将吾は、自分が先頭になった時、わざと五郎を見失った。
なにやってんだ! と千里に頭を叩かれながら、ふと見た路地に、ジジがいることに気付いた。明るい夏の日差しも絶えて届かぬ路地裏で、その黒猫は、金色の両眼を煌めかせて、にゃあと鳴いた。




