第14話 禍つ神
眩しい光に、大きく目を開くことができない。うめき声をあげて身じろぎする五郎に、
「気がついた?」
と声をかけるのは月子さんだ。続けて、その肩に腰かけたくまの人形がいう。
「おう、気がついたか」
手をあげて、元気そうな様子の温州蜜柑だ。人前では人形のふりをしているのだが、
「お、おまえ、どうして?」
「おおっぴらに動いてんのかって?」
ぴょこんと飛び降り、とててっと小走りに、今度は五郎の肩に飛び乗った。
「ここは神さんの湯なんやて。神辺市にええとこがあるとは聞いておったけど、こんなとこにあったとはな。あ、堪忍な、月子はん。こんな近くにて思っただけやで」
「いいんですよ。誰だってそう思いますよね。うちは古い社家から分かれた家なの。代々、神主の家系と思ってもらえば良いかしら。さしずめ私や妹たちは巫女みたいなものね。
ここは気脈が湯となって溢れ出る場所よ。口伝は途絶えてしまって詳しいことはわからないけれど、山の神様からの授かりものですって。昨日と今日、今日と明日との境の時、神様に湯殿を開放してるのよ。なんとも言えない、よくわからないモノも来ますけど。五郎さんに憑く、その子みたいに。蜜柑ちゃんは、穢れから生まれた禍つ神といったところかしら」
「そうなん?」
と、五郎に聞くが、知らんよと困惑げな答えである。腕組みして唸る蜜柑だった。
「わては禍つ神やったんや。知らんかった」




