先生に講義します!
「……はぁ? さ、酸素……? 空気は色んな物質がまざってるのってのか……? 何も見えんが?」
「先生はなんで火が燃えるか知ってる? なんで水をかけると消えるかわかる?」
「それがわからねぇから聞いてるんだよ」
「炎っていうのは、燃焼物が発火点の温度まで上昇した時に酸素と化合して起きる酸化現象なんだよ?」
「ねんしょ……さん……え? 何?」
「まぁそうなるよね。う~ん、例えばね、炎の魔法構造はこう描くでしょ?」
炎元素魔法構造を部屋にあった羊皮紙に書き出す。
「ああ、そうだな」
「先生、空気を魔法で作れる?」
「うん?空気を魔法で作るのか? わざわざ?」
「そう、わざわざ作るの」
「まぁ水中でお前にもかけたが、空気を圧縮して呼吸ができるようにする魔法があるからな。辞書で調べりゃでてくる……ああ、これでいいのかな」
先生が魔法構造を書き出した。
余分な記述を消していく。
「これが魔力を酸素に変える魔法構造式だよ」
「酸素?」
「そう。空気中にあって、物が燃える原因だと思ってくれればいいよ」
「あ、あぁ……」
「じゃぁ、その炎の魔法構造と酸素を生成する魔法を二重構造で描いてみて?」
「描いてって……構造陣を足すのは……ええっと、こうか?」
「あ~そうそう。大体正解。ここの線はこっちだけどね」
「で?」
「これが水中で炎を出す魔法構造だよ?」
「は?」
「まぁこれは本当に炎を水中で出すだけだから、ボクが使ってたような水中で高温の炎使って魚を焼くのは別だけどね。あっちはもっと複雑だから」
「あ、あぁ。この魔法構造コピーしといていいか? 今度試してみてぇな。」
「もちろん。」
「お前、こんな知識どこで習ったんだ?」
「う~ん。習ったというより読んだから独学かなぁ」
「こんなことが書いてある書物が存在するのか?!」
「あーごめん先生、書物はないかも」
「じゃあレティーシアはどこで読んだんだ?」
「前世」
「はぁ? 前世?」
「そ、前世。ボク、なんか前世の記憶があるんだよね」
「前世ってあれか?自分が生まれる前の人生ってやつか?」
「うん。多分そんな感じ?」
「ってことは今より昔じゃねぇか。そんな昔にはこんな書物があったってのか?」
「ううん。多分そもそも世界が違うんだと思う」
「……世界が違う?」
「うん。まぁ信じられないかもだけど、違う世界。魔法の無い、科学の世界」
「魔法の無い世界……? ずいぶん暮らしにくそうな世界だな」
「ううん。むしろこっちの世界よりずっと暮らしやすかったかも」
「はぁ? 魔法がないのにか?」
「そう。魔法がないから、皆頭を使って努力するんだよ。いい生活が出来るように。そして世界の理をどんどん解明していった世界」
「世界の理……?」
「なんで火が燃えるの? とか。なんで水で火が消えるの? とかね。そういうのは全部実証できるんだよ?」
「そんなことができるのか……? でも世界が違うなら、ここの世界でも通用するとは限らねぇんじゃねぇじゃねぇか」
「うん。だからボクが立証しているんだよ? 現状、魔法がある事以外全部ほぼ一緒かな」
「そうなのか。魔法がないんじゃ戦争や戦闘はどうするんだ? 皆武器なのか?」
「ううん、皆が使える魔法のような銃器が開発されるの。誰でも指一本で金属の塊を高速で飛ばして、人や魔獣も簡単に殺せるような武器を」
「皆が使える銃……な。ああ。魔法より便利だな」
「魔法には魔法のいいところがいっぱいあるから、どっちがいいってわけでもないんだけどね」
「なぁよくわかんねぇけど、その世界の記憶がお前が生まれてきた時にはあったんだな?」
「う、うん。先生、よくこんな意味のわからない話についてくる気になったね? 話してる途中で意味がわからん! って言われて終わると思ってたよ」
「ああ、だってその話。賢王の口伝にあるからな」
「え?」
「賢王は多分、お前と同じ世界からきた人間だぞ。お前は記憶があるだけみたいだが、賢王は体ごとこの世界に迷い込んだって話だ」
「え?! ボク以外に転生……じゃない。転移してきた人がいたの!?」
「転移っていうのか? 誰にも信じて貰えず、誰にも本気で話さなかった話っていう前置きでな。賢王の奥さんだけに本気で話して、奥さんだけは信じてくれたんだそうだ。だから賢王の一族には口伝で伝わってんだよ。お前が今語ったような世界の話。鉄の塊が空を飛び、魔法の銃が誰でも使える世界だろ? シルヴィアも知ってるはずだぞ?魔法がない世界だっつーのは知らなかったけどな」
「そう! 飛行機ね! うわぁボクより先にこの世界に来てた人がいたんだ! なんか嬉しいなぁ。」
「それだと腑に落ちることがすげぇあるんだよな。色んな知識がこの世界よりも進んでることとか。お前が賢王に似てるわけだわ」
「会ってみたかったなぁ」
「もうずいぶん前に亡くなったよ。あたしが生まれる前の話だ」
「そうだよねぇ。ボクと賢王さんの他にもいないのかなぁ?」
「どうだろうなぁ? ただ賢王のそういう話は、奥さん以外誰一人として信じてくれる人はいなかったんだそうだ。賢王が仲の良かった5人の賢者ですらな。だから少なくとも賢王の時代にはいなかったんじゃねぇかなぁ。今はわからん。いるかもしれねぇし、いねぇかもしれねぇな」
「そしたらボクみたいな感じになってるだろうから、すぐわかるかもね」
「ちっ、お前と同じ能力の奴がエリュトスにでもいたらやべぇんだけどな。すぐに情報は集めた方がいいかもしれねぇ。探しておくか」
「ボクの記憶のことは余り人には言わないでよ? どうせ信じても貰えないけど、あんまり人に話したい話でもないから」
「ああ、言わねぇよ。言うメリットがねぇ」
「あ、後、ボクのステータスが高いのは前世の知識のせいじゃないよ?」
「は? じゃぁなんでだ?」
「ボク、特殊体質があるって言えば伝わる?」
「……なんというか例外で異常すぎて理解がおいつかねぇな……。んで、どんな特殊体質なんだ?」
「アルビノっていう体質。ボクの体が全身白いのは、これのせいなの」
「へぇ。そうなのか?白いだけなのか?」
「ううん。こんな感じだよ?」
先生にアルビノの固有技能をすべて説明する。
「……あ~……はぁ。あたしは今すげぇ岐路に立たされてる気がする。」
先生が疲れたような仕草で顔を覆ってしまった。
突然どうしたんだろう?
「?」
「お前を今、この場で殺すべきなんじゃないかってことだよ」
「……はぁ!? 先生何言ってるの!?」
「安心しろ。そういう判断をしねぇから言ったんだよ」
「え? じゃあそんな判断されてたらボク殺されてたの!?」
「そっちの判断をあたしがする確率はねーよ。もちろんはなからその気は無ぇ。でもよく考えてみろ。お前のそのスキルはやばいだろ。やばいとかいう次元じゃねぇ。今はそこまで能力はないかもしれねぇが、この先どんどんスキルを増やしてってみろ。お前は1人で世界の軍隊すべてを滅ぼせる脅威になるぞ。それなら手の出せる今、この場で、やるしかない。そう考える奴はいてもおかしくねぇだろうが」
「う、確かに……?」
「まぁシルヴィアあたりにそれとなく言わないように注意されてたんじゃねぇか?」
「うん。シルに本当に信じられる人で無い限り話すべきじゃないって言われた」
「そのとおりだな。むしろ今は信じられる人でも話すべきじゃない。次に誰かに話す時は、お前が自分の身を相手がどんな奴だろうが守れるようになってからだ」
「う~ん、とりあえず話す人もいないし、話さなければいいよね」
「だな。じゃぁスキル構成でも考えるか? あたしそういうの好きなんだよなぁ」
「ええ!? 新しいスキルは取ろうと思ってるけど、どうやってとるのかはまだ試してないからわかんないんだよねぇ……」
「はぁ? そのための特殊魔法課の授業があんだろうが」
「あ、なるほど。でもそれって学園とかに知られちゃわない?」
「あたしが報告するんだぜ?誰に教えてやるかよ」
「先生の魔法科研究室の人は?」
「お前の特殊魔法課の授業の時、あいつらがサポートに入ったことあったか?」
「うーん、無かったかも」
「それに、ある程度は固有魔法の知られざる部分ってことで通せるしな」
「なるほど」
「そんかわし! あたしにもお前の知識を少しわけてくれねぇか? 魔法構造を構築してくれるだけでもいい」
「え? そんなの全然いいけど」
「まじか!! お前の固有技能があれば、もしかしたら精霊魔法も使えるかもしれねぇしな!! そしたらお前も使えるし一石二鳥だろ? 精霊魔法はこないだお前もアークゴブリンの時に見たよな?」
「あ、先生が炎化してたやつ?」
「そうだ。あれはあたしの固有魔法みたいなものなんだけどな。それにお前の知識が合わさればもしかしたらさらに化けるのかもしれねぇ。興奮するなぁ!! おい!」
「せ、先生、ここ待合室だよ? ちょっと声が大きいんじゃ……」
「ああ、すまん。久しぶりに昂ぶっちまった……」
「じゃぁ先生、今度から固有技能の方の検証もお願いします」
「もちろんだ。楽しみだな!」
思ってたよりも先生が楽しそうだった。
途中で殺す殺さないの話になった時はちょっとびっくりしたけどね。
でも、本当はちょっとそういう事になるかもしれないってことは理解してたつもりだったんだよ?
まさかその場で始末されちゃうって話になるなんて思いもよらなかったけど。
ボクはこれからどういう成長をしていくのかなぁ。
楽しみはすっごいあるけど……
ちょっぴり、怖かったりするのかもしれない。
自分自身でも……ね。
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