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え?嘘でしょ?夢なら覚めてくれていいんだよ?

兵科研究室から出てすぐ。

一応周りに人がいないのを確認して部屋に飛んでみる。


「ひょいっと。お、もう慣れてきたかも。声に出さないとまだ怖いけど。」


覚えたスキルは何度も使って体に染み付かせないとね。5回目にして上空1メートルに投げ出される感覚には慣れつつあるかも。ボクって運動神経いいのかな?


まだ昼前。

寮には他の生徒もいないからシンとしている。


シュヴァルツ・クラウンウルフの皮として飾ってあった壁に、今度は新しい漆黒のアンゼケーニヒンを飾ってある。名づけてシュヴァルツ・アンゼケーニヒン。 え? そのままだって? そのままだよ? いいじゃん。


着替えよ。


……明るいうちにこれ着たの初めてだ! あれ? 夜見るよりもコントラストが抑えられて思ったよりも気にならない……かも?


いやね、そもそもの話。これと水着どっちが布地が少ないの? と言われれば断然水着だし、前世だったらこのくらいの格好の人なんて普通にいたんだよ?


痴女痴女言われてるけど、まぁ半分は煽られてるだけってのもわかってるし、ボクが気になるのは胸元だけで、実際”絶対領域”がでているのは正直許せる範囲。

なんかボクが前世でやってたゲームでは”ビキニメイル”なるものがあったけど、あれに比べれば遥かにましだしね。まぁあれ、防具として機能してないけど。


……まぁ気に入ってはいるし、気にしすぎなのもわかってるんだよ?


ただまぁ……。不満があるとすれば、横腹が開いちゃってるのはお腹冷やしそうで嫌なのと、胸元開きすぎて防具として急所が露出してるのはどうなのって事。もちろんそりゃ……視線だって気になるけどさ。……下に着られないならローブの軽い奴でも上に羽織ろうかな? それなら効果も減らないしいいよね。




……そろそろギルドに向かっちゃおうかな? ちょっと早すぎるかな? 結局、一人だけ転移スキルで移動してても、集団行動じゃあんまり意味ないね。

薬類も消耗してないから、買い出しも必要ないんだよね……。




ギルド脇の人通りが少ない場所に、人がいない事を確認して転移する。

いつかはばれるかもしれないけど、わざわざひけらかす事もない。


ギルドの押し戸を開けると、すぐにフラ先生が目に入ってきた。

もう着いてたのね。……早くない?


「お、来たか。ちょっと待ってろよ。今メンツ集めてるからな。」

「うん。」


先生の下に歩いていくと、先生の周りにいた冒険者が興味を示すように近づいてきた。


「あら? あらあらあら?? あの子が噂の超天才ちゃん? ほんと、すぐわかる見た目ね!」

「こらこら、メル。紹介もまだなのに失礼じゃありませんか。」

「え~。いいじゃない。ねぇ? ……かっ可愛いっっ!!」


むぎゅう。

いい匂いがする。


大人の冒険者で背が高い為、抱きつかれるとどうしても谷間に顔がうずまってしまう。

大きさで言えばボクと同じくらいなんだよ?

全然負けてないよ? ……本当だよ?


「あ、あの……?」

「お前に抱きついてるそいつが、メルクーア・パルテンシュタット。見てのとおり魔法士だ。」

「はぁい。」


顔が近い。

紫色のローブに、紫色の魔法帽。


ローブはなんていうか……この人と一緒に歩いてたら、ボクの装備なんてまだマシなレベルの露出具合。だって下腹部から胸までの正中線上が、全部網々になっていて透けてるんだよ? しかも結構広いし……それ、見えないの? 見えるくない……? 絶妙に見えない。


ローブだから、スカート丈は(くるぶし)辺りまであるし、袖も長い。それだけに逆に正中線に目がいくよ……。


……暑苦しいので離れて欲しい。


「ああん。抱き心地よかったのに。」

「その後ろにいる、でかくてごつい野郎がホーラント・ヴィトラーゼ。そんな見た目して神官だ。」

「フラ! そんな見た目してってなんですか。神にお仕えするのには体力も必要なのですよ?」


「わりぃ間違えた。神官でタンクやってる肉の壁だ。人ではない。」

「フラ!! いけませんよ? 人を貶め……」


「うるせぇ。」

「うごぉ……。」


せ、先生!?

次元収納から武器の柄だけ取り出してホーラントさんの鳩尾にクリーンヒットさせている。

とても仲間内とは思えない仕打ち……。


ホーラントさんは、フラ先生の紹介通りものすごい良いがたいをしている。

神官服だろうか。白ベースに青い刺繍をあしらった豪勢な服に、豪勢な帽子。


タンクと言ったら最前線の壁役だけど、あんな布地の服で大丈夫なのかな??

ボクのイメージとしてはタンクと言えばフルプレートなんだけど……。




あれ? ……っていうか集めるって、こんなに人を集めてたの?

それも学園の先輩達とかじゃなくて、先生のクランの人じゃん。

本格的にどっか行く気なのかな?


……何も聞いてないのはいつもの事だけど。


最近思うけど、ボクの周りの人はボクに説明をはしょりすぎじゃない??

シルにせよ、先生にせよ。


「先生? ボク、アルト様が来る事しか聞いてなかったんだけど……?」

「ああ、そういやぁ、あいつまだ来てねぇな。」

「ん? イケシンならさっき嫁迎えに行ったわよ。」


イケシン……?

……………………嫁……? ……え?


「あ? ウルも来んのか?」

「ええ、だって2日遠征するんでしょ? あの子がいたほうが都合よくない? お料理とかお食事とか炊事とかご飯とか?」



……え? 2日遠征? ボク達とは別行動なのかな……?



「飯だけかよ。まぁお前に飯作らせるよりはいいけどな。」

「失礼な! 私はちゃんと栄養を考えてあげてるのよ!?」


「薬草だけで調理したくそまじぃ料理なんぞ飯とは呼ばん。」

「ははは。自分の方がご飯は上手に作れますな!」


ホーラントさんがダメージから回復して胸を張る。

……胸を張ってるホーラントさんの威圧感すご。……壁みたい。


「お前の飯は味がしねぇからいらん。」

「なんと! 自分の作る料理はですな!! ちゃんとけんこっ」


「うるせぇって。」

「うごぁ……」


あ、この人たちいつもこういうノリなのね……。




そんなコントを見せられていると、後ろの押し戸がまた開いた。


「ごめんごめん、遅くなったね。」


「あ、アルト……様……?」

「遅くなりましたっ。」

「イケシンおっそーい。」


「イケシンて誰だよ!」


アルト様の後ろに、小さな女の子がついてきてる。ボクより小さい。背は……ね。


「はぁ? あ、丁度ここに名づけ親がいるじゃない? ねぇレティーシアちゃん?」


「え?」

「あれ?違ったっけ? イケメン紳士ってレティーシアちゃんが言ったのよね?」


「あ……。」


()()メン()()シでイケシンなの!?


ってことはあの子はもしかして……?


「レティーシアちゃん。久しぶり。公園ぶりだね。」

「あ、はい……。」


で、その後ろの人。誰ですか??


「あ、そうそう紹介するね? 僕の奥さんでウルって言うんだ。よろしくね。こんななりだけど、もう大人だからね?」

「あなたに言われたくないわ。童顔あると君。」


へ?

奥さん……?


……え?待って待って。


アルト様、結婚してたの!?


だって薬指に指輪とか……すべての指に指輪してるわ。

魔法具か何かかな??


……ってそうじゃない!




目をぱちくりさせながら呆然としていると、後ろから


「ぷっ……」


と言う声が聞こえた。


ああっ!!! 先生!! 笑ったな!


楽しみとか言ってたのはこういうこと!?

乙女心を何だと思ってるのよ!!

ぜっっったい! 悪い事考えてると思ってたんだよね!!


まさか、こういうことだったとは……。



…………


……


はぁ。萎えるー。


「よ、よろしくお願いしまーす……。」

「う、うん? よろしく?」


テンション低く挨拶をすると、はてなマークを浮かべながら挨拶を返されてしまった。


はぁ。


「どうしたの?レティーシアちゃん。今日はテンション低いね。」

「はぁ。そーでもなーいでーす。」


「え?……そ、そう……?」

「アルト様って何歳なんですかぁ?」


「え? 僕? 35だけど……」


はい!?


え? だって見た目20代中盤にしか見えませんけど?

よく言えばまだ10代にすら見えるんですけど!?


まぁ立ち振る舞い的に? 10代ってことは無いと思ってたし、20代としたって大人びてるとは思ったけど……え? まさかの35歳?? 嘘でしょ??


「えぇ!? ……詐欺じゃん……。」

「ぶっふっ。あははははっ!」


フラ先生が1人で笑い出した。

周りは何事かわからずぽかんとしている。


むきぃ!むかつく!!

何が紹介してやるぞだ!

知ってて言ってたな!?


髪留めにしている魔宝珠に静かに魔力を流す。


ごつん。


「あいてっ……あ!?」


ボクの設置した次元牢獄に気づいたフラ先生がどんどんと空間を叩いた。

周りのメンバーが驚いている。


「え? 何? フラどうしたの??」


突然慌てだしたフラ先生を見てメルさんが驚き、ホーラントさんが叩いてるあたりを確認している。


「……見えない壁があるようですな……? なんでしょうか? これ。」

「ふら!! どうしたの? 何これ?? 敵!?」


一番取り乱したのはアルト様の……嫁……の……。ウルさんだ。


「おまっ! レティーシア!? 洒落になってねぇぞ!?」

「はーい、せんせー。毒ガス耐性訓練のお時間ですよー? 何分耐えれるかなー?」


発生点を次元牢獄の中に設定して”酸素”を注入していく。


「おい! マジで洒落になってねぇよっ! わ、わかった! 悪かったって!」


無表情である。

ふふふ。少しくらい痛い目に合うといいんだよ……


ボクが許す気がないと悟ったのか、先生が臨戦態勢に入った。どうにかして壁を破るつもりらしい。


「精霊武装!」


はい、ざんねーん。炎は逆効果でーす。


どん!!!


という音と共に大爆発が起こる。


次元牢獄の中で。


「ぶはっ……。」


精霊化が一瞬で解けた先生が真っ黒な煤に塗れて煙の中から現れた。


「ねぇ? せんせー? はんせーした? ……ねぇ?」

「す、すまな……かった……。」


「……じゃぁ出してあげようかな……。ボクってやさしー。」


次元牢獄を解除すると煙と熱気が放出される。

酸欠になった先生がその場に倒れこんだ。


まぁ酸欠にしたのはボクじゃなくて、先生自身なんですけどね?

慌てたウルさんが介抱している。


まぁ倒れたといっても膝を突いた程度だけど。

ざまぁみろだよ。


「い、今のレティーシアちゃんがやったの?」

「な、何の魔法であるか??? 自分達でも見たこともないが……。」


今度は初めて会ったメルさんとホーラントさんが目をぱちくりさせていた。


「あはは……レティーシアちゃん怖すぎ……。」


アルト様に若干引かれると、なんとも心にダメージがのしかかるんですけど。

……はぁ。何してんだろ、ボク。


「こいつ怒らせたらこえぇわ……。」

「うわぁ。フラが打ちのめされてる所、初めてみたかも……。レティちゃんすごーーい!」


むぎゅう。


あ、そういえばこの人たち、こういうノリだった……。


「自分にも是非フラに仕返しするそれを教えてほしいであるな!!」


ええ!?

フラ先生に仕返しする為に次元魔法をマスターするのもなんか違う気がする……。


「お前らな……。ちっ。とりあえず今日暇してるメンツはもう集まったんだ。クエスト行くぞ。クエスト。レティーシア、お前はちゃんと槍使えよ!」

「はーい。」


「あれ?レティーシアちゃんも兵科武器を使う事にしたのかい?」

「……はいっ。」


「えっ?」


ぷいっ


……ああ、アルト様は何にも悪くないのにそっぽを向いてしまった!!


いけない。こんな無愛想ほんといけない。


こんなボク全然可愛くない。


はぁ。


まぁ別に? ちょっとかっこいいなーとか?

つり橋効果的な??

困ってるところにちょ~~っと華麗に現れて?

いい人だなーとか?


思ってただけだし???


好きとか好きじゃないとか?

そーんなんじゃないし??


ああ! なんかもやもやする!!




はぁ。なんか1人で空回りして。ばっかみたい。

リンク様もあの時、こんな気持ちだったのかなぁ。


……いや、ボクよりちゃんと伝えた分、リンク様のがすごいし、リンク様のが辛かったか。

……すごいなぁ。はぁ……。



今度からはもうちょっと優しくしてあげよ。





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