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シルにもちゃんと伝えるよ。

「……そう……だったのね。」

前世の記憶があることや知識を活用できることを話していると、シルは考え込んでしまった。

ちょっと不安になる。

「あ、先生はね？　誰でも使える銃っていう部分で気づいて話してくれたみたいなんだよ？」

賢王の口伝と共通する部分を持ち出して確認してみる。

「あ、別にレティの言ってる事を信じていないわけじゃないわ。むしろ私(わたくし)はそうじゃないかって薄々思ってはいたのよ」

「え？そうなの？」

「貴女、私(わたくし)が買った服を何の迷いも無く着こなしているじゃない？　今まで平民だった子が、なんでこんなに見た事もないはずのファッションに詳しいのか疑問ではあったのよね。着方まで知っているようだったし」

「え……？　だって見ればわかるじゃない？」

「見れば判るのは、貴女が見た事があるファッションだからでしょ？」

「え？　どういうこと？」

「レティはグルーネの王都や大きな街だけこの世界や、さらには国の中ですらファッション性が全く違う事に違和感を感じなかった？」

「あ、最初は流石王都！　進んでるんだなーとか思ってたかも」

「下着を初めて見たのに、その用途もつける意味すら知っていたのでしょう？」

「あっ言われてみれば……。普通にあってよかったと思ったけど、知らなければ何これって反応が普通なの？」

「そうよ。そして、こういうファッションを広めたのは賢王なのよね」

「え？　だって賢王って男の人だよね？」

ま、まぁ前世のボクも男だったわけですけどね？

……お、男だったからこそ女性の下着にも興味くらいはね……？ほら。

「ええ。だからなんじゃない？　賢王は奥様の事を溺愛していたそうだから。自分の思うように服を作って、奥様にプレゼント。それを着た奥様が王妃として公衆へ出て、それが噂になってどんどん普及していったのよ」

「下着まで？？」

「そうよ？　だって製作するにはお店を通すでしょう？　用途と効果を聞いて作れば、売れるかどうかなんて気づくわよ。まぁ、賢王は扇情的な下着も作らせていたようでしたけどね。」

「シルがよくつけてるような？」

「あら？　興味があるの？　私(わたくし)は扇情的な用途に使うことはないのよね。ただ単純にデザインが好きなだけ。着けている人の方が少ないのだし、誰に見られるわけでもないからいいのよ。あ、レティが夏休みにご家族を連れてらしたら、弟君にでも使ってみようかしら？？　効果あるかしら。心配だわ」

「え、え！？　ええ！？　だ、ダメだよ。シルにそんな事されたらジーク倒れちゃうから！？効果しかないよ！！」

このままじゃ尻に敷かれるどころじゃないよ！

ジークがお人形さんになってしまう。

「あら、いいじゃない。押し倒す手間も省けるわ」

「ど、同意がないのはどうかと思うなっボク！」

「ふふ。冗談よ」

「ほんとに冗談かなぁ……」

シルがジークのこと以外で冗談言ってるところ、見たことないんだよなぁ……。

「まぁ、そういう不自然な事が、意外に多いのよ？　貴女」

「そ、そうだったんだ……」

「最大に不自然な点は、貴女、頭良すぎよ」

「へ？」

「貴族学校どころか子学校にすら行っていなかった様な、教養も受けたことがない平民の子が、いきなり魔法学園に入ってきて、授業の質が追いついてないから授業に出ないなんておかしすぎるわよ。幼い頃から家庭教師をつけている貴族とは違うのよ？不自然すぎるわよ」

「そ、それはほら、幼い頃から図書館にね？　行ってたから大丈夫かと……」

「それでおかしくないわけないでしょう？　大体3歳から自主的に図書館に通うって何よ？　しかも片道5時間掛ける道のりで？　その時点であからさまにおかしいわよね」

「だからね？　貴女に強引に服を買ったのは、そういうところを見ておこうかっていう部分もちょっとはあったの。実際、イオネはたまに間違った着方をしているわ。気づいた？」

「あ、そういわれれば、こないだイオネちゃん、下に服着るタイプの服を何も着ずに着ちゃってたね。」

自分が着ないままだと普通の服に見えるんだけど、意外に肌を通すと肌色が下から透けちゃったりする服って結構あるんだよね。わざわざ注意書きとかされてるわけじゃないから、知らずに買っちゃうと恥ずかしい事になっちゃったりね……。

「ああ、あったわね。流石に見えちゃってたから私(わたくし)が言って下に服を着させた時よね。あのくらいの理解度が普通なのよ？　初めてだったら」

「な、なるほど……。もうちょっと気を使うようにしないとかな？」

「そうね。万が一バレて事件に巻き込まれるなんて、どうせろくなことではないもの。そうでもなくても何かと問題を起こしやすいのに」

「確かに……。ってえ！？　問題を起こしやすいのはボクじゃな……」

「貴女よ」

「え……」

ええ？！

ボクじゃないよ！

フラ先生とかのせいだよね？！

「そういえば、こんな話ついでに聞きたいのだけれど、前にギルドで新人の冒険者を2人連れてクエストに行ったことがあったじゃない？」

「あ、うんクアルとルアちゃんのこと？」

「そうそう。あの時、貴女やけにクアルに告白をするように迫っていたけど、あれも前世の知識なの？　あそこでわざわざ告白させることに意味があるとは思わなかったのだけれど」

「ああ、死亡フラグの時ね……」

「死亡フラグ？」

「そ、これをすると死んじゃうよっていう行動でね？　まぁ迷信みたいなものなんだけど。これが意外にこの世界では馬鹿にならなくって」

「何がいけなかったの？」

「あの時は、帰ったら告白する！　っていう行動かな。よくあるじゃない？　男の人が、この冒険から帰ってきたら、君と結婚する！　とか言っちゃって戻ってこない物語とか」

「ああ、あるわね……。でもそれだけで……？」

「うん。実際あの後、ボクがあの2人と一緒に採集していなければ、多分あの2人はあそこで死んじゃってたと思うよ？　そのいるいないが、フラグをちゃんと折ったか折ってないかだったんだと思うな」

「それは、世界共通なのかしら……？　それなら大変なことなのだけれど」

「ううん、多分グリエンタールのせいだと思う。このスキルは前世のゲームだったんだけど、フラグ管理が重要だったから。その名残なんじゃないかなぁ」

「げ、ゲーム……？　フラグ管理……？　ちょっと私(わたくし)にも理解が及ばなくなってきたわ。とにかく、レティと一緒にいる間は、そのフラグとやらに気をつけるって事ね」

「そうだね。変なフラグが立ったら教えるね。シルにそんなフラグが立ったら、ボクが命を賭してでも守ってあげるんだから！」

「……それは遠慮しておくわ。私(わたくし)は貴女が死んでまで守って欲しくはないもの」

「え～。平民が公爵様のお命をお守りする！　なんて燃えるシチュエーションだと思うのになぁ」

「私(わたくし)はまだ家督を継いだ訳ではないわよ？　それに、私(わたくし)なんかよりもレティに生きていて貰ったほうが国益の為だわ」

「ええ～？　シルは国の事ばっかだよ！　シルが死んじゃったって国のために絶対ならないんだからね！？　わかった。ボクも死なないし、シルも護る。それで解決！」

「ふふ。そうね。じゃあ貴女が死んだら私(わたくし)も死んであげるわ」

「えぇ！？　シルゥ～それは重すぎるよ～……」

「あら？　これもそのフラグとやらに引っかかるのかしら？」

「それはね！　ヤンデレっていうんだよ？？　貴女を殺して私も死ぬわ……！　みたいな？」

「なんで私(わたくし)が貴女を殺さないといけないのよ」

「伝えるのが難しいよ～……」

「よくわからない世界ね。ま、私(わたくし)の疑問が一つ減っただけでもよかったわ。後、もし賢王が伝え切れていないファッションなんかあれば、私(わたくし)に教えてくださる？　アルカンシエルにでも言えばすぐに作って貰えそうね」

「おぉ～！　欲しい服かぁ。ボク、前世は男だったし、ずっと病院にいたからそんなに知らないかも」

「え！？　男性だったの？」

「あ、うん。やっぱ嫌？」

「い、いえ、前世の話だもの。関係ないけれど……。な、なんか少し恥ずかしい気もするわね」

「シルの前世だって男だったかもしれないよ？」

「そ、そうよね……。でも記憶が残ってるのとそうでないのは違うわよ……」

「まぁ確かに」

「……ならレティと結婚するのもありかしら……？」

「待って！！　シル！？　ボクは今は正真正銘女なんだってばぁ！！」

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