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聞いてたよりも採算度外視品でした・・・。

「ありがとうございました!」


新しい装備は、着慣らしておいた方がいいといわれたので、そのまま着て帰ることになってしまった。


「ね、ねぇ大丈夫? ボク捕まったりしないよね?」

「大丈夫だろ。そのくらい問題にもなりゃしねぇよ。大体夜道なんだ。暗いし見えねぇんじゃね?」


「そうかなぁ。」


「流石にワシも着ていて捕まる装備など作らんわい。それにそれくらいの露出の軽装備など結構ざらにあるぞ。スタイルに自信のある若い女なんかは見せたがりが多いからな。」

「……ボクにそういう趣味はないからね!?」


「ん? そうなのか? まぁ恥ずかしがってると逆に目立つぞ。」

「そんなこと言われても……。」


まぁ諦めるしかないか。

あまりにも視線を集めてしまうようなら、普通にこの上に羽織る物でも考えればいい。実戦で邪魔なら脱げばいいだけだしね。

まぁそれで突然こんな装備になって味方の気を逸らしてしまうんじゃ、本末転倒なんだけどね?


「ね、ねぇヨルテさん。ちなみにこの防具、買うとしたらいくらくらいになるの?」

「はぁ? 素材の持ち込みもなしでか?」


「うん。」

「あん? その胴具か? 買えんぞ。買えるわきゃないだろ」


「うん?」

「どんなに偉い貴族だろうが、王だろうが、歴戦の勇者だろうが、素材が手に入らないんじゃ売りようがないだろ? まぁ無理やり値段をつけるとしたらなぁ。王貨よりも価値はたけぇだろうなぁ」


「王貨? そんな貨幣があるの?」

「ああ、流通する貨幣じゃないからな。王が国の為に功績を成した物に送る贈答品みたいなもんだ。むか~し王貨を頂いた本人が行方不明になってな? オークションに流れたことがあんだけどよ。そん時の落札額が金貨150枚くらいだったから、王貨の価値は金貨150枚ってことになってんだよ」


「金貨150枚!?」

「ワシが売るならそれよりは高く売るが、多分すぐ売れるだろうな」


「すぐ売れるの? 金貨150枚以上で???」

「ああ。嬢ちゃんみたいに全身防具にする必要がないからな。素材の大きさに合ったような、もっとマシなモン作りゃ余裕だ。もうソイツの持ち主は嬢ちゃんだからどうしようと構わんが、ソイツは嬢ちゃんにあわせてあるからな? 他人にとって価値は下がるし、2度と手にはいらんぞ?」


あ。そっか。

そもそも素材が全身分もないのであれば、上半分とか下半分だけで済ませてもらえばよかったんじゃん。それを先に言って欲しかったよ……。


「う、売らないよ……?」

「大分遅くなっちまったな。帰るぞ。レティーシア」


「あ、先生待って。じゃあヨルテさん、ありがとうございました。ナクアさんにもよろしくね!」

「ああ、また来いよ。珍しい素材が手に入ったらワシのところに持って来るんだぞ」


流石親子。同じ事を言ってるね。


「は~い」



既に歩いて行ってしまっている先生に早足で追いつく。

流石にこの服で1人で歩いて帰る度胸はボクにはないんだよ?


っていうか、皆おかしいんだよね。ショートパンツにTシャツで街を歩くのと、こんなに穴の空いて胸元が露出されて、脇から腕には何もつけていないような装備と、同じ気持ちで外を歩けるわけないでしょ……?




王都の夜は色々な街明かりで溢れる。

魔道具で灯す明かりが、内包されている魔水晶によって変わるから。


明かりの種類に気を使って、一色で統一している街並みも、そんなことはせず思い思いのまま色々な光が煌く街並みも、どちらも綺麗だと思う。


……


あれ? 王都って夜暗くなくない……?


全然見えるじゃん。

めっちゃ見られてるじゃん!


ちょっと!!

言っておきますけど、女の子は男共がどこ見てるのかわかるんですからね!?


くぅ。先生の嘘つき。先生のそういうとこ!よくないと思います!!!


こちらを向こうともしない先生の背中にビンタをしてあげる。

べチン!という音が鳴り、周りの注目を集めた。


「いてっ。何すんだよ。」


先生の胸が揺れた。

あれ? 先生、今日サラシつけてないのかな?

ボクに向いていた視線も先生のほうに向いている。


ざまぁみろっ!


その隙に先生を1人取り残し先に帰ってあげた。

先生も少しはボクの恥ずかしい気持ちをわかればいいんだよ。


……あの先生がその程度で恥ずかしいとかなるわけないか。



寮に着くと、既に明かりが点いているのが見えた。シルはもう帰って着てるみたいだ。


「ただいま!」

「おかえり。今日はどこに行ってた……の……?」


「防具を作ってもらってきたよ!」

「え、ええ。見ればわかるわ。随分とその……動きやすいものにしたのね」


あきらかにシルの視線が、ボクの肌を巡回している。


「ちょ、シルのドレスなんてこれより大胆なのに……」

「ドレスと装備は用途が違うわよ。でも装備もやっぱりそれくらい動きやすさを重視した軽装があるのも確かね。まぁレティがまさかそういう装備にするなんて思ってもみなかったから、ちょっとびっくりしただけよ」


「うん。フラ先生連れてってアドバイスを貰ったんだ」

「ああ、あの人を。まぁそれならなんとなく納得できるかしら。……にしてもそこまで白色と黒色がはっきりしちゃうと、どうしてもレティの白い肌に目がいっちゃうわね……」


「うぅ、やっぱり? 先生にもそういわれたんだよね……これ、最初は青かったからそこまで気にならなかったはずだったんだけどね……」

「そうなの?」


「うん。先生に相談してたら、途中でそこに飾ってあったシュヴァルツ・クラウンウルフの皮を素材に使ったらどうかって話になってね?」

「ああ、それで無くなっているのね。盗まれたんじゃないかと少し心配したわ」


「そ。それで真っ黒な装備になっちゃったの」

「なるほどね。ちょっと見せてもらっていい?」


そういうとシルがところどころを引っ張ったり触ったりして確かめる。

たまにあたるシルの指がくすぐったい。


「あら。これ、すごいわね。特注なの? 素材持込といっても貴女の手持ちじゃ無理でしょうに。フラさんにでも借りたの?」

「ううん。素材持ってったら加工費はタダでいいって。端材はあげたんだけど、そしたら他の素材の費用も要らないっていってくれたの。」


「え? だってこれ、黒天鋼じゃない? 赤い装飾は赤夜銀よ……?」

「あ、そうそう。こくてんこー? はサービス? って言ってた。せきやぎん? ってのは何も言ってなかったけど……。お高いの……?」


「お高いなんてもんじゃないわよ。これ、肩当てに使われてる素材部分だけでも金貨40枚は余裕でかかるわよ? 全部含めたら金貨で100枚は下らないわ。」

「ええ!? だ、だってヨルテさん、この装備売るなら金貨150枚って言ってたよ!?」


「それってもしかして胴具って言ってなかった?防具じゃなくて。多分、胴の防具だけの話よ? 流石に鍛冶ギルドの長が価値を間違えるはずないもの。総額金貨250枚以上の超一流装備ね。これ。これなら難易度指定がZ以上のダンジョンに眠ってる装備でもない限り変える必要もないくらいね」


「そ、そんなすごい装備なの……? でもその……なんていうか、肌が見えすぎて着づらいっていうか……。」

「そんなの下に何か着れば……ああ、確かクラウンウルフ種の素材の特性って肌に直接着たほうがいいのよね。……諦めなさい」


「ええ?! そんなぁ」

「それくらいの価値はあるわよ」


「後、前に買ってもらってあった上下一体式の防具用の下着も買ってきたんだけどね……」

「価値が違いすぎてそれを着けるタイミングがないわね。普段着にでもしたら?」


「まぁスカートが短いだけで、動き回らなきゃ見えないから普段着なら使えるんだけど……普段着にしたら重すぎるよぉ」

「しょうがないわよ。ヨルテさんって鍛冶ギルドのヨルテさんでしょ? 今度からちゃんと懇意にしておくのよ? 流石に王都で一番の鍛冶屋さんとは言え、金貨100枚は安くないでしょうから」


「うん、もちろんだよ」


よくよく考えてみると、金貨250枚って銀貨に換算すると……1万6000枚??

えっ?? 豪邸というかお城が建つんじゃない……?


えっ……??



……



見ちゃいけない現実って……あるよね。

うん。


し~らないっ!




流石に部屋で防具を着ているのは違和感がある。

ボクも部屋着に着替えていると、ふと思い出した。


「あ、ねぇねぇシル。」

「なぁに?」


机に灯っている僅かな明かりで、何か書類をまとめているシルに後ろから話しかける。

この学園には滅多に宿題や課題なんてものはでないから、生徒会か、それともお家関係のお仕事かな?


「賢王の口伝って知ってる?」

「え? なんでレティがそんなこと知ってるの?」


「フラ先生に教えてもらった」

「そうなの……? 別に門外不出って話しではないけれど、あまり一族以外に話すことでもないのよね……」


「あ、うん。ちょっと先生と話してたらね。そういう話になってね?」




先生にも話したのにシルに話さないのは友達としても、お世話になっている恩人としても、なんか違う気がするので、話していなかった転生前の記憶のことについて話しておこうと思う。


賢王の口伝があったお陰でとても話しやすくなったしね。


今度イオネちゃんにも話そうかな。

流石にシルが信じていればイオネちゃんも嘘だなんて思わないだろうし。





これでボクが親しい友達に隠して……いたわけじゃないけど、なんとなく言えずに胸の奥につっかえていたものがなくなる。


シルに話していると胸がすっきりとしていった。


先生は次にボクの能力のことを誰かに言う時は、自分の身を守れるようになってからだ。なんて言っていたけれど、きっとボクは誰かに自分の事を話すのなら、自分の身を守ったりはしないと思う。

だってボクはシルに殺されたって後悔しないもの。シルがそうすべきだと思ったのなら、多分ボクは納得しちゃうんだろうな。


きっと、次に誰かにボクの事を話すなら、こういう想いを持った人に話せばいいんだ。


なんだ簡単な事だったな。




ま、今話しているのは単なる転生の記憶のことだから、そんな秘密とか能力とか。殺すとか殺されるとか。そんな話とは無縁……のはずなんだけどね。




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