和解したら友達ができたよ!
ボクは今、イリーア達を待って学食にいる。
アレクと2人だ。こんなところ今までイリーア達に見られていたら嫉妬の対象だったはずなのに、その本人達がボク達2人をここで待たせているのだから今までの確執はなんだったのか。
「アレクとお買い物に出るのって初めてだね。」
「そうだね。レティもよくやるよね。あの子達を手なづけちゃうなんて。」
「ん~? ……なんのことかな?」
「あの子達、少なからずレティに嫉妬してたはずだからね。一瞬であれだけ変化があれば、流石に僕だって気づくよ。君が何かしたんだってね。」
だからこれまで突っかかってこなかったのね。
シルが近くにいたって言うのもあるのかもしれないけど。
「ふふ。アレクが抑えててくれてたの?」
「あ……いや……そんな大したもんじゃない……けど。」
「あらあら。お二人は仲がよろしいのですね。」
一緒にした本人のイリーアが合流した。
今までとは態度こそ違うものの、やっぱりボク達が仲よさそうに話しをしているのには嫉妬するらしい。
それでも今まで可愛いとは思えなかった嫉妬も、こんな感じならまだ可愛かったのに。
「あ、イリーアさん。今イリーアさんのお話をしていたんですよ?」
「えっ? そうなんですか……?」
「ね? アレク様?」
「あ……え? ……あ、うん……。」
「ま、まぁ……! そ、そうだわ。皆さんがお待ちですのよ。……後でどんなお話をしていたのか教えてくださいませね?」
「もちろん! イリーアさん喜ぶと思うなぁ!」
「……えぇ……えぇぇ……。……よくやるなぁ……。」
呆然としているアレクを置き去り気味に、イリーアやキーファ達と共に王都に買い物に出かけた。
機嫌を良くした彼女達と仲良くなるのはとても簡単だった。
簡単だったなんていうのも失礼かな。
こんなに沢山の石鹸やお洋服を買ってくれたのだから。
そもそもボクだって敬遠して話すらしてこなかったんだもん。
それじゃあ結局仲良くなんて、なれるはずもなかったんだよね。
こんなにも簡単な事だったのに。
実際、新しい友達との買い物はとても楽しかった。
いつもとは違う話、いつもとは違う空気感に、いつもとは違うメンバー。
「イ、イリーで良いですわ……。」
「あ、じゃああたしもキーファで! レティって呼んでもいいの?」
「うん! もちろん! 今日は本当に楽しかった! こんなにいっぱい買ってもらっちゃって……ありがとうございます。いつか出世払いでお返しするね!」
「別にいいわ。国民に奉仕するのは貴族の務めですわ。」
「ちなみに、今のイリーの通訳をすると、友達にプレゼントをあげるのは楽しい! だよ!」
「こ、こら! キーファ貴女!」
「じゃあ今度はボクも頑張って稼いで皆にプレゼント買わないとね。」
「何かアルバイトでもしていますの?」
「冒険者ギルドでクエストしてるんだよ? 生活費も稼がないといけないし。」
「大変なのね……。いつもシルヴィア様と一緒にいらっしゃるようだけど……。」
「あ、シルにはね? 良くして貰ってるんだ。でも自分の事は自分でやりたいから。」
「そ、そう……。しっかりしてらっしゃるのね。」
「アレク様にも子供の頃に助けて貰ったしね。ね?」
付いてくる置物状態と化しているアレクにも話しを振ってあげる。
彼女達が一番誤解している部分を説明しないといけないからね。
「あ、ああ。うん。」
「え? レティはアレク様と小さな頃からお知り合いでしたの……?」
ほら、やっぱり。
「うん? そうだよ? アレク様から聞いてない?」
「聞いてませんわ。何故教えてくださらなかったのかしら?」
「え、っと……いやぁ……言うタイミングが……ね?」
「そう。だからあんなに親しそうでしたのね……。」
「9歳の頃に会わなくなってから、この学園で再会したの。そしたら王子様でね。びっくりしちゃった。」
「当時はご身分をお隠しになっていらっしゃったのですか?」
「あはは……。」
「そうなの!教えてくれなかったんだから。酷いと思わない? ねぇ?」
「ふふ。アレク様のことですから、何か理由があったのでしょう?」
「そうなの?」
アレクはもうさっきからたじたじでほぼ会話になっていない。
「ふふ。私は許婚ですもの。アレク様のことならなんでもわかりますわ。」
「……え!? 許婚!?」
「え、ええ。ご存知無かったのですか?」
「し、知らなかったよ! イリーってすごいお嬢様だったのね!」
「い、いえ。私はそこまでではないのですわ、でもアレク様が子学校に一緒に通ってるうちに……。」
イリーの顔が真っ赤に染まった。
えええ?! ど、どういうことなの?
ボクはグリエンタールでアレクの気持ちとか知っちゃってるんだけど……。
顔面蒼白になったアレクは水を失った魚のように口をパクパクさせて固まっているけど、どういう反応なのよ、それ。
確かにこの世界で王族が妃を1人しか持っちゃいけないなんていう規則もないのだから、王が色にまみれていようが問題ないんだろうけど……。ボクは流石に奥さんの1人ってポジションは嫌かなぁ。そっかぁ、アレクって意外と誑しだったのね。
あ、よく考えたら子学校に一緒に通ってるうちって、アレクがボクと会わなくなった時期と一緒だ。
なんだ、そういうことなの?
……それなら先に言ってくれれば祝福したのに。
「ええ! ごめんね、ボクそんなこと全然知らなくて……。じゃあイリーは未来の王族様なんだね。すごいなぁ。」
「イリーが結婚したら私も取り入ってもらわないと!いい男でも連れて来て欲しいわ!」
「あはは、キーファもイリーと昔から仲がいいの?」
「ううん、私は貴族学校の3年目からイリーと仲良くなったの。だからまだ1年くらいの付き合いよ?」
「へぇ、あれ? 他のみんなは?」
「あ、皆さんは先ほど王都から戻られる途中で帰られましたわ。おうちの方向が違うの。」
「2人はこっちでいいの?」
「ええ、イリーと私はこっちよ。レティを寮まで送ってからアレク様に送ってもらうから安心して!」
「あらぁ!仲がよろしいことで!」
「仲がいいのは私じゃなくてイリーなんだけどね!」
帰り道、アレクは殆ど声を発しなかった。
どこか見た感じ石化しているような。
なんかピシっていう音が聞こえてそこらへんに亀裂が入っててもおかしくない固まり状態。
アレクの気持ちは知ってるけど、イリーの許婚発言を訂正もしなかったってことは、多分これも本当。それなのにこんなに固まってるって、どういう過去があったんだろ?
気にはなるけど、まぁいっか。
アレクの気持ちは一方的に知ってるってだけで、ボクから言う事でもないし。
ボクとしては今日お友達が増えた事の方が重要だ。
その後、3人に寮まで送ってもらって帰ってきた。
始めは正直、自分を作っていたんだよ?
子供の頃から”可愛い自分”を演じるのは得意だったからね。
どういう結果になるかなんてわからなかったけど、波風立てないように、うまくいくようにしてみたら意外や意外。好感度が反転するくらいには仲良くなれたみたい。
一緒に話をしていたら、なんてことはない。
ボクと同じ15歳の女の子だった。
ただ単純に、アレクという王族に対して礼儀を知らない無礼な平民。
アレクが優しいのをいいことに付け上がりやがって!
……っていう認識だったんじゃないかと思う。
でも、その誤解もボク達が昔からの知り合いだったってことが判って、今日解けたわけだしね。
誤解も解けたなら仲良くなれないはずもないのだ。
ボクに対して、あまりいい感情を抱いていない人が他にもいるのは百も承知。
でも、ここでは仲良くなれたのだから、きっとこれからも皆と仲良くすることだってできるよね。
まぁ今回で一番の障害も取り除けたわけだし。
明日からはこんなくだらない事に気を使う必要もなくなるんだ。
……その懸念がなくなったら、シルが寮から出て行かないかちょっと心配になってしまった。
ああ、何がどうなっても心配事が尽きないよ……。
がっくし。
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